新型コロナウイルス:「お誕生日おめでとう」患者の孤独に寄り添う、集中治療室の看護師
2020年05月11日新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対応するため、今世界中で多くの医療従事者が奮闘している。
国境なき医師団(MSF)の看護師、カトリネ・ツィンマーマンもその一人だ。アフリカや中米で長年にわたって医療援助活動に取り組み、今、スイスで新型コロナウイルス対応の最前線で活動している。5月12日の国際看護師の日を前に、彼女の思いを聞いた。

「お誕生日おめでとう」たった一人で誕生日を迎える患者さんに
今年3月からジュネーブ大学病院で、既存の治療室を感染者用の治療室に整備する活動に参加しました。手術室や回復室などを、感染者を受け入れられるように整備するのです。 その後も病院の集中治療室で感染者の対応に当たっています。
日常とかけ離れたこの病院で、特に強く感じるのが患者さんの孤独感です。数日前、私が看護を担当していたある感染患者さんが80歳の誕生日を迎えました。本当であれば一緒に祝うはずの家族は、病室に入ることはできません。そこで、インターネット通話で家族とつなぎ、家族と一緒にお祝いすることができました。
80歳の誕生日を一人きりで過ごすのは、きっとつらかったことでしょう。そのような時、看護師や医師などの医療スタッフは、患者さんと家族を結ぶ唯一のつながりになるのです。その後、この男性は自力で呼吸できるようになり、人工呼吸器を外すことができました。早く家族と再会できることを願うばかりです。

パニック、ストレス…… 病気への恐怖は共通
長年の経験から、病気が流行したときに人びとがどれだけ不安を覚えるかが分かります。パニックに陥ったり、ストレスを感じたり、置かれた環境との闘いがあったり、医療者自身も不安を感じたり……、どれもこれまでに経験したことと似ています。
MSFは、欧州よりも設備が整っていない世界中のさまざまな地域で、医療体制が崩壊しないよう、予防から治療まで最善を尽くしています。しかし、人材不足は否めません。人や物資に課された移動制限が、対応をさらに難しくしているからです。
