イベント報告
【イベント報告】エンドレスジャーニー展・長崎、名古屋──12日間で8000人近く来場
2025年10月10日
長崎には7日間で3755人、名古屋には5日間で4000人が来場。2019年に東京で初回の展示を始めて以降、福岡、大阪、広島、札幌、仙台と計2万5000人近い方々にお越しいただいたことになります。
「エンドレスジャーニー(Endless journey)」を終わらせる、「エンドディスジャーニー(End this journey)」に──。来場者の声や展示の様子を交えながら、長崎、名古屋での取り組みをご紹介します。
見て!触って!運んで!体験する子どもたち
世界では年間270万人以上が毒ヘビにかまれ、このうち10万人以上が犠牲となっています。
恒例コーナーの「熱帯・毒ヘビチャレンジ!」では、アフリカ・南スーダンで毒ヘビにかまれた事態を想定。パネルに書かれた六つの課題をこなしながら、現地の診療所で有効な解毒剤をもらうまでの流れを体験していただきました。
ゴール地点にはコブラのぬいぐるみが置いてあり、課題を達成した子どもたちは笑顔で記念撮影していました。

また、人道援助の現場では、何よりも「水」が大切です。人びとの命や衛生環境を守るため、安全な飲み水や生活用水が求められます。
人は1人当たり1日約15リットルもの水が最低でも必要とされていますが、遠く離れた給水所へくみに行かないといけない地域もあります。
そこで「水の重量体験」コーナーでは、20リットルの水が入ったポリタンクを用意。実際に短い距離を持ち運んでいただくことで、現地の人びとが水を手にする苦労を体感していただきました。

名古屋会場に来られた沖縄県出身の女性(76)は「まさに私も小学3、4年生の頃、1キロほど離れた湧水地まで行き、(約18リットル入る)一斗缶にくんで家まで運んでいたことを思い出しました。戦後の沖縄と似た状況の国・地域があることを学び、とても切ない気持ちです」と話し、ご自身の幼少期と重ね合わせていました。
会場では、計4カ所に置かれたスタンプを集めるスタンプラリーも実施。お子さんたちはうれしそうにスタンプを集めて、景品のオリジナルシールやクラフトペーパーをゲットしていました。

モノと写真から考える難民・移民たち
「難民の現状」コーナーでは、海を漂流する人びとを見つけた際、安全な救助船に移る前に渡して身に着けてもらうライフジャケットを展示しました。
その横には、実際に海上で救出された妊娠8カ月の女性(当時22歳)が着ていたTシャツも置かれました。ボートでの過酷な移動で海水がかかったのか、Tシャツには船の燃料の臭いが染みついています。

また、紛争が激化してから2年がたつパレスチナ・ガザ地区の現状を伝えようと、現地で撮影された写真およそ20枚を並べました。
名古屋会場では、ガザ地区への2度目の派遣から7月に帰ってきたばかりのロジスティシャン、村元菜穂の写真も展示。地元・名古屋市出身の村元が現地でスタッフと活動する姿を、多くの来場者にご覧いただきました。

さらに、会場の壁面にある大きな電光掲示板では、2023年10月より前にガザで撮られた写真のスライドショーを流しました。
笑顔の子どもや彩りある食卓、夕暮れの海岸などの光景から、ガザの人びとにも私たちと同じ大切な日常があったことを知っていただけたと思います。


「希望を届け続けたい」──名古屋でトークイベント
社会課題を分かりやすく発信する動画メディア「RICE MEDIA」代表のトム(廣瀬智之)さんをゲストに招き、MSF日本会長で医師の中嶋優子と対談。それぞれが現在の活動をしているきっかけや内容、やりがいなどをテーマに語りました。
「困難に遭遇したときどうするか」という話題になると、トムさんは「いま社会が混沌(こんとん)としていっている感覚はあるが、そういうときだからこそ希望を見出せるような存在が必要だと思う。自分は動画を通して『社会は良くなっていっているかもしれない』という希望を届け続けたい」と力を込めました。

中嶋は「現地で活動する中でも『こんなにも不条理な状況で、私一人がやることにどれだけの意味があるのか』と思うことも多い」としたうえで、「だからと言ってやらない理由にはならない。最後に『できることは全てやった』と思えるよう、自分の信じることを続けていきたい」と応じました。

平和へ思い寄せた長崎
長崎と名古屋の展示内容は、トークなどのイベントを除けば同一です。会場を視察した人の中には、長崎県の大石賢吾知事や、長崎市の鈴木史朗市長の姿もありました。
鈴木市長は1人で会場に現れ、展示物を熱心に見たあと、会場内のメッセージコーナーでペンを取り、平和への強い思いを込めた、以下のメッセージをお寄せいただきました。
「NO MORE HIROSHIMA
NO MORE NAGASAKI
NO MORE WAR
NO MORE HIBAKUSHA!」
(ノーモア広島、ノーモア長崎、ノーモア戦争、ノーモア被爆者!)

多くのご支援・メッセージをありがとうございます

長崎、名古屋ともに会場では皆さまからさまざまな展示のご感想をいただきました。
ロヒンギャの人びとを巡るミャンマーの状況を「こんなことが世界で起きているのか」と涙ながらに見ました。中学生、高校生など多くの若い世代にも課外授業などで来てもらい、「平和」について考えてみてほしいです。
また、会場では来場者の方々に多くのメッセージを紙に書いていただきました。
100以上が寄せられた名古屋会場では、市内から来た30代の女性が1歳の娘さんとともにこう記していました。
「世界中のお友達が 笑顔で楽しい毎日をおくれるように」

MSFは今後もさまざまなイベントを通じて、世界各地で目の当たりにした人道危機や、そこで生きる人びとの声を伝えてまいります。また皆さまとお会いできる日を心待ちにしています。
ガザ地区の状況に胸を痛めていて、何かできることがないかと思って親子で来ました。生まれる国が違うだけで、こんなにも境遇が変わってしまうのはとてもつらい。これからも自分にできることを考えていきたいです。