エボラ病、コンゴで感染が急拡大──国境なき医師団はあらゆる手段で対応を強化

2026年06月03日
コンゴ民主共和国・北キブ州ゴマに開設した国境なき医師団(MSF)のエボラ病治療センターで、防護具を着用する医療スタッフたち=2025年5月29日 © Daniel Buuma
コンゴ民主共和国・北キブ州ゴマに開設した国境なき医師団(MSF)のエボラ病治療センターで、防護具を着用する医療スタッフたち=2025年5月29日 © Daniel Buuma

長年にわたり、治安の悪化や物資不足によるぜい弱な医療体制に苦しんできたコンゴ民主共和国(以下、コンゴ)。今年5月、承認されたワクチンや治療法が存在しないブンディブギョ・ウイルスによるエボラ病(エボラ出血熱)の流行が発生し、状況はいっそう深刻化している。

国境なき医師団(MSF)は保健省と連携し、感染拡大の抑制と患者ケアの強化に取り組んでいる。

加速する流行と限られた対応能力

エボラ病の状況は5月28日現在、コンゴ東部のイトゥリ州、北キブ州、南キブ州の3州で合わせて確定症例125件、感染疑い例906件、死亡223件が公式に報告されている。

しかし、流行の実際の規模を正確に把握することは今も困難だ。検査体制が極めて限られていることに加え、一部地域へのアクセスが難しいため、これらの数値は慎重に解釈する必要がある。

報告されている疑い例の90%以上は、流行の中心地であるイトゥリ州に集中しており、州内のモングワルおよびルワンパラの各保健区域で症例数が増加している。

「活動は困難を極めています」と、MSFの副オペレーション・ディレクターを務めるアラン・ゴンザレス医師は話す。 
 
「ここ2週間、空路、陸路ともに移動が制限され、流行地域への物資やチームの投入が滞っています。検査体制も依然として不十分で、数百の検体が検査を待っている状態です。さらに、患者の隔離や治療の受け入れ能力も不足しています」

こうした制約が対応の拡大を妨げ、地域社会に不安と恐怖を広げています。

アラン・ゴンザレス医師 MSF副オペレーション・ディレクター

現在イトゥリ州で対応に当たっているのは、MSFを含む一部の限られた専門機関にとどまっており、人びとのニーズは提供できる援助の範囲を大きく上回っている。 

イトゥリ州ブニアのエボラ病治療センターで、患者のケアを終えた医療スタッフに消毒を行っている様子=2026年5月31日 © Anna SCHÖNHOFER/MSF
イトゥリ州ブニアのエボラ病治療センターで、患者のケアを終えた医療スタッフに消毒を行っている様子=2026年5月31日 © Anna SCHÖNHOFER/MSF


そんななか、確定例と疑い例の両方の患者を受け入れるため、MSFはイトゥリ州で65床規模のエボラ病治療センターの建設を開始した。また、保健省と連携し、モングワル総合病院およびファタキ総合病院で、疑い例の患者のケアと隔離対応を支援している。

また、MSFはイトゥリ州の州都ブニアにあるサラマ病院で患者の隔離体制を整備するとともに、市内および周辺の複数の医療施設と連携し、安全な治療体制の強化を支援している。

さらに、感染予防・管理対策の強化にも取り組んでいる。これは、特に医療サービスに大きな負荷がかかる状況下で、院内感染の防止に重要な役割を果たしている。

同時に、医療、ロジスティクス、健康推進を担う各チームが、疫学調査や地域コミュニティへの啓発活動を支援している。多くの地域で不安や恐怖、デマの拡散が対応を複雑にし、人びとが適切なタイミングで医療を受けることを遅らせているため、こうした地域との緊密な連携は極めて重要だ。

MSFが支援するイトゥリ州ブニアのサラマ病院内で、感染対策施設を設営するスタッフ=2026年5月29日 © Anna SCHÖNHOFER/MSF
MSFが支援するイトゥリ州ブニアのサラマ病院内で、感染対策施設を設営するスタッフ=2026年5月29日 © Anna SCHÖNHOFER/MSF

エボラ病の影で進む別の感染症への危機感

エボラ病の流行は、それ自体の影響にとどまらず、人びとの医療アクセスをさらに困難にしていることをMSFは目の当たりにしている。複数の地域で、エボラ病や隔離措置への恐れから、他の疾患を抱える患者が医療機関での受診を控えるようになっているのだ。その結果、別の健康危機が静かに深刻化しつつあることへの懸念が高まっている。

北キブ州では、エボラ病やエムポックス(旧称サル痘)コレラなど、近年同州で発生した感染症の流行を受けて整備されてきた体制を基に、対応が進められている。州都ゴマでは80床のエボラ病治療センターが設置され、すでに患者の受け入れが始まっている。

また、ワリカレ、ムウェソ、ルチュルおよびキシェロ病院などMSFが支援する複数の医療施設では、感染が疑われる患者のための隔離施設が設置された。さらに、ブテンボ市では、MSFが医療・ロジスティクスチームを派遣し、保健省と連携しながら、人びとのニーズの評価と対応が必要な地域の特定を進めている。

複数の感染例が確認されている南キブ州では、MSFはブカブとルウィロの2カ所にエボラ病治療センターを設置するとともに、両都市の医療従事者を対象に、感染予防・対策措置に関する研修も実施している。

MSFが支援するコンゴ・北キブ州ゴマのエボラ病治療センターで、患者の診察に当たるスタッフたち=2026年5月29日 © Daniel Buuma
MSFが支援するコンゴ・北キブ州ゴマのエボラ病治療センターで、患者の診察に当たるスタッフたち=2026年5月29日 © Daniel Buuma

迫られる対応強化 今後数週間が正念場

「今回の流行は、長年にわたる紛争と大規模な避難により、すでに深刻な打撃を受けていた地域にさらなる影響を及ぼしています」と、コンゴでMSFの代表を務めるエバルト・スタルスは言う。

「イトゥリ州に加え、北キブ州や南キブ州では、治安の悪化によって何百万人もの人びとが安全を求めて自宅を離れることを余儀なくされています。こうした絶え間ない移動は、ぜい弱で資金不足の医療体制のもとで、状況をさらに複雑にしています」

一部の医療施設では、すでに受け入れや隔離の能力が限界に達しています。このような状況では、症例の迅速な特定や接触者の追跡、患者の隔離がいっそう困難となり、感染のさらなる拡大リスクが高まっています。

エバルト・スタルス コンゴのMSF代表

MSFはあらゆる手段を講じて対応を支援している。国境封鎖や航空便の欠航といった安全上およびアクセス上の制約がある中でも、感染地域への物資の輸送を続けており、すでにイトゥリ州と北キブ州には、数百トンの医療物資や資材が届けられている。

感染者数の増加が続き、対応体制の整備も途上にあるなか、医療体制の強化、検査の迅速化、そして感染地域における基本的な医療サービスへのアクセスの維持に向け、これからの数週間が極めて重要な局面となる。

サラマ病院に届けられた医療物資=2026年5月29日 © Anna SCHÖNHOFER/MSF
サラマ病院に届けられた医療物資=2026年5月29日 © Anna SCHÖNHOFER/MSF

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