「朝から晩まで銃声が響き、誰かが殺される」──避難民92万人超、コンゴ北東部・イトゥリ州で暴力再燃

2026年05月15日
コンゴ民主共和国イトゥリ州のプレーヌ・サボにある避難民キャンプの一部。木材と防水シートで作られたテントが並ぶ=2026年4月16日 © MSF
コンゴ民主共和国イトゥリ州のプレーヌ・サボにある避難民キャンプの一部。木材と防水シートで作られたテントが並ぶ=2026年4月16日 © MSF

コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)北東部のイトゥリ州で、暴力が再び激化している。

コンゴは豊富な天然資源を誇る一方、武装勢力による暴力と内戦が続いている。国境なき医師団(MSF)はイトゥリ州で、銃撃で負傷した人びとや、適切なケアを受けられない性暴力サバイバー、住まいを追われた家族らを目の当たりにしてきた。

MSFは2026年2月から、同州のファタキという町で診療活動に入っている。治療を要する人びとの数は膨大だが、それに対して現地の医療体制は著しくぜい弱なままだ。

撃たれても、逃げ続けた

イトゥリ州内で2025年末、政府軍と反政府勢力との戦闘が再開。MSFのいるファタキと隣接するブレという町が、その戦いの中心地となった。

2025年12月~2026年3月の間に、少なくとも市民40人が死亡し、42人が負傷した。

プレーヌ・サボにある避難民キャンプ。ここだけで約7万人の避難民が暮らす=2026年4月16日 © MSF
プレーヌ・サボにある避難民キャンプ。ここだけで約7万人の避難民が暮らす=2026年4月16日 © MSF


現地住民のパトリックさん(53)はこう語る。

家にいた時、激しい銃声が聞こえてきたんです。すぐ逃げようと思いましたが、その前に家畜をつないだ縄をほどきました。そして私がいなくても餌を食べられるよう、なたでバナナの葉を切っておいたんです。でも、なたを持っているところを武装集団に見られてしまい、戦闘員だと思われました。その場で立ち止まるように言われ、問答無用で膝を撃たれました。

イトゥリ州の住民 パトリックさん

現地の避難民キャンプで生活していたオーギュスティーヌさんも、当時のことを語ってくれた。彼女は銃撃から逃れるため、息子と共に近くの茂みへ逃げ込んだという。

逃げている途中、流れ弾が足に当たりました。息子も負傷しました。痛みをこらえながら、息子を背負ってとにかく逃げ続けた。四つんばいで進まないといけない時もあった。その途中、人びとに助けてもらって、別の避難民キャンプにある診療所に連れて行ってもらったんです。

イトゥリ州の避難民 オーギュスティーヌさん

このように民間人が標的とされるような事態は、決してあってはならない。しかし、現実には、暴力を受けて負傷した人びとが存在しているのだ。

この点について、イトゥリ州でMSFプロジェクト・コーディネーターを務めるシルバン・グルーは、次のように語る。

人びとは守られなければなりません。銃声が大きく鳴り響いている陰で、誰にも聞こえない沈黙の中で、人びとの苦しみが深まり続けているのです。私たちはこの紛争の当事者たちに対して、民間人保護の徹底を訴えているところです。

イトゥリ州のMSFプロジェクト・コーディネーター シルバン・グルー

プレーヌ・サボにある避難民キャンプ。キャンプで暮らす人びとは過酷な生活環境に置かれている=2026年4月16日 © MSF
プレーヌ・サボにある避難民キャンプ。キャンプで暮らす人びとは過酷な生活環境に置かれている=2026年4月16日 © MSF

増え続ける避難民、崩壊する医療

イトゥリ州では、前例のない大規模な避難が生じている。

2026年1月~3月の間に、暴力の激化に伴って新たに10万人以上が避難を強いられた。国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、イトゥリ州全体では92万人以上が避難生活を送っているという。

避難民の多くは、ファタキの近郊地域に身を寄せている。しかし、医療環境も衛生環境も壊滅的だ。コレラや急性下痢症などの感染症が広がるリスクも高まっている。

たとえば、避難民が集まるプレーヌ・サボという場所では、基礎医療すら十分に受けられる状況ではない。性暴力サバイバーをケアする仕組みも整備されていない。もともとぜい弱だった現地の医療体制は、いまや機能不全あるいは機能停止に追い込まれつつある。

現地のファタキ保健区域では、14カ所の診療所のうち7カ所が閉鎖され、プレーヌ・サボの避難民キャンプ内に移転した。残りの施設は、治安の悪化、医療スタッフの避難、戦闘の影響などを受けながら、かろうじて運営を続けている。

プレーヌ・サボの避難民キャンプにある、MSF支援施設の中に設置された「性に関する相談室」=2026年4月16日 © MSF
プレーヌ・サボの避難民キャンプにある、MSF支援施設の中に設置された「性に関する相談室」=2026年4月16日 © MSF

医療と命を守る

2026年2月中旬、MSFはプレーヌ・サボ一帯にて医療ニーズが急激に高まっていることを受けて、チームを現地に派遣した。基礎医療や性暴力被害に対応するためだ。

それ以来、MSFチームは、1万件以上の診療にあたってきた。内容は下痢性疾患、栄養失調、呼吸器感染症、胃腸疾患など多岐にわたる。また、性暴力の被害を受けた約30人を治療した。

ファタキ総合病院でも、MSFは現地保健当局と連携して外傷外科、栄養治療部門を支援している。さらに、感染症対策にも取り組んでおり、水や衛生の環境改善に努めている。

グルーはこう強調する。

MSFは支援に入っていますが、医療へのアクセスは依然としてかなり制限されています。治安が悪化して、特に夜に病院へ向かうことは困難です。多くの患者たちが、医療施設に行くことそのものを恐れています。「人道回廊」を設けることが急務です。現地の人びとが安全に医療、水、食料を手に入れられる経路を確保しなければなりません。

イトゥリ州のMSFプロジェクト・コーディネーター シルバン・グルー

プレーヌ・サボのキャンプ内で食事の用意をする避難民女性=2026年4月16日 © MSF
プレーヌ・サボのキャンプ内で食事の用意をする避難民女性=2026年4月16日 © MSF

人道援助の拡充を

要するに、ファタキの危機は医療だけにとどまらない。食料、水、避難場所、安全──あらゆる面でニーズが切迫している。情勢は不安定なままで、援助が必要としている人びとのもとに届かない状況にある。

実際、ファタキを含むイトゥリ州各地では、援助団体が活動停止を余儀なくされている。その結果、命の危機にある何十万もの人びとが、現地で取り残されたままなのだ。

ファタキの避難民キャンプで暮らすジュディスさん(33)はこう語る。

ここでは食べ物が手に入らず、本当に苦しい生活が続いています。畑に行くこと自体が危険なんです。朝から晩まで銃声が聞こえ、誰かが殺されています。いま一番必要なのは食料です。お金じゃありません。いま食料が配給されるだけで、ここで暮らす人びとがどれだけ救われるか。

イトゥリ州の避難民 ジュディスさん

このように、避難民たちは極めて劣悪な生活環境を強いられている。食料、水、衛生環境など日常生活に必要なあらゆるものが欠けており、感染症リスクも高まっている。

こうした状況にもかかわらず、国際社会からの資金援助は十分とはいえず、避難民たちにに必要なものを届けられずにいる。

グルーはこう訴える。

MSFは、現地で緊急医療活動にあたっています。しかし、この危機の規模は、私たちの対応能力をはるかに超えています。医療、食料、水、衛生、安全の各分野で、迅速に対応すべきものが山ほどあるのです。そしてなによりも、援助にあたるべき地域への安全なアクセス経路を確保しなければ、状況はさらに悪化します。MSFは、コンゴ民主共和国の当局と、この地域で活動するすべての人道援助団体に対して、対応をただちに拡充するよう強く求めます。

イトゥリ州のMSFプロジェクト・コーディネーター シルバン・グルー

MSFがプレーヌ・サボのキャンプ内に設置した給水ポイント=2026年4月16日 © MSF
MSFがプレーヌ・サボのキャンプ内に設置した給水ポイント=2026年4月16日 © MSF

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