病院も薬もない、救急車も来ない──暴力激化のハイチで進む医療崩壊【動画】
2026年02月03日衝突は主に武装集団が支配する人口密集地域で発生しており、国境なき医師団(MSF)は2026年1月最初の2週間で、暴力によって負傷した100人以上を治療した。
銃撃戦やドローン攻撃が日常化し、多くの人びとが武装集団の支配する地域から避難できないまま、事実上閉じ込められた状況となっている。
はびこる暴力 戦闘下で断たれる医療
ポルトープランスでは、負傷しても治療を受けるのは非常に難しい。数少ない稼働中の病院にたどり着くには、数メートルに及ぶバリケードを超え、封鎖された道路を進み、銃撃が続く地域を通り抜けなければならないのだ。
多くの医療施設は閉鎖されているか、部分的にしか機能しておらず、中には武装集団の攻撃や略奪を受けた病院もある。
外科手術が可能な公立病院は1カ所しかなく、その他の多くは私立病院で、最も弱い立場にある人びとは医療へのアクセスがほぼない状況だ。
「この地域には病院も薬もありません」と、台所用品の販売で生計を立てる35歳のアンダーソンさんは言う。
彼は帰宅途中に戦闘に巻き込まれてかかとを負傷し、1月初めにMSFが運営するタバル病院に搬送された。
医師は何人かいますが、最低限の処置をするのがやっとというありさまです。
アンダーソンさん 戦闘に巻き込まれ負傷した男性
「人びとはもはや、この地域から出ようとはしません。怖いのです。何も悪いことをしていなくても、銃で撃たれていれば必ず『犯罪者』とみなされます。救急車は来てくれませんし、運転手自身が狙われることを恐れて、バイクタクシーも負傷者の搬送を拒むことが多いのです」
こうした深刻な医療アクセスへの制約があるにもかかわらず、MSFのドルイヤール病院では暴力による患者数が急増している。2025年12月29日から2026年1月12日のわずか15日間で、暴力による負傷者101名が入院し、そのうち66名が銃創患者だった。
この2週間の数字は、2025年に同病院で記録された月平均54人という銃創患者数をすでに大きく上回っている。このうち30%は女性、9%は15歳未満の子どもだった。
危険な搬送 増え続ける重傷患者
手術が必要な患者は、MSFが運営するタバル病院に紹介される。ここは、ポルトープランスで専門的な外科治療を無料で受けられる数少ない医療施設の一つだ。しかし、この紹介制度は非常に不安定な状況下で行われている。
MSFは1年以上にわたり、医療施設間の搬送中に車両や患者が繰り返し脅迫や攻撃を受けたため、救急車の運行を停止せざるを得なかった。国営救急センターの一部の車両はまだ稼働しているが、その能力は十分ではない。
その結果、多くの重傷患者は地域での戦闘がいったん収まった後になってようやく、バイクタクシーなど患者搬送に向いているとは言えない手段で病院に運ばれてくるのが現状だ。
「多くの患者は、早い段階で治療が受けられなかったために、傷が悪化した状態で運ばれてきます」と、MSF医療コーディネーターを務めるタバル病院の医師デンベレ・ディオンクンダは話す。
過去2週間に受け入れた暴力関連の患者の多くは銃創で、開放骨折や腹部外傷などの重症例が目立ちました。こうしたケースは40件を超え、この期間に治療した患者の大半を占めています。
デンベレ・ディオンクンダ MSF医療コーディネーター
しかし、この傾向が収まる兆しはない。2026年1月6日には、わずか1日で8人の銃創患者がタバル病院に運び込まれた。こうした数字は、ポルトープランスで続く暴力が長期化し、激しさを増していることを如実に示している。




