拡大するエボラ病──封じ込めに向けた課題と国境なき医師団の対応とは
2026年07月08日
検査・診断体制の強化が急務
コンゴ保健当局によると、7月6日現在コンゴでは1708人の感染が確認され、580人が死亡した。感染者の9割以上はイトゥリ州に集中しているが、北キブ州や南キブ州でも感染が広がっている。また、隣国ウガンダでも感染者が確認されている。
流行は現在も拡大を続けており、イトゥリ州や北キブ州の一部では、感染が十分に把握されていないまま広がっている可能性もある。今回の流行は、これまでの多くのエボラ病流行とは異なり、承認されたワクチンや治療法が存在しないブンディブギョ・ウイルスによるもので、このウイルスに対応した検査・診断体制も十分に整備されてはいない。
さらに、コンゴ東部では長年にわたる紛争や住民の避難が続き、一部地域では医療・人道援助活動へのアクセスが制限されている。こうした要因が患者の発見や診断、接触者追跡を難しくし、流行の封じ込めを一層難しくしている。
ブンディブギョ・ウイルスへの対応では、感染者の早期発見と迅速な隔離が不可欠だ。そのため、検査・診断体制のさらなる強化に加え、監視活動や接触者追跡の拡充、地域社会との連携強化が急務となっている。
治療から地域連携まで──MSFの対応
コンゴでは、イトゥリ州、北キブ州、南キブ州の各地で複数のエボラ治療センターや隔離施設を運営。ウガンダでは、首都カンパラ近郊の治療施設や、コンゴとの国境に近い南西部の隔離施設の改修を行うなど流行への対応強化を進めている。
流行宣言以降、MSFは数万点に及ぶ医薬品や消毒剤、衛生資材を現地に投入してきた。さらに、手袋やマスク、防護服、ゴーグル、防護ブーツなどの個人防護具(PPE)も提供し、医療従事者の安全確保に取り組んでいる。また、感染が疑われる患者の早期発見と安全な隔離を可能にするため、医療施設内のトリアージ体制や隔離スペースの整備も実施。こうした取り組みにより、エボラ病患者への対応を強化するとともに、その他の患者も安全に医療を受けられる体制づくりを進めている。
6月末までに、MSFがイトゥリ州、北キブ州、南キブ州で運営するエボラ治療センターでは726人を受け入れ、このうち281人がエボラ病の確定患者だった。また、77人が回復し退院している。現在MSFは、同地域で400床を超える治療・隔離施設を運営しており、患者数の増加に備えて、受け入れ体制の拡充も続けている。さらに、一部地域ではエボラ病患者の安全な搬送についても保健当局を支援している。
スタッフの健康と安全を守る取り組み
エボラ病への対応では、患者だけでなく医療従事者の安全確保も重要な課題だ。MSFのスタッフは地域社会の中で生活しながら活動しているため、住民と同様に健康上のリスクにさらされている。とりわけエボラ病の流行下では、医療従事者は最も感染リスクの高い立場にある。MSFは感染リスクを完全になくすことはできないと認識しながらも、可能な限り厳格な安全対策を講じている。
1)専門的な研修
エボラ対応に派遣されるすべてのスタッフは、出発前に専門的な研修を受ける。ベルギー・ブリュッセルおよびケニア・ナイロビの研修センターでは、実際の現場を想定したシミュレーションや実践的な訓練が行われる。研修を受けたスタッフは、現地で直接対応にあたるだけでなく、現地の医療従事者への技術支援や指導にも取り組んでいる。
2)帰任後の健康観察
エボラ流行地域で活動を終えたスタッフは、活動終了後、21日間の健康観察が義務付けられており、この期間は体調の変化を継続的に確認する。エボラ病は症状が現れるまでは感染しないことに加え、この21日間はエボラ病の潜伏期間全体をカバーしている。そのため、万が一スタッフが感染していた場合でも、症状を早期に発見し、適切な医療対応を行うとともに、他者への感染を防ぐことができる。
3)流行が地域外へ広がるリスク
国際的な感染拡大を防ぐうえで最も重要なのは、流行の発生源であるコンゴとウガンダで感染を封じ込めることであり、MSFは、最も深刻な影響を受けている地域で患者の治療や感染拡大の抑制に取り組みながら、流行の早期収束に向けた支援を続けている。




