「心に火がついた」 感染症予防の看護師が語る、命を守る仕事のやりがい

2022年02月10日
看護師のシャーリー・サムソン © Shirley Samson / MSF
看護師のシャーリー・サムソン © Shirley Samson / MSF
新型コロナウイルス感染症の世界規模での感染拡大に伴い、感染症の予防は今では全ての人にとって欠かせない話題となった。そんな中、ナイジェリアでは、ウイルス性の感染症、ラッサ熱の対策に取り組んでいるチームがいる。
 
看護師のシャーリー・サムソンは、ラッサ熱の流行をきっかけに、国境なき医師団(MSF)のプロジェクトに参加。さまざまな困難を乗り越えながら緊急事態に対応するチームの一員として活動し、その仕事に情熱を注ぐようになった。
 
現在、MSFのプロジェクトで感染予防と制御を担当している彼女に、命を救うためになぜこの仕事が大切なのかを語ってもらった。 

MSFとの出会い

2018年、この地域でラッサ熱が大流行しました。当時、多くの医療従事者が適切な個人用防護具を手に入れることができず、命の危険にさらされていました。亡くなってしまう方もいたのです。
 
MSFはこの危機に対応するためにプロジェクトを立ち上げ、私は短期契約のスタッフとして活動に参加しました。働き始めた当初は、治療センターで働くことに不安を感じていました。多くの医療従事者が危険にさらされていた状況を知っていたからです。
 
でもMSFの現場では初日から、医師や看護師用のスクラブやブーツ、手術用ガウンからマスク、呼吸器、ゴーグルまで、自己防衛に必要なものは全てそろっていました。
 
「私自身は病気から守ってもらえる。だから患者さんのケアをやめる必要はない」
 
自分にそう言い聞かせ、働き始めました。
 

看護への情熱 そして新たな挑戦へ

「力をあわせればラッサ熱に対応できる!」と書いたTシャツを着て © MSF
「力をあわせればラッサ熱に対応できる!」と書いたTシャツを着て © MSF
MSFに出合うまでは医療を無償で提供する場所で働いたことはありませんでした。患者さんはお金を持っていなければ、治療を受けることはできません。
 
私たちは患者さんのために自分のお金を使って治療をするか、患者さんが苦しむのをただ見ているかのどちらかしかなく、看護師の立場からするととても辛いものでした。
 
ところがMSFのプロジェクトでは、患者さんのためにやりかったことを全て実現できたのです。必要なものは全てそろっていましたし、患者さんが悲しそうな顔をしているときは、心理カウンセラーに相談し、サポートしてもらうこともできました。
本当にうれしかったです。
 
ラッサ熱のピーク期が終わると同時に私たちの短期契約も終わりを迎えました。
 
 
 その時私は強く思いました。 
 
「お金を持たない患者さんたちが苦しまないような看護の仕事をしたい」と。
 
私の心に、情熱の火がついた瞬間でした。
 
それからは、MSFの活動に参加できる仕事を探し始めました。また、感染症の予防や制御に対する関心も高まり、もっと学びたいと思っていたため、オンラインコースを受講したり、感染予防・制御の研修会を開催する団体を見つけては参加をしていました。この分野の医学が大好きだったんです。
 
そして2020年2月、ついに旅の出発点となったMSFのラッサ熱プロジェクトの感染管理チームリーダーに採用されたのです。

感染予防を重視する

個人用防護具の正しい着用はこんな感じです! © MSF
個人用防護具の正しい着用はこんな感じです! © MSF
私たちのプロジェクトでは、健康教育チームが地域を訪問し、ラッサ熱を予防するためにはどうしたらよいのかを人びとに伝えています。同時に、院内ではウイルスの感染拡大防止を徹底しています。
ラッサ熱の研究ではまだ分からないことも多いため、その分、感染予防を重視しているのです。
 
スタッフが誤ってウイルスにさらされないように対策を講じ、必要に応じてさらに予防処置を受けられるよう徹底しています。
2019年にMSFがこの危機に対する援助活動を始めて以来、ここでラッサ熱のため命を落としたスタッフはいません。
 
毎日、個人用防護具の誤用を防ごうと奮闘していると、ふと、自分が警察官になったみたいだなと感じることもあります。
でも、たとえ供給が不足しがちな状態になったとしても、在庫を切らさないようにするのが私の務め。購入にかかった費用や出荷までの時間、通関の手間などを考えると、無駄使いはできません。 

大好きな仕事

ラッサ熱のピーク期が終わると同時に、新型コロナウイルス感染症が流行し始めたため、すぐに新型コロナ治療センターの支援を始めました。また、この地域でコレラや黄熱病、急性水様性下痢といった他の感染症が発生した場合にも、私たちのチームが活動を行っています。
 
私はこの仕事が大好きです。
 
検査室をはじめとした多くの設備を私が担当し、医療、健康教育、環境衛生、建設といったさまざまなチームと協力しあって活動しています。チーム皆の仕事に関わり、その安全を担っていると感じています。
 
感染症は、治療と同様に予防が重要です。防げるものは防ぐ。
それこそ、命を守るために私たちが大切にし、実行しようとしていることなのです。

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