意識を失った13歳の少年──感染疑いは3万5000人超、ナイジェリアで深刻化するコレラ危機

2026年07月30日
国境なき医師団(MSF)が支援するナイジェリア・ボルノ州のコレラ治療センターに入院する13歳のムハンマド・ウスマンさん。地域の子どもたちとサッカーをしている最中に、コレラが疑われる症状が出始めた=2026年6月6日 © Merel van de Geyn/MSF
国境なき医師団(MSF)が支援するナイジェリア・ボルノ州のコレラ治療センターに入院する13歳のムハンマド・ウスマンさん。地域の子どもたちとサッカーをしている最中に、コレラが疑われる症状が出始めた=2026年6月6日 © Merel van de Geyn/MSF

ナイジェリア北東部のボルノ州では、コレラに感染したとみられる患者が急増し、数千人が影響を受けている。医療施設はひっ迫し、医療従事者は増え続ける患者への対応に追われている。 

救急搬送された少年

13歳のムハンマド・ウスマンさんは、症状が現れた後、国境なき医師団(MSF)が支援するボルノ州マイドゥグリのコレラ治療センターへ救急車で搬送された。

「息子は嘔吐や下痢を起こし、腹痛も訴えていました」と、母親のハディザ・アリさんは話す。

その後、意識を失ってしまったのです。コレラかもしれないと思いました。

ハディザ・アリさん ムハンマドさんの母親

ムハンマドさんは、2026年5月1日に最初にコレラが疑われる患者が報告されて以来、感染拡大の影響を受けた多くの患者の1人だ。過密な状態で社会インフラの乏しい非公式居住地を中心に、安全な水へのアクセス不足や劣悪な衛生環境、廃棄物管理の不備が重なり、感染は急速に広がっている。
 
ボルノ州の保健省によると、7月12日時点で3万5500人以上の感染疑い患者と198人の死亡が確認されている。

ムハンマドさんに寄り添う母親のハディザさん(左)=2026年6月6日 © Merel van de Geyn/MSF
ムハンマドさんに寄り添う母親のハディザさん(左)=2026年6月6日 © Merel van de Geyn/MSF

止まらない感染拡大

コレラは、コレラ菌に汚染された食べ物や水を介して広がる急性の感染症で、激しい水様性の下痢や脱水症状を引き起こす。適切な治療を受けなければ、数時間で命に関わる状態に陥ることもある。

感染拡大が深刻化するなか、MSFは保健当局や他の人道援助団体と連携しながら対応を強化している。現在、ボルノ州内で2カ所のコレラ治療センターと5カ所のコレラ治療ユニットを支援し、重症患者への入院治療を提供している。さらに、影響を受けた地域の住民が近くで治療を受けられるよう、17カ所の経口補水ポイントも設置している。

2026年7月12日時点で、MSFは今回の感染拡大への対応開始以来、2万4000人以上のコレラ感染疑い患者を治療しており、そのうち4人に1人以上が重症だった。

「私たちはこの2カ月間で対応を大幅に拡大してきました」と、マイドゥグリのMSFプロジェクトで医療コーディネーターを務めるビエンフェ・トンボラは言う。

しかし、安全な水や衛生設備、医療へのアクセスが不十分なため、感染拡大の勢いが、封じ込めの取り組みを上回っています。

ビエンフェ・トンボラ MSF医療コーディネーター

コレラ治療センターのトリアージ室で、初期症状を和らげる処置を受けるコレラ疑いの患者たち=2026年6月7日 © Merel van de Geyn/MSF
コレラ治療センターのトリアージ室で、初期症状を和らげる処置を受けるコレラ疑いの患者たち=2026年6月7日 © Merel van de Geyn/MSF

課題はコレラへの理解不足

多くの地域社会でコレラの疑い例の発生は認識されているが、病気がどのように広がるかについては、十分な理解が浸透していない。

65歳のキャリ・アリさんも、突然の下痢と強い倦怠感に見舞われ、コレラ治療センターで治療を受けた。

「私の家族や地域には、コレラが疑われる人がたくさんいます。親戚もこの治療センターにいます」

でも、自分がどうして感染したのか分かりません。コレラがどのように広がるのかも知りません。

キャリ・アリさん コレラ治療センターで治療を受ける男性

コレラへの理解を深めるため、MSFは啓発活動を拡大している。あわせて、感染予防対策や医療従事者への研修、水と衛生環境の改善にも取り組み、主要な給水地点では塩素消毒も実施している。

また7月初旬には、保健当局がMSFの支援を受けて、経口コレラワクチンの集団予防接種を実施し、260万人以上が接種した。

ボルノ州にある国内避難民キャンプで、コレラの予防と対策に関する啓発活動を行うMSFスタッフら=2026年6月10日 © Merel van de Geyn/MSF
ボルノ州にある国内避難民キャンプで、コレラの予防と対策に関する啓発活動を行うMSFスタッフら=2026年6月10日 © Merel van de Geyn/MSF

急がれる対策強化

こうした大規模な対策にもかかわらず、とりわけ非公式居住地で暮らす人びとの多くは、依然として安全な水や衛生設備、医療サービスへの十分なアクセスを確保できておらず、感染拡大は続いている。

流行はボルノ州を越えて隣接するプラトー州にも広がっており、同州保健省によると、7月12日時点で102人のコレラ感染疑い患者が報告されている。

医療施設への負担が続き、新たな感染者も増え続けるなか、安全な水や衛生環境、監視体制、そして迅速な治療へのアクセス強化が急務となっている。さらに、感染拡大を抑え、これ以上の犠牲を防ぐためには、影響を受けた地域全体で集団予防接種を早急に実施する必要がある。

ボルノ州マイドゥグリのコレラ治療センター内の様子=2026年6月6日 © Merel van de Geyn/MSF
ボルノ州マイドゥグリのコレラ治療センター内の様子=2026年6月6日 © Merel van de Geyn/MSF

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