プレスリリース

ハイチ:首都近郊の武力衝突で多数の住民が孤立

2022年07月14日
ポルトープランスで、銃撃された患者から摘出した弾丸を見せるMSFの医師。この地域では流れ弾が問題になっている=2022年6月20日 © Johnson Sabin
ポルトープランスで、銃撃された患者から摘出した弾丸を見せるMSFの医師。この地域では流れ弾が問題になっている=2022年6月20日 © Johnson Sabin

ハイチの首都ポルトープランス近郊のシテ・ソレイユでは、武装集団間の縄張り争いにより孤立した地域から数千人の住民が退避できず、飲み水、食料、医療も届いていない。国境なき医師団(MSF)はこの状況に警鐘を鳴らすとともに、民間人と、その緊急のニーズに対応する人道援助団体に危害を加えないよう武装集団に求めている。 

逃げられない人びと

孤立状態にあるのは、シテ・ソレイユ市内のブルックリンという沿岸の地区。石油貯蔵施設のすぐ北側に位置し、湿った土壌に推定数千人が暮らしている。市内で戦闘の発生した7月8日以降、住民は武力衝突の中を退避できず、頼みの綱の給水トラックも入ることができない。

MSF現地活動責任者のムムザ・ムヒンドは「MSFはすべての武装集団に対し、ブルックリンへの援助提供を妨げず、民間人に危害を加えないよう求めています。また、人道援助関係者には、ブルックリンや戦闘の影響を受けた他の地域の住民に水、食料、医療などの緊急ニーズに対応するよう要請します」と訴える。

孤立した地域の医療施設の中で、唯一機能している私立診療所では、地元に住むMSFの医療従事者3人が負傷者の治療にあたっている。7月10日にはこの診療所から、銃撃の負傷者、妊婦、容体が深刻な子どもを含む12人の急患を避難させた。

「ブルックリンへ向かう唯一の道路沿いでは、腐敗しかかっている遺体や、焼かれた遺体を目にしました。戦闘で殺害された人たちか、逃げようとして撃たれた人たちか、まさに戦場です。どれほどの人が殺されたのかは知る由もありません」ムヒンドはこう話す。「立地に恵まれず、都市の廃棄物が川によって大量に運ばれて来る地区なのです。住民は水も電気もなく、医療もトイレもひっ迫しています。このところの戦闘で状況は悪くなるばかりです」

MSFはブルックリンで重篤患者を退避させる試みを続けている。しかし、他の多くの住民が望む退避の手助けはできていない。
 

ポルトープランスの航空写真=2021年9月25日 © Pierre Fromentin/MSF
ポルトープランスの航空写真=2021年9月25日 © Pierre Fromentin/MSF

一人でも多くの命を救うために

MSFは、シテ・ソレイユ市内の他の場所でも暴力被害者の治療を続けている。ドルイヤール地区のMSF救急診療所は負傷者の容体を安定させ、可能な限り病院に引き継いでいる。現地時間7月12日には救急診療所に手術室を開設し、緊急手術の提供を開始。しかし、近隣の武力衝突により、スタッフが何時間も安全な部屋に退避せざるを得ず、開設の準備はしばしば難航していた。

市内にあるMSFのタバル病院には、多くの負傷者が紹介されてきており、同院では患者への対応を拡大している。7月8日以降に外科チームが行った手術は1日平均15件に及ぶ。MSF医療コーディネーターのジャン・ジルベール・ンドングは「一人でも多くの命を救うことに専念しています」と話している。 

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