マールブルグ病が分かる4つの質問──タンザニアで発生した出血熱にどう対処するのか
2025年03月14日
タンザニア政府は2025年1月20日、同国でのマールブルグ病の発生を公式に宣言した。保健省によると、2月14日までに感染者および感染の疑いのあった10人が全員死亡した。
その後、新たな感染者が42日間確認されなかったことから、世界保健機関(WHO)の基準を満たしたとして、同省は流行の終息を3月13日に宣言した。
マークブルグ病とは、どんな病気なのか。どんな危険性があるのか。この感染症の基礎知識と予防策、そして国境なき医師団(MSF)の対応を、4つのポイントで紹介する。
マールブルグ病とは?
WHOによると、マールブルグ病(Marburg Virus Disease)はマールブルグ・ウイルスによって引き起こされる出血熱で、命にかかわることもある感染症。このウイルスはフルーツコウモリからヒトに感染し、感染者との接触によって広がる。症状には発熱、嘔吐、下痢、出血などがある。
致死率は、発生状況や医療対応の有無によって25%近くから90%近くまでと幅がある。すみやかに治療を行わないと、すぐに臓器不全を引き起こし、死につながるおそれがある。
感染が確認された場合、感染者をすぐに隔離すること、接触者の追跡を行うこと、適切な管理体制を備えた治療センターを設置することが重要となる。また、公衆衛生キャンペーンや検疫措置も実施する必要がある。
流行を防ぐために重要なことは?
マールブルグ病のような出血熱の流行に効率的に対応するためには、主に以下のようなことが挙げられる。
- 早期発見と監視
- 症例報告システムと検査室を活用して疑い例を迅速に特定し、ウイルスの拡大を追跡する監視体制を組む
- 対応チームの派遣とトレーニング
- 感染と症例の管理において経験豊富なチームを派遣し、現地の医療従事者のトレーニングおよび治療の際に必要な個人防護具を装備していることを確認する
- 隔離および治療センター
- 感染者のための専門の治療センターを設置し、適切な隔離、集中治療、治療へのアクセスを確保する
- 地域社会との連携と教育
- 地域社会と連携し、感染リスク、予防方法、安全な埋葬方法についての意識を高めるとともに、保健当局との協力や対策の実施を推進する
- 国際協力とリソースの動員
- 現地の保健当局の調整のもと、リソース、専門知識、ロジスティック・サポートを共有し、個人防護具、医療用品など必要な物資や人的リソースが確実に利用できるようにする
- 安全な埋葬
- 葬儀や遺体の処理中にウイルスが拡散しないよう、安全な埋葬方法を導入する

感染リスクを減らすためにできることは?
リスクを低減するためには、日々の衛生管理を強化し、通常よりも身体的な接触を避け、公的機関が発令する隔離や渡航制限に関する勧告に従うことが求められる。
具体的には、以下のようなポイントが必要だ。
具体的には、以下のようなポイントが必要だ。
- 症状が現れている人との接触および体液との直接接触を可能な限り避けること。また、感染につながる可能性のある器具、食器、物品を共有しないこと。
- せっけんと水で定期的に手を洗うこと。また、表面を消毒し、手指にも消毒剤を使用すること。
- 感染源となりうる病気にかかった動物や死んだ動物(特にフルーツコウモリ)に触れないこと。
- 感染により亡くなった人の遺体は、安全な埋葬手順に従って訓練を受けた人が取り扱うこと。
- 保健当局が発令する隔離および渡航制限に従うこと。また、社会的距離(ソーシャル・ディスタンス)が推奨されている場合にはその距離を保つこと。
MSFの対応は?
MSFは保健省の主導のもと、北東部カゲラ地方でマールブルグ病への対応を積極的に支援した。症例の管理や接触者の追跡、医療機器や防護具の供給を行ったほか、感染症流行への経験豊富な医療チームを派遣し、現地の医療従事者への研修を実施するなどして、対応能力を強化してきた。
MSFはこの病気に関する人びとへの意識向上と予防を促進させるため、関係者と協力しながら現地での活動を続けている。
