「からかわれてつらい思い」 心の傷も引き起こす皮膚の感染症 専門の治療を

2019年07月31日掲載

パキスタンで公衆衛生面の課題とされる皮膚リーシュマニア症。ハイバル・パフトゥンハー州ではここ6ヵ月間、症例が増え続けている。保健当局は2018年11月以降約2万8000件の症例があったと報告。その大半は、アフガニスタン国境にある連邦直轄部族地域(FATA)の患者だ。最近は州の南端にある南ワジリスタン管区で患者が急増し、人びとは治療を求めて近隣地区のバンヌと、州都ペシャワール市にやってきている。2018年5月、国境なき医師団(MSF)は保健省と連携して、皮膚リーシュマニア症の専門治療センターをペシャワール市内にあるナシールラー・ババール・カーン記念病院内に開設した。治療センターでは毎月250人から300人の新患を受け入れ、2018年5月の開院以来、治療した患者は2300人以上。患者数は増え続けている。 

皮膚の傷は心の傷にも

指を刺され治療に来たアフィアさんと父親 © Nasir Ghafoor/MSF指を刺され治療に来たアフィアさんと父親 © Nasir Ghafoor/MSF

「ここはハイバル・パフトゥンハー州に1つしかない、皮膚リーシュマニア症の専門治療センターです。ここでの治癒率は2019年に95%に達していて、絶えず患者が増え続けています。高いニーズがあることは明らかです」と、MSF治療センターの責任者を務めるパルヴェーズ・カーン医師は話す。

皮膚リーシュマニア症は皮膚の感染症で、フレボトムス属のサシチョウバエに刺されたときに、原虫が傷口から侵入して感染する。パキスタンでは公衆衛生面で大きな問題となっている。命に別状はないものの、皮膚にできる傷や傷痕のせいで、偏見にさらされ、心の傷につながりかねない。いじめられたり、公の生活から締め出されたりすることが多い。 

治療が済むまで結婚を延期したシャンバズさん © Nasir Ghafoor/MSF治療が済むまで結婚を延期したシャンバズさん © Nasir Ghafoor/MSF

「マスクで顔を隠していますよ。外出も、友人とクリケットをするのもやめました。鼻のことでからかわれます。ここ数ヵ月間、どんなにつらい思いをしたか、言葉では言い表せません」。そう語るシャンバズさんは、顔にできた傷のため、結婚を延期した。

皮膚リーシュマニア症は治療を受けられる場所が近くになく、費用も高いため、治療できない人が多い。公立病院では薬の在庫が限られており、この病気を専門にするスタッフもいない。人びとは自分で薬を買うか、交通費を出して大都市に行き、MSFが提供する無償の治療を受けている。ただ、多くの人は、経済的に交通費を出す余裕もないのが現状だ。 

MSFの皮膚リーシュマニア症治療センター © Nasir Ghafoor/MSFMSFの皮膚リーシュマニア症治療センター © Nasir Ghafoor/MSF

MSFは近いうちにもう1ヵ所、バンヌの拠点病院にも同様のセンターを開設してハイバル・パフトゥンハー州南部のニーズに応えていく予定。MSFはこのほか、バロチスタン州クエッタ市とクチュラク区でもこの病気を治療していて、この分野ではバロチスタン州で最大の医療機関となっている。 

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