アフガニスタン:頭に銃弾、5分の道のりを2時間半かけて病院へ──紛争が阻む医療へのアクセス
2021年06月03日5月3日、アフガニスタン南部のヘルマンド州ラシュカルガ周辺で、アフガニスタン政府と反政府勢力タリバンによる激しい戦闘がぼっ発。ラシュカルガで主に外傷患者を受け入れている病院が最も重篤な患者の治療に集中して対応したため、国境なき医師団(MSF)は、その他の患者の搬送先として、2009年から支援を続けているブースト病院で銃撃や爆弾による負傷者を受け入れ、1週間で93人の患者を治療した。
この日以降、戦火から逃れた人びとや負傷者はラシュカルガを目指したが、市内へと続く道が封鎖されたため、危険な道を何時間もかけて遠回りしなければならなかった。また、医療機関へのアクセスも困難になった。ブースト病院では、戦闘による負傷者を大勢受け入れたにもかかわらず、全体の患者数が一時的に減少。人びとが必要とする医療を受けられないという状況が浮き彫りになった。
患者とその家族、MSFスタッフの証言
頭に銃弾を受けたサミウッラー君(12歳)と叔父のアーマドゥッラーさん
子どもを連れた母親、救急処置室にて
息子は11歳ですが、10日ほど前から下痢と発熱に苦しんでいました。ぐったりして、顔は真っ青になり、近所の病院を受診しても治りませんでした。
腹部を撃たれたマリハちゃん(8歳)に付き添う祖母シャグルさん
マリハはモスクの外で撃たれました。お祈りの時間だったというのに。病院までの交通手段はなかったのですが、周りにいた人たちが助けてくれました。道路が封鎖されていたため、病院まではかなり遠回りしなければなりませんでした。
新生児集中治療室で働くMSFの看護師
私が住むボランでも戦闘が始まり、私たちの家にも砲弾が落ちて、外にいた2人のいとこがけがをしました。父と兄がいとこたちを市内の病院に連れて行きましたが、1人は亡くなりました。
紛争下でも途絶えない医療へのニーズ
ブースト病院はヘルマンド州唯一の搬送先病院であり、MSFはこの病院で、救急処置室、外科、入院部門、産科部門、新生児科、検査室、放射線部門、ベッド数82床の小児科部門を支援し、約130万人の健康を支える、まさに命綱のような存在だ。
紛争下においても、そうした医療へのニーズが途絶えることはない。出産を控えた妊婦から栄養失調の子どもまで、多くの人が医療を必要としているにもかかわらず、いま現地は医療機関を受診することがままならない状況に陥っている。