スーダン:ダルフール地方で猛威を振るうはしか 子どもへの予防接種が急務
2025年06月18日
国境なき医師団(MSF)はここ1年、スーダン・ダルフール地方の4つの州で、はしかの流行を目の当たりにしてきた。
この地域のいくつかの場所で最近、大規模な集団予防接種がようやく実施されるようになった。しかし、まだ一度もワクチンを接種していない子どももおり、MSFは予防接種をさらに強化する必要があると強く訴えている。
多く地域で感染が急拡大
MSFがダルフール地方で初めてはしかの急増を確認し、治療を行ったのは、2024年6月、中央ダルフール州ジェベル・マラ山脈北部のロケロだった。ロケロは、MSFが2020年から現地の保健省が管轄する病院を継続的に運営している町だ。
2025年初めにはジェベル・マラ東部、南ダルフール州、そして西ダルフール州のフォルブレンガでも症例が報告された。最近では、MSFが活動しているザレンゲイ、ソルトニ、そしてチャド東部のティニでも新たな感染拡大が見られる。
2025年初めにはジェベル・マラ東部、南ダルフール州、そして西ダルフール州のフォルブレンガでも症例が報告された。最近では、MSFが活動しているザレンゲイ、ソルトニ、そしてチャド東部のティニでも新たな感染拡大が見られる。
MSFが運営または支援する医療施設では、2024年6月から2025年5月末までに9950人がはしかの治療を受けた。そのうち入院が必要だった重症者は約2700人、そして、35人が命を落とした。患者の急増に対応するため、MSFは病院3カ所で小児病棟のベッド数を増やした。

ワクチン未接種と内戦が流行の引き金に
この状況の根本的な原因の一つは、この地域における予防接種率が非常に低いことだ。
「フォルブレンガでは、はしか患者の30%は5歳以上であり、そのうち予防接種を受けているのはわずか5%です。これは、ワクチンの未接種が紛争前から長らく続いていることを示しています」と、西ダルフール州のMSF副活動責任者であるスー・バックネルは話す。
「いま続いている紛争も、感染拡大に拍車をかけています。感染症の予防と対応の両面で、医療従事者の活動が制限されているからです」と、中央ダルフール州のMSF医療コーディネーターであるセシリア・グレコ医師は付け加える。
人びとの大規模な避難により、地域全体で病気の拡大がさらに加速し、状況はより一層、複雑化しています。
セシリア・グレコ医師 中央ダルフール州のMSF医療コーディネーター

相次ぐ予防接種の中断
2023年4月にスーダンで内戦が勃発して以来、度重なる行政上の障害と主要な道路の定期的な封鎖により、ダルフール地方全域でワクチンが不足している。
これにより、いくつかの地域では、時に数カ月にもわたって、集団予防接種が中断された。例えば、5万5000人以上が暮らす北ダルフール州ソルトニの避難民キャンプでは、2024年5月から2025年2月まで、予防接種が完全に停止した。
こうした制約や供給不足により、医療従事者が適切な対応を行う機会も制限されてしまっている。MSFは2024年11月にジェベル・マラ北部で、9600人の子どもにワクチンを接種するなど、いくつかの集団予防接種を実施した。
しかし、ワクチンの供給が不十分であったため、明らかなニーズがあったにも関わらず、5歳以上の子どもを対象外とせざるを得なかった。
これにより、いくつかの地域では、時に数カ月にもわたって、集団予防接種が中断された。例えば、5万5000人以上が暮らす北ダルフール州ソルトニの避難民キャンプでは、2024年5月から2025年2月まで、予防接種が完全に停止した。
こうした制約や供給不足により、医療従事者が適切な対応を行う機会も制限されてしまっている。MSFは2024年11月にジェベル・マラ北部で、9600人の子どもにワクチンを接種するなど、いくつかの集団予防接種を実施した。
しかし、ワクチンの供給が不十分であったため、明らかなニーズがあったにも関わらず、5歳以上の子どもを対象外とせざるを得なかった。
これにより、予防接種の長期的な効果は必然的に低下した。実際に集団予防接種を行った当初は流行が鈍化したが、2025年2月以降は再び感染者が急増し始めたのだ。

緊急対応のみでは感染拡大は防げない
現在、ダルフール地方の各地で集団予防接種が行われているが、その交渉や手続きには長い時間がかかった。MSFが複数の場所で感染拡大を警告してから、ポート・スーダンの保健省とユニセフが備蓄していたワクチンが提供されるまでには、数カ月を要した。
その後、ようやく各地で接種が始まり、フォルブレンガでは地元保健省主導の集団予防接種をMSFが支援し、9カ月から15歳の子ども5万5800人がワクチンを接種した。また、ジェベル・マラ北部とソルトニでも9万3000人が予防接種を受ける予定だ。
その後、ようやく各地で接種が始まり、フォルブレンガでは地元保健省主導の集団予防接種をMSFが支援し、9カ月から15歳の子ども5万5800人がワクチンを接種した。また、ジェベル・マラ北部とソルトニでも9万3000人が予防接種を受ける予定だ。
「これらの集団予防接種が一定の成果を上げているとしても、本来はもっと早く実施すべきでした。そうすれば、多くの症例とその影響は防げたでしょう」とグレコ医師は言う。
こうした緊急対応型の集団予防接種は確かに重要ですが、ダルフール地方全域、特に遠隔地を含む地域において、ワクチン接種と予防に関する大規模な取り組みが実施されない限り、それは開いた傷口に絆創膏を貼るようなものに過ぎません。
セシリア・グレコ医師 中央ダルフール州のMSF医療コーディネーター

他の感染症も脅威に
また、バックネルはこうした取り組みが開始されなければ、さらなる感染症の流行が起こる恐れがあると指摘する。
「現在、ダルフール地方で大流行につながる可能性のある感染症は、はしかだけではありません。過去10日間で、MSFが支援する医療施設2カ所に、コレラの疑いのある患者約200人が搬送されました。これは、ハルツーム州およびスーダンの他の地域で発生した大規模なコレラの流行に続くものです」
グレコ医師は語る。
「国および地方の保健当局、国連機関、そして現地のすべての医療関係者が協力し、これまでの集団予防接種で取り残されたすべての子どもたちに予防接種を行うべきです」
加えて、コレラなどの他の感染症がダルフール地方でまん延した場合にも、迅速かつ効率的に対応できる能力を強化することが不可欠です。また、スーダン国内および地域間で、これまでのような障害に直面することなく、ワクチンを供給できるようにすることも重要です。
セシリア・グレコ医師 中央ダルフール州のMSF医療コーディネーター