プレスリリース
パレスチナ・ヨルダン川西岸地区:大規模侵攻で医療へのアクセスが奪われる──イスラエルは国際人道法上の義務の順守を
2024年09月09日イスラエル軍は8月28日から、パレスチナ・ヨルダン川西岸地区で大規模な軍事侵攻を行った。過去20年で最大規模とされる。これにより、道路インフラや電気網、水の供給が大きな被害を受け、国境なき医師団(MSF)は同地区北部のジェニンとトゥルカレムでの医療活動の一時停止を余儀なくされた。MSFは、イスラエル軍による大規模侵攻と、医療従事者や救急車、医療施設への度重なる攻撃が、人びとの医療へのアクセスを著しく妨げていると訴えている。
支援を届けることが困難に
MSFスタッフの一人はこう話す。
「トゥルカレムの街と難民キャンプでは、医療を受けることが非常に難しくなっています。インフラの被害も甚大です。助けが必要な人の元に行くこともできません。侵攻は予告なく行われるため、多くの人が何の準備もできないまま被害を受けています。とりわけ母親は、赤ちゃんの食べ物が足りないと話していました。住民は、自分たちが閉じ込められ、孤立していると感じています」
「トゥルカレムの街と難民キャンプでは、医療を受けることが非常に難しくなっています。インフラの被害も甚大です。助けが必要な人の元に行くこともできません。侵攻は予告なく行われるため、多くの人が何の準備もできないまま被害を受けています。とりわけ母親は、赤ちゃんの食べ物が足りないと話していました。住民は、自分たちが閉じ込められ、孤立していると感じています」
MSFの医療チームは、今回の侵攻が始まって以来、トゥルカレムとジェニンの両市での活動停止を余儀なくされている。
MSFのプロジェクト・コーディネーターであるキャロライン・ウィレメンは、「MSFは現在、移動することも、住民に直接支援することも制限されています。トゥルカレムでは心理的応急処置しか、ジェニンでは医薬品やミルク、紙おむつの寄付しかできませんでした」と語る。
救急車や医療従事者が攻撃を受ける
西岸地区の南端に位置するヘブロンでは、イスラエル軍が同市の出入りを制限しているため、MSFは移動診療や市外での産科支援が妨げられている。市内にあるMSFの診療所は稼働しているが、封鎖や不安感によって患者は診療所に行けずにいるとの報告もある。
ジェニンとトゥルカレムでは、救急車と医療従事者が繰り返し攻撃され、医療活動に深刻な支障が出た。侵攻の後半、特に難民キャンプでの医療ニーズが高まり、より多くの人道対応が必要とされていた。
ウィレメンは「MSFが支援しているジェニンのハリル・スレイマン病院の入り口にはイスラエル軍の装甲車が停まっています。電気と水も不足し、病院のスタッフは活動を続けるのが難しい状況です」と言う。
イスラエルは国際人道法上の義務の順守を
MSFの研修を受けて、パラメディカル(医師以外の医療従事者)として活動していたボランティアは、トゥルカレムのキャンプで患者に応急処置をしているときに負傷した。
「医療スタッフのユニフォームを着ていたのに、空から爆撃を受けて、爆弾の破片で目の上を負傷しました」
MSFの研修を受けた別のパラメディカルは、自宅に侵入したイスラエル兵に脅されたと語る。
「イスラエル軍はドアを壊しました。私は医療団体のボランティアだと何度も伝えましたが、隊員に外へ引きずり出され、背中を蹴られて頭に武器を突き付けられました」
今回のヨルダン川西岸への侵攻は、2002年以来最も激しいものだ。保健省によると、8月28日以来、39人のパレスチナ人が死亡し、140人が負傷している(9月5日現在)。イスラエルによるこうした攻撃は、ガザで紛争が始まってから急激に悪化している。昨年10月以降、ヨルダン川西岸地区では652人以上のパレスチナ人が殺害されている。
MSFは、民間人、医療従事者、救急車、医療施設、病院の保護を徹底するよう呼びかけるとともに、占領国であるイスラエル当局に対し、ヨルダン川西岸地区で医療やその他の必須サービスが妨害されることなく利用できるよう保証するという、国際人道法上の義務の順守を求める。