すべてを失った町へ──南スーダン:住民の帰還が始まるも支援は依然不足
2026年06月26日
南スーダン東部ジョングレイ州アコボでは、住民の帰還が進む一方、医療体制や水・衛生インフラは壊滅的な状態にある。人道支援も依然として圧倒的に不足する中、国境なき医師団(MSF)は、2026年初めに数カ月にわたり続いた戦闘を受け、同地で緊急医療活動を続けている。
紛争であらゆるものを失った町
その後、4月中旬に再び衝突が発生し、反政府側の武装勢力が町の支配権を奪還した。現在では10万人以上がアコボに帰還しているが、町はあらゆるものを失った状態にある。医療体制は完全に崩壊しており、周辺の15カ所すべての医療施設が略奪され放棄されたほか、コールドチェーン設備も破壊され、予防接種も全面的に停止している。
「アコボにおける人道支援の対応は、再三にわたる行動要請やハイレベルでの支援表明にもかかわらず、依然としてニーズの規模に大きく見合っていません」と、アコボでMSFのプロジェクト・コーディネーターを務めるジェイコブ・グレンジャーは話す。
「ドナー機関および人道支援関係者は、マラリア感染がピークを迎える時期を前に、水・衛生、食料支援、アコボ教育病院の完全な機能回復、防蚊ネットの配布を含む人びとの安全と生活を守るための支援など、あらゆる分野で緊急に対応を拡大する必要があります。MSFの活動再開により、アコボでは命を守るために不可欠な医療が徐々に再開されていますが、それだけでは十分ではありません」
子どもの栄養失調も深刻
アコボは現在、「総合的食料安全保障レベル分類(IPC)」でフェーズ5に分類され、飢饉(ききん)寸前の状態にある。医療サービスの機能停止が数カ月にわたり続いたことで、子どもたちへの影響は極めて深刻だ。5月11日から6月14日の間にMSFの施設で診療を受けた生後6カ月から59カ月(0歳半〜4歳まで)の子どものうち、36%が栄養失調で、そのうち15%は重度の急性栄養失調に陥っていた。
「活動開始から6月初旬にかけて、妊婦を含むすべての患者が床で寝る状況にありました」と、アコボで活動するMSFの伝統的分娩介助者であり助産師のエリザベス・ニャチン・コアングは語る。
「かつて妊娠の経過を確認するために使用していた機器は、すでに失われています。胎児の発育状況や子宮内で順調に育っているかどうかを適切に判断することができません」
女性たちは非常に厳しい環境の中で出産しています。私たちはできる限りのことをしていますが、より良いケアに必要な多くの機器や資材はなくなってしまいました。
MSFの助産師 エリザベス・ニャチン・コアング
高まるリスクを前に支援拡大が急務
多くの家族は野草や果実を頼りに生き延びていた。国連機関は、子どもや妊婦・授乳中の女性を対象とした補助栄養プログラムを含む食料配給を開始しているが、全体として他の人道援助機関による対応は、まだ状況の深刻さと緊急性に見合っていない。
また、水・衛生システムの崩壊により、感染症の大規模発生リスクが極めて高まっている。紛争前には、17の給水塔と35の掘削井戸が地下の配水網を通じてアコボに水を供給していたが、これらは戦闘によりすべて破壊または略奪された。
現在稼働しているのは、手押しポンプ式の井戸わずか8基のみで、10万人を超える人口のうち約5000人分の需要しか賄えていない。多くの人びとは未処理の河川水に頼らざるを得ず、野外排泄も広く行われている。
すでにマラリアの感染拡大が進むなか、雨期も本格化しており、コレラを含む水系感染症の発生リスクは極めて高い。ジョングレイ州ではコレラが2月以降拡大しており、このまま緊急かつ体系的な人道対応が大幅に強化されなければ、リスクは急速に高まる見込みだ。




