内戦後も奪われ続ける命──シリア東部を脅かす爆発物と深まる医療危機
2026年07月03日
2024年12月に前政権が崩壊し、戦闘が終結したシリア。しかし、長年にわたる内戦によって残された地雷や不発弾などの爆発物は、今なお人びとの命と暮らしを脅かしている。
国境なき医師団(MSF)が被害の大きい東部デリゾール県の国立病院で緊急医療援助を開始してから1年。この間、数百人が爆発物による負傷で治療を受けた。
報告書が示す深刻な現状
MSFは報告書『戦争が残した爆発物──シリア・デリゾール県の長期的な被害(Explosive Remnants of War – Lasting Harm in Deir Ez-Zor, Syria)』を発表し、負傷者が適時かつ包括的な専門医療を受ける際に直面する課題や、地雷・不発弾対策に取り組む関係機関の重要な役割について明らかにしている。
本報告書は、2025年4月から2026年4月までのMSFおよび保健省の医療データに加え、現場での活動から得られた知見や、患者、家族、医療従事者への聞き取り調査に基づいて作成された。
この間に、MSFと保健省のチームはデリゾール国立病院の救急外来で、地雷や不発弾、放置された爆発物によって負傷した215人以上を治療した。そのうちのほぼ半数は子どもだった。
日常に潜む爆発物の危険
デリゾール県は今なお、シリア国内で最も多くの地雷や不発弾などの爆発物が残されている地域の一つだ。
人びとは農作業や家畜の放牧、トリュフの採集のほか、被害を受けた家や建物へ戻るといった日常生活のさまざまな場面で負傷している。特に子どもたちは、屋外で遊んだり、廃墟となった建物を探検したりする際に危険にさらされている。
また、負傷した人びとの多くは、救急医療を受けるために遠隔地から危険な道のりを長時間かけて移動しなければならず、救急車を利用できないケースも少なくない。
「活動開始から1年間で、子どもや農地で働く人びとを含め215人以上の負傷者を治療してきました」と、デリゾール県でMSFのプロジェクト・コーディネーターを務めるレベッカ・カーは話す。
「残念ながら、こうした爆発物による民間人の被害は今も後を絶ちません」
人びとは農作業や家畜の放牧、トリュフの採集のほか、被害を受けた家や建物へ戻るといった日常生活のさまざまな場面で負傷している。特に子どもたちは、屋外で遊んだり、廃墟となった建物を探検したりする際に危険にさらされている。
また、負傷した人びとの多くは、救急医療を受けるために遠隔地から危険な道のりを長時間かけて移動しなければならず、救急車を利用できないケースも少なくない。
「活動開始から1年間で、子どもや農地で働く人びとを含め215人以上の負傷者を治療してきました」と、デリゾール県でMSFのプロジェクト・コーディネーターを務めるレベッカ・カーは話す。
「残念ながら、こうした爆発物による民間人の被害は今も後を絶ちません」
外傷治療やリハビリテーションの体制強化に加え、汚染された土地の爆発物の除去が進まなければ、こうした負傷は今後も繰り返されるでしょう。
レベッカ・カー シリア・デリゾール県のMSFプロジェクト・コーディネーター
負傷した後も続く困難
爆発によって負傷した人や手足を失った人が多くいるにもかかわらず、リハビリテーションや義肢装具の提供、専門的な心のケア、社会・経済的支援へのアクセスは依然として著しく限られている。そのため、多くの患者が回復したり、自立を取り戻したりすることが難しい状況に置かれている。
デリゾール県出身のモハンマドさんは、農作業中に地雷を踏み、両足を膝上から失った。負傷によって一変した自身の生活を、次のように語る。
デリゾール県出身のモハンマドさんは、農作業中に地雷を踏み、両足を膝上から失った。負傷によって一変した自身の生活を、次のように語る。
「以前は毎日働いて、自分で生計を立てていました。でも今は、ほとんどの時間を家で過ごし、ほぼすべてのことを家族に頼らざるを得ません」
義足を使えるようになれば、昔の生活を少しでも取り戻せるかもしれません。
モハンマドさん 地雷で両足を膝上から失った男性
デリゾール国立病院の医療スタッフは、人びとが危険を冒さざるを得ない背景に、経済的な苦難があると指摘する。救急科・整形外科のワシーム・アワク医師は言う。
家畜の放牧やトリュフ採集のために、地雷が埋まっていると分かっていながら、危険な地域に足を踏み入れる人もいます。一家で複数の人が負傷し、同時に治療を行うケースもあります。
ワシーム・アワク医師 デリゾール国立病院の救急科・整形外科医
回復への道を阻む医療不足
デリゾール県で大きな課題となっているのが、緊急外傷医療へのアクセスだ。専門医や医療機器の不足に加え、退院後の支援体制も十分ではなく、多くの患者が合併症や死亡のリスクにさらされている。
「負傷者の数が病院の受け入れ体制を上回ることも少なくありません」と、デリゾール国立病院の整形外科部長であるアマル・アル・ラジャブ医師は話す。
「負傷者の数が病院の受け入れ体制を上回ることも少なくありません」と、デリゾール国立病院の整形外科部長であるアマル・アル・ラジャブ医師は話す。
とりわけ退院後の支援は不十分で、義肢装具の専門家やリハビリテーションのサービスが深刻に不足しています。
アマル・アル・ラジャブ医師 デリゾール国立病院の整形外科部長
MSFはまた、残された爆発物による汚染が、人道援助活動や生活に欠かせないサービスへのアクセスに深刻な影響を及ぼしている状況を目の当たりにしている。
医療施設や給水インフラ、住宅地の一部には今なお爆発物が残されており、地域住民だけでなく、人道援助団体も安全なアクセスが妨げられている。
被害を防ぎ、人道援助活動や復興を進めていくためには、汚染状況の調査や爆発物の除去、人びとへのリスク回避教育といった地雷対策活動の継続が不可欠だ。
医療施設や給水インフラ、住宅地の一部には今なお爆発物が残されており、地域住民だけでなく、人道援助団体も安全なアクセスが妨げられている。
被害を防ぎ、人道援助活動や復興を進めていくためには、汚染状況の調査や爆発物の除去、人びとへのリスク回避教育といった地雷対策活動の継続が不可欠だ。
被害を繰り返さないために──支援強化が急務
2025年4月以降、MSFは保健省と協力しながら、デリゾール国立病院の救急外来を支援している。救急医療に加え、検査体制や感染予防・管理、医療器具の滅菌、水・衛生環境の改善にも取り組んでいる。
また、スタッフへの研修やトリアージ体制の導入、患者の受け入れから診療までの流れの改善を進めてきた。さらに、院内の医療廃棄物管理区域の改修を行ったほか、新たな焼却炉やX線装置の設置など、医療体制の強化を支援している。
MSFは、爆発物によって汚染された地域の安全確保が進むことを求めるとともに、負傷者へのリハビリテーションや義肢装具、心のケアなどの専門医療を拡充するための支援強化を訴えている。
こうした対策が進まなければ、デリゾール県の人びとは内戦終結後もなお、避けられたはずの死や人生を一変させるような負傷に苦しみ続けることになると、MSFは警鐘を鳴らしている。
また、スタッフへの研修やトリアージ体制の導入、患者の受け入れから診療までの流れの改善を進めてきた。さらに、院内の医療廃棄物管理区域の改修を行ったほか、新たな焼却炉やX線装置の設置など、医療体制の強化を支援している。
MSFは、爆発物によって汚染された地域の安全確保が進むことを求めるとともに、負傷者へのリハビリテーションや義肢装具、心のケアなどの専門医療を拡充するための支援強化を訴えている。
こうした対策が進まなければ、デリゾール県の人びとは内戦終結後もなお、避けられたはずの死や人生を一変させるような負傷に苦しみ続けることになると、MSFは警鐘を鳴らしている。




