5人に1人が再び性暴力を受ける過酷な現実──MSF報告書が問うハイチの今
2026年02月26日
国境なき医師団(MSF)は1月28日、ハイチに関する報告書を発表した。首都ポルトープランスにおいて、2021年以降、性別・ジェンダーに基づく暴力(SGBV)がどれだけ急増しているかを伝えるものだ。広範な暴力が続き、治安状況やインフラ、公共サービス、生活環境が劇的に悪化する中で、こうした危機が進行している。
今回のMSF報告書「ハイチ・ポルトープランスにおける性別とジェンダーに基づく暴力」(英文)は、10年間にわたるデータと証言に基づいている。
2015年、MSFは「プラン・メンム(手を取って)」と名付けられた診療所を開設し、約1万7000人に向けて、医療や心理社会的支援を提供してきた。患者のうち98%が女性と少女である。その過程で収集された医学データと証言の記録が土台となった。
あらゆる年齢層の女性が標的に
MSFハイチ活動責任者のダイアナ・マニラ・アロヨは語る。
「このプラン・メンム診療所でケアを受けた性暴力のサバイバーの数は、2021年では月平均95人でした。それが、2025年には月平均250人を超えたのです。約3倍も増大しています。ここ数年、ハイチでは、暴力が激化してきました。この首都ポルトープランスでも、女性や少女の身体に対する危機が高まっているのです。この数値が、それを物語っています」
報告書が示す事実関係は深刻だ。
あらゆる年齢層の女性と少女が標的とされている。被害者のなかには、家を追われて避難生活を余儀なくされている人も多い。その結果、さらなる暴力の被害に遭う危険性にさらされているのだ。プラン・メンムで治療を受けた被害者の約5人に1人は、複数回にわたって性暴力の被害を受けていた。
暴力の残虐性が強まっていることも深刻だ。2022年以降、プラン・メンムで治療を受けた被害者の57%は、武装集団に襲われたものであり、その多くは集団暴行である。一度に10人以上から性暴力を受けたと証言した患者は100人以上に及んでいる。
報告書では、ある被害者女性(53歳)の証言が引用されている。
「連中に殴られ、歯を折られました。(中略) 私の子どもほどの年齢の男3人です。要求を拒むと、殴り倒されました」
必死に抵抗したら、背中を蹴られて。その時の痛みは今も続いています。連中は、私をレイプしたあと、私の娘もレイプしたのです。
被害者の女性
国際社会はハイチの実態を直視せよ
一方、今回の報告書は「性暴力被害者への支援体制」が不十分である点にも言及している。MSFでは医療以外のサポートを続けていくのが難しいこともある。たとえば、避難所、移住支援、生計支援などは、患者が生きていくうえで重要なものだが、MSFが必ずしも紹介できるとは限らない。性暴力サバイバーの保護に向けた資金的拡大を図ることが急務だ。
サバイバーは、さらに数多くの障壁に直面していることが多い。社会的偏見、経済的困窮、治安の悪化、情報の欠如──。こうした状況に置かれた人びとは、速やかに医療を受けられず、医学的に深刻な事態となる。
2022年以降で見ると、プラン・メンム診療所に来院したサバイバーのうち、暴行当日から3日以内だったケースは、わずか3分の1だった。この3日間という期間を過ぎれば、HIV感染を防ぐことは不可能となる。また、5日以内に受診できなかった患者は59%に達する。この5日間という期間を過ぎれば、望まない妊娠を防ぐこともできなくなる。
今回の報告書では、ハイチ政府当局、人道援助団体、資金拠出団体、国連機関、治安当局などが連携して、速やかなアクションをとることが提言されている。性暴力サバイバーの視点から、長期を見据えた対応が必要なのだ。
先ほどのMSFハイチ活動責任者マニラ・アロヨは、こう述べている。
「誰もが包括的医療と心理社会的なサポートを無料で受けられる体制を作るべきです。そのためにも、現地の支援活動に向けた資金的拡大がどうしても必要となります。さらには、この地において性暴力がどれだけ広まっているか、国際社会は直視すべきです。武装集団は、女性や少女たちを服従させる手段として、意図的に性暴力を繰り返しているのです」
性暴力サバイバーの身体と人生そのものを取り戻すために、私たちは全力であたっていかねばなりません。
マニラ・アロヨ MSFハイチ活動責任者




