暴力激化で8万8000人が避難──ブルンジで急速に深刻化する人道危機

2025年12月26日

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)の南キブ州で暴力が激化し、8万8000人以上が隣国のブルンジに逃げ込んだ。ここ数日も多くの人びとがブルンジに到着しており、難民キャンプでは安全な水、食料、衛生設備、基本的な生活必需品へのアクセスが限られ、人びとは厳しい環境を強いられている。 
 
国境なき医師団(MSF)は緊急対応を拡大し、弱い立場に置かれた人びとの間で、コレラはしかマラリアなどの感染症が増大するリスクが深刻だとして警鐘を鳴らしている。

コンゴから逃れてきた人びと=2025年12月16日 © Dorine Niyungeko/MSF
コンゴから逃れてきた人びと=2025年12月16日 © Dorine Niyungeko/MSF

飽和状態のキャンプ 水も食料も手に入らない

ブルンジ北西部チビトケのンダバ・キャンプの状況について、MSFのプロジェクト・コーディネーターであるザカリ・モルーフは次のように説明する。

「キャンプはすでに飽和状態で、複数の家族が1つのテントを共有しています。地面は泥に覆われた状態です」  

人びとは2Lの水のボトルを持っていますが、彼らが使える水はそれだけです。食料はほとんど手に入りません。私たちは、人びとの健康状態と人道状況の悪化を懸念しています。

ザカリ・モルーフ MSFプロジェクト・コーディネーター

2週間前にコンゴから難民が到着して以来、MSFは医療・人道援助活動を拡大している。約3万7000人がルジジ川を渡ってンダバ・キャンプに避難しており、MSFは移動診療所で1日平均200人の治療にあたっている。重症例はチビトケ地区病院に搬送し、現地チームが継続的なケアを提供している。

MSFはまた、1日あたり2万5000リットルの水を供給し、基本的な衛生環境の不足による感染症リスクを減らすため、トイレやシャワーの設置を進めている。

「私たちは、人びとが苦悩と絶望、疲弊に苛まれる姿を目の当たりにしています」とモルーフは話す。

「避難中に出産した女性もいれば、MSFの診療所で出産する人もいます。過去数日間で行ったマラリア検査の42%が陽性でした。ンダバ・キャンプではコレラの確定症例14件を治療し、はしかの疑い例も1件確認しています」

ンダバ・キャンプで他の家族と共に一枚の防水シートの下で暮らす親子。「雨に打たれ、食べものもお金もない」と父親は言う=2025年12月16日 © Dorine Niyungeko/MSF
ンダバ・キャンプで他の家族と共に一枚の防水シートの下で暮らす親子。「雨に打たれ、食べものもお金もない」と父親は言う=2025年12月16日 © Dorine Niyungeko/MSF

高まる健康リスク 膨大なニーズへの対応が急務

ブルンジ東部のブウェル長期避難キャンプには約2万9000人が到着し、ブルンジ当局や国際人道機関から支援を受けている。コレラの感染が拡大する中、MSFは50床規模のコレラ治療センター、および物流面での支援を行っている。

過密な生活環境では健康リスクが懸念される。リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)の支援や性暴力被害者へのケアは、最も重要なニーズの一つだ。 
 
MSFはコレラやはしかの対策、予防接種、水と衛生の確保を含む緊急対応をブルンジ全域で強化している。

一方、コンゴでは政治・治安情勢が急速に変化し、人びとは大きな不安に直面している。ブルンジで活動する当局や団体は、膨大なニーズへの対応を迫られている。医療をはじめ、必要不可欠な支援を届けるため、人道援助団体による即時の動員が急務だ。 

ンダバに開設されたMSFの移動診療所=2025年12月16日 © Dorine Niyungeko/MSF
ンダバに開設されたMSFの移動診療所=2025年12月16日 © Dorine Niyungeko/MSF

この記事のタグ

関連記事

活動ニュースを選ぶ