すべての家財を背負い出発する人びと──ンドゥタ難民キャンプの今 :タンザニア
2026年04月08日
2015年以降、アフリカ中央部の内陸国ブルンジで続く暴力激化により、隣国タンザニアのンドゥタにある難民キャンプへ逃れた人びと(ブルンジ難民)の本国送還が加速している。こうした中、国境なき医師団(MSF)は、現在の送還条件が、人びとの健康と尊厳を深刻な危険にさらしていると警告している。
過密化する出発エリア
送還プロセスは公式には「任意で自発的なもの」とされ、ブルンジへの社会復帰を支援する幅広い取り組みの一環と位置付けられている。しかし、現地のMSFチームは、特に出発エリアにおいて、状況が急速に悪化しているのを目の当たりにしている。
住居の取り壊しやキャンプの縮小が続く中、約1万8000人が水や基本的なサービスへのアクセスを制限されている。その結果、何千人もの人びとが過密状態の出発施設を通過せざるを得ず、健康リスクが高まるとともに、人びとの尊厳が損なわれている。
「サッカー場よりわずかに広い程度の区域にに、最大4000人が滞在しています」と、ンドゥタから戻ったタンザニアのMSF活動責任者、トマソ・サントは話す。
極度の過密状態に加え、ゴミが散乱しており、身動きすら困難です。
トマソ・サント タンザニアのMSF活動責任者
帰還を強いられる人びと──日本人スタッフが見た現実
MSFのアドボカシー担当としてタンザニアで活動中のベヒシュタイン紗良は、ンドゥタ難民キャンプを訪れたときの様子をこう語る。
頭の上や両脇、手押し車やゆがんでさびついた自転車に、どうやって積んだか分からないほどの荷物を載せて──運んでいるものが、彼らの全財産です。
道沿いの木々の間には、壊された家のレンガ造りの壁だけがところどころ残っていて、まるで襲撃を受けた集落のように見えます」
多くの人がブルンジへ帰ることに不安を抱えています。しかし、タンザニアに留まることもできません。
「日本の梅雨のような長く冷たく降り続く雨の中、身を守るすべもなく立ち尽くしている女性や子どもたちの姿が、いまも頭から離れません」
援助後退と帰還への懸念
世界的な国際援助の削減により、人道援助団体の撤退も急速に進んでおり、キャンプ全体で不可欠なサービスに大きな空白が生じている。複数の主要団体が2025年末までに撤退し、他の団体も2026年3月31日での活動終了を計画していると伝えられる。
サービスの縮小や撤退が進み、キャンプが解体されるなか、何千人もの人びとが医療や基本的なサービス、住居を失う危険にさらされ続けており、人道危機はより深刻化しつつある。
こうした状況は、人びとがどのような条件のもとで帰還しているのかについて、深刻な懸念を引き起こしている。MSFのチームによると、難民の間では諦めの空気が広がっており、多くの人が現実的な選択肢がないまま、帰還を受け入れざるを得ないと感じているという。
避難所の撤去や生活環境の悪化は、人びとが自由かつ十分な情報に基づいた意思決定を行う余地を一層狭めている。
サントは言う。
難民の帰還は期限ではなく、保護基準に従って行われるべきです。そのためには、強力な人道上の保障措置が不可欠です。
トマソ・サント タンザニアのMSF活動責任者
こうした安全策が講じられなければ、現在進められている取り組みは、何千人もの人びとを本来避けられたはずの被害にさらし、すでに深刻な人道状況をさらに悪化させかねない。
ンドゥタでのMSFの活動
2015年にブルンジで暴力が激化した後、数千人がタンザニアのンドゥタ難民キャンプへ避難した。この難民キャンプは、世界で最も慢性的な資金不足に悩むキャンプの一つであり、2019年には最大12万人が、2025年末時点でも5万人が生活している。
MSFは過去10年にわたって、この危機が急性の緊急事態から、状況の不確実性と人道援助の減少を背景に、長期的な人道危機へと変化していく様子を目の当たりにしてきた。
その中で、MSFはキャンプにおける主要な医療援助団体の一つとして、難民および近隣の受け入れコミュニティなど数十万もの人びとに対し、基礎医療や二次医療、産科・新生児医療、心のケア、性暴力の被害者へのケアなど、幅広い医療を提供し続けてきた。




