プレスリリース
ガザ:紛争激化から1年、医療は壊滅状態に──今すぐ持続的な停戦を
2024年10月03日
2023年10月7日にイスラエルとハマスの紛争が激化してから、まもなく1年を迎える。全面攻撃と封鎖は今も続き、パレスチナ・ガザ地区の医療・人道状況は壊滅的だ。
この間、イスラエル、ハマス、そしてそれらの同盟国も、ガザでの持続的停戦に関する合意に到達できなかった。そして現在、紛争の危険性が地域全体で高まっている。イスラエルは、ガザの民間人の無差別殺害を直ちに停止し、国際司法裁判所の要請に従い、検問所を再開し援助物資の搬入を緊急に進めることが求められている。
4万人以上が犠牲に
医薬品や水など、生きるための命綱が他者の手に握られ、人間としての尊厳が奪われている状況です。ガザにはまもなく冬が到来します。この人道危機をこれ以上続けてはなりません。即時かつ持続的な停戦が必要です。
緊急対応コーディネーター 萩原 健
機能している医療施設は半数以下
人口密集地への空爆などで多くの人が大やけどや大けがを負い、MSFは医療援助を行っている。昨年10月以来、MSFは2万7500人余りの負傷者を治療してきたが、その80%余りが砲撃によるものであった。
MSFの医療オペレーション・マネジャー、アンバー・アリヤン医師は「物資が足りず、麻酔なしでの手術を余儀なくされることもありました。病院の床で子どもたちが死んでいく姿も目にしました。そのような中で、ガザの医療システムはイスラエル軍によって組織的に破壊されているのです」と憤る。
昨年10月の前からMSFは、イスラエルによる占領、および17年にわたる封鎖、度重なる攻撃による被害を受けた人びとの医療援助にあたってきた。長期にわたって体に影響を与える負傷や、心の不調、重度のやけどなどである。しかし、昨年10月以来、攻撃により医療ニーズは急増する一方だが、人びとの医療へのアクセスは非常に限られている。
現在、36カ所あった病院のうち、部分的に機能しているのは17カ所にとどまる*2。医療施設の近くでも戦闘が行われ、患者や付き添い、医療スタッフを危険にさらしている。MSFでも、6人のスタッフの命が奪われた。
また、これまでにMSFは、戦闘などのため14カ所の医療施設を去らなければならなかった。医療施設から人が避難するということは、数千人が救命医療を受けられなくなるということを意味する。これは、今現在だけでなく、数週間後、数カ月後に人びとの健康に影響を及ぼす危険がある。

届かない物資 膨大な医療ニーズに対応できず
現状では、稼働中の医療施設で膨大なニーズに対応することは不可能です。
アンバー・アリヤン医師
即時かつ持続的な停戦を
これ以上命が奪われるのを止める唯一の方法は、即時かつ持続的な停戦です
MSFインターナショナル事務局長のクリストファー・ロックイヤー
MSFが求めること
- 持続的な停戦を今すぐ行うこと
- 民間人の大量殺害を今すぐ止めること
- 医療と民間インフラの破壊を今すぐ止めること
- ガザの封鎖を解除すること
- ラファ検問所を含む主な陸路境界を開放し、大規模な人道・医療援助を、必要な人びとへ届けられるようにすること
- 専門治療が必要な人の医療搬送(ケアをする人も同行)と、ガザの外に安全を求める人の自由を認め、全ての人に安全かつ自発的、尊厳ある形でガザに帰還できるよう保証すること
- 国連安保理は世界の平和と安全を保証する役割を果たして停戦を実現させ、ガザの破壊が続く現状を終わらせること

【訂正】本文中で「昨年10月の前からMSFは、イスラエルによる17年にわたる占領、封鎖、度重なる攻撃による被害を受けた人びとの医療援助にあたってきた」と記載していましたが、「昨年10月の前からMSFは、イスラエルによる占領、および17年にわたる封鎖、度重なる攻撃による被害を受けた人びとの医療援助にあたってきた」に訂正しました。(2024年10月4日更新)