【動画】ブルンジ:マラリアから子どもを守る──「3つの予防策」で挑む対策の最前線
2025年10月29日子どもの命を脅かすマラリア
3つの予防策が相乗効果を生み出す
このような状況を受けて、MSFとブルンジ保健省は国内で独自の取り組みを開始した。マラリアの影響が特に深刻な保健地区のひとつであるチビトケにおいて、3つの予防策を同時かつ大規模に組み合わせて実施するというものだ。
「チビトケはマラリアの症例数と死亡数が国内で最も多い地域の一つで、私たちは過去にも緊急対応にあたった経験があります」と、チビトケのMSFプロジェクト・コーディネーター、ザカリ・モルーは話す。
「より持続的な対応を目指し、私たちは保健当局にパイロット的なアプローチを提案しました」
すべての子どもを対象に、マラリアの予防接種、長期的な予防治療、殺虫剤処理された蚊帳の配布を同時に実施するというものです。
ザカリ・モルー MSFプロジェクト・コーディネーター
チビトケは、ブルンジでこの3つの戦略が実施されている唯一の保健地区だ。これらの対策を組み合わせることで、子どもたちのマラリア罹患率を大幅に減少させることを目的としている。現在、約1万7900人がこのプログラムの対象となっている。
「予防接種と予防治療は互いに補完し合い、最適な効果を発揮します」とザカリ・モルーは言う。
「そこに蚊帳による物理的な防御を加えることで、感染に最も弱い年齢層である5歳未満の子どもたちに、可能な限り最善の保護を提供することを目指しています」
簡便・低コストの予防策に高まる地域の期待
MSFはチビトケ内の20カ所の診療所を支援し、このアプローチの導入を進めている。そこでは、生後6~18カ月の子どもに対して、マラリアワクチン「RTS,S」を4回に分けて接種。初回接種時には、各家庭に殺虫剤処理済みの蚊帳が配布される。
さらに、生後9~24カ月の間には、追加の予防措置として「スルファドキシン/ピリメタミン合剤(通年性マラリア化学予防=PMC)」が提供される。
カブラントワ医療センターは、このプログラムの一環としてMSFが支援している施設の一つだ。予防接種の実施日には、センターの前に長い行列ができており、子どもを守りたいという親たちの強い思いを物語っている。
「息子が小さい頃は、よくマラリアにかかっていました。入院して、輸血を受けたこともあります」と、末っ子で生後9カ月になるファニーちゃんの予防接種に訪れたクラウディン・トゥイシミレさんは言う。
「今はこうした予防策があると説明を受けて、すぐに来ました」
おかげで子どもたちが病気になることはほとんどなくなり、親たちも頻繁に病院へ行かずに済むようになりました。
クラウディン・トゥイシミレさん 子どもの予防接種に訪れた母親
このアプローチを導入しているすべての保健センターで、同じように高い関心が寄せられている。待合室は常にいっぱいだ。この高い来院率は、地域保健担当者が家庭や団体、特に女性グループを対象に行っている啓発活動や経過観察の成果でもある。
「マラリアがもたらす課題の規模、そして家庭に与える経済的負担が、地域社会の高い関心を生み出しています」と、MSFのブルンジ活動責任者であるアデレード・ウアボは話す。
「特に、重症化した場合の医療費は、家族にとってもブルンジの保健制度にとっても大きな負担です」
こうした莫大な費用に比べれば、3つの予防策にかかる出費は非常に少なくて済みます。
アデレード・ウアボ MSFのブルンジ活動責任者
MSFがチビトケで保健省と協力して進めているこの取り組みは、得られる効果に対して非常に簡便かつ低コストであることを示している。予防接種と蚊帳の配布はすでに保健制度に組み込まれており、予防治療薬も安価だ。
そのため、このアプローチは保健制度への統合が容易であり、国内の他の地域でも再現可能なモデルとなっている。
限られた資源で最大限の効果を
この戦略はすでに、目に見える成果を上げ始めている。2025年の第3四半期以降、前年同時期と比べてマラリアによる入院件数は大幅に減少しており、特にチビトケ地域病院では、重症例が40%以上減少した。
一方で、この一連の戦略がマラリアの減少に与える正確な影響を科学的に評価するため、MSFの専門チームが数カ月にわたり実践研究を行っている。その結果は、ブルンジの保健当局や協力団体に対して、このアプローチの有効性を示す指標となり、マラリア対策の戦略を最適化するための意思決定を支援する材料となる。
「人道援助資金が全体的に減少する中で、限られた資源をいかに有効に活用するかが問われています。こうした状況では、科学的根拠に基づいた、最も効果的な選択をすることが不可欠です」とウアボは語る。
私たちがこの取り組みに貢献できることを、誇りに思います。
アデレード・ウアボ MSFのブルンジ活動責任者
予防の強化がMSFのプロジェクトの中心的な目的である一方、マラリアにかかった子どもたちへの緊急治療のニーズは依然として高い。MSFは保健当局が医療を提供できるよう、引き続き支援している。
村々では、MSFの研修を受けた地域保健担当者がマラリアの症状を素早く発見し、迅速な診断検査を行い、陽性の場合にはその場で治療を行うことができる。
より重篤な症状が確認された場合には、MSFが支援する診療所に紹介され、医療チームリーダーが治療体制の強化をサポートする。
緊急時には、患者をチビトケ地域病院へ搬送するための救急車も用意されている。同病院では、MSFが複雑な小児医療や集中治療に対応する支援を行っており、現地の医師や看護師への研修と指導も専任のスタッフが実施している。
2023年、マラリア関連の死亡者数は世界で59万7000人に上り、そのうち推定95%がアフリカで発生した。マラリアは特にアフリカのサハラ砂漠以南で、今なお大陸全体に影響を及ぼす重大な緊急事態となっている。




