シリア:武力衝突による大規模な避難 人びとに迫る医療と生活の危機
2025年10月22日
今年7月と8月にシリア南部のスワイダ県で発生した武力衝突により、数千世帯が避難を余儀なくされた。人びとは生活必需品や基本的なサービスが著しく不足し、極めて厳しい状況に置かれている。隣接するダルアー県でも、医療や物資へのアクセスが困難な状態が続いている。
ダルアー県の避難所に暮らす人びとを支援するため、国境なき医師団(MSF)は7月から緊急対応を開始した。
2つの移動診療チームを運営し、さらにダルアー県保健当局の2つの移動診療チームを支援するかたちで、ハラク、ムセイフラ、ヒルベト・ガザラおよびスワイダ県境のジャバブ地区にある24カ所の避難所で、基礎医療を提供。これまでに、避難民および地域の住民を含む約5220人を診察した。
MSFはまた、マットレス、毛布、衛生用品、調理器具などの生活必需品を400世帯以上に配布したほか、避難所の水と衛生施設の改修も行った。

スワイダ県では、MSFはシリアのNGO団体「バハル」および県保健当局と連携し、緊急援助物資の配布を行っている。スワイダ市、サルハド、シャハバでは、避難生活を送る人びとに対し、衛生キット300セット、調理キット50セット、ディーゼル燃料8000リットルを提供した。
また、県内の医療サービスの復旧を支援するため、スワイダ病院に3カ月分に相当する軽油1万6000リットルを供給したほか、文房具や衛生用品も配布した。

広がる不安や怒り 継続的支援が不可欠
最近では、MSFがダルアー県で医療支援を行っていた避難所の多くが閉鎖されつつある。これらの施設のほとんどは学校であり、新学期に向けて再開準備が進められているためだ。
「ほぼすべての人が凄惨な暴力を経験しており、医療および心のケアを強く望んでいます」とMSFの医療コーディネーター、フアド・タヒル医師は言う。
スワイダ県での暴力のトラウマに加え、過酷な生活環境、解決策が見出せないことによる先行き不安、そして、さらなる避難の可能性が、人びとの精神的負担を増大させ、ストレスや怒りの感情を強めています。
フアド・タヒル医師 MSF医療コーディネーター

「多くの人が悪夢や睡眠障害、体の痛みといった心身症状を訴えている一方で、将来への不安や恐怖も広くまん延しています」とタヒル医師は話す。
MSFはダルアー県とスワイダ県の両地域で、人道援助活動を続けている。しかし、避難の長期化に加え、学校の新学期を前に避難所が閉鎖される中、人道ニーズと利用できるサービスとのギャップはますます拡大している。両地域のコミュニティが取り残されないよう、継続的な支援が不可欠だ。
