結婚を強いられた少女は夫に虐待され続け…15年後に希望を取り戻すまで

2019年03月19日掲載

ウミード・キ・キラン診療所で患者を診察するMSFの医師 © Showkat Nandaウミード・キ・キラン診療所で患者を診察するMSFの医師 © Showkat Nanda

細い体できょろきょろ周りを見回しながら、カムラさん(仮名)は自分がその場にいていいのか分からない様子だった。インドの首都ニューデリーにある国境なき医師団(MSF)のウミード・キ・キラン診療所。カムラさんはMSFの健康教育担当スタッフに勧められ、初めてここにやって来た。「希望の光」という名のこの診療所は、性暴力の被害者に体と心のケアを提供している。

自分の体験を話すべきか迷っていたカムラさんは、親身になって接し、絶対に守秘義務を守ると約束してくれたカウンセラーに安心し、自分の体験を打ち明けた。 

虐待で孤独に陥った少女

カムラさんは5歳のとき、おばに連れられニューデリーへ来た。おばの家で雑用を言いつけられ、働かされた賃金もすべておばに渡さなければならなかった。その後、まだ子どものうちに無理やり結婚させられた。夫はカムラさんを性的、感情面でも、体も、言葉でも15年にわたって傷つけた。

カムラさんは、全てプライベートな家族の問題だと考え、誰にも話せずにいた。医療機関に行くことなど、考えもしなかった。心を許せる家族や友人もおらず、孤独感はひどくなっていった。 

ウミード・キ・キラン診療所では家庭内暴力や性暴力の被害者を診療している © Showkat Nandaウミード・キ・キラン診療所では家庭内暴力や性暴力の被害者を診療している © Showkat Nanda

カムラさんのカウンセリングを務めるファザイファは話す。「診療所で見られる『性とジェンダーに基づく暴力』の問題は、多岐にわたります。ときには被害者自身が、虐待されていることに気づかないか、人生はこういうものだと思い込んでいる場合があります。事態がいっそう悪くなるのを恐れて助けを求めに行かない人もいます。プライバシーや秘密を守ってもらえないのではと思う人もいます。助けを求めるといっても、どこへ行けばよいのか分からなかったという人もいました。ウミード・キ・キラン診療所は、患者を中心に置いたアプローチをして、医療と心理・社会面の支援だけでなく、地域の人びとに『性とジェンダーに基づく暴力』や、すぐに医療機関を受診する必要について教えています」 

カウンセリングで心を取り戻す

ウミード・キ・キラン診療所は週7日、24時間開院している © Showkat Nandaウミード・キ・キラン診療所は週7日、24時間開院している © Showkat Nanda

暴力・性暴力ではけがを伴うことが多い。ただ、健康を害するという点では心の傷も同じくらい深刻だ。カムラさんは虐待のため自殺まで考えるようになった。カウンセラーのファザイファは続ける。「最初に彼女に会ったときは、疲れきって希望を失った様子でした。3人の子どもと無理心中するつもりだったんです。その状態から抜け出すためには、体のけがの治療だけでなく、心のカウンセリングも必要でした」

カムラさんは、診療所に来る他の被害者と同様、けがの診察を受けた後、専任のカウンセラーと定期的に会うことになった。「彼女はただ、感情をあらわにできる相手、耳を傾けてくれる人、ひとりぼっちじゃないと教えてくれて、希望をくれる誰かが欲しかったのだと感じることがありました。そういう意味では、ウミード・キ・キラン診療所はその名に恥じなかったと思います」と、フザイファは話す。 

患者に薬を渡すMSFの医師 © Showkat Nanda患者に薬を渡すMSFの医師 © Showkat Nanda

何度かカウンセリングを受けた後に、カムラさんは夫と別れて、引越しして子どもたちと一緒に暮らすことに決めた。ウミード・キ・キラン診療所は、患者に他の専門診療機関、法的支援、シェルターなどを紹介もしており、カムラさんと子どもたちも、そうしてシェルターに移ることができた。

現在、カムラさんはシェルターで暮らしながら仕事を持ち、3人の子どもを育てている。虐待とは無縁の環境だ。子どもたちには、立派な人間になってほしいと願っている。フザイファは、「つい先日、カムラさんにシェルターで会ったら、生き生きしていました! 本当に嬉しくて……。彼女がこんなに変わるようすを見られただけでなく、その助けになれたんですから!」と話している。 

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