「停戦なのに薬も包帯も入らない。今すぐ物資搬入を」──パレスチナ・ガザ地区の医師の訴え
2026年04月09日
停戦合意が成立しているにもかかわらず、イスラエルによる封鎖が続くパレスチナ・ガザ地区。国境なき医師団(MSF)は今年1月1日から、医療や人道援助活動に必要な物資を搬入できなくなっている。
国際NGO37団体の人道援助活動を認めないイスラエル政府の方針により、MSFの国際スタッフはパレスチナを離れざるを得なくなったが、約1600人のパレスチナ人地元スタッフは今も日夜、ガザ地区とヨルダン川西岸地区でそれぞれ活動を続けている。
ガザの医療現場は、今どんな状況なのか。MSF医療コーディネーターのランダ・アブ・エル=へイル・マスード医師が現場から報告する。
元日以降、全く入らない物資
ガザの病院や診療所では、医療物資の搬入制限による影響を日々、感じています。ガザでのニーズは膨大ですが、イスラエル当局による阻止のため、十分な物資が搬入されていません。
ガザのすぐ外では、食料や医薬品を積んだトラックが入れないまま立ち往生しています。MSFも2026年1月1日以降、一切の物資を搬入できていません。
私たちは非感染性疾患(NCD)治療薬の深刻な在庫不足に直面しています。
糖尿病、高血圧、甲状腺疾患、喘息およびその他の呼吸器疾患の治療薬を含め、必要な慢性疾患の治療薬の半分が危機的に不足しており、必要なケアを提供する能力が脅かされています。
すでにNCD診療部門では新規患者の受け入れを停止せざるを得ず、既存の患者に対するケアの提供や薬剤の調剤も制限しています。
適切な治療が提供できなければ、慢性疾患を抱える患者の病状が悪化し、本来であれば防ぐことができたはずの死に至る可能性が高まります。
ガーゼや包帯も足りない
ガーゼや圧迫包帯などの包帯材料も不足しており、これはすべての傷口のケアに影響を及ぼします。特に、外科的処置、術後ケア、外傷性創傷に対する包帯処置を行っている仮設病院では、影響は深刻です。
創傷ややけどからの感染を防ぐためには、十分な包帯を確保することが不可欠です。 例えば、仮設病院の外来診療では、平均して毎日100人以上の患者が包帯類を必要としており、さらに毎日最大30人のやけど患者が入院しています。
しかし、2025年8月から9月にかけてガザが完全に封鎖されていた期間には、私たちは非滅菌ガーゼを使用せざるを得ませんでした。
これらのガーゼは滅菌処理を行っていましたが、これは最適な手順ではなく感染リスクを伴うため、最終手段としてのみ使用されるべきものです。私たちは再び、その状況に近づいています。
他のMSF施設から限られた量の圧迫包帯を入手することはできていますが、病院全体で在庫が不足しているなか、このような対応は持続可能な解決策ではありません。
こうした制限は、医療機器の供給にも重大な影響を及ぼしています。今年初めから新しい機器の搬入が一切できておらず、チームや活動に多大な負担がかかっています。
機材の故障で手術の中断も
その一例として、2週間前、2歳の子どもの手術中に、仮設病院で唯一の整形外科用ドリルが故障しました。 チームは別の病院から代替品を探さなければならず、その結果、手術が遅延し、医療スタッフに大きな負担が生じました。
新しい物資や予備部品を搬入することができないため、機器の故障は手術の延期や中止を余儀なくされることを意味します。その結果、患者の回復過程に影響を与えたり、障害の発生や悪化につながったりする恐れさえあります。
私たちはガザ地区内に現在ある機器に頼らざるを得ませんが、それらは長期間使われてきたうえ、使用頻度と負荷の高さから故障が増えています。
今すぐガザに物資を
私たちのチームは医療提供を続けるために懸命に取り組んでいますが、現場は多大な負担にさらされています。
医療スタッフの献身や場当たり的な対応策だけでは、安定的かつ妨げのない物資の搬入に取って代わることはできません。
今こそ、ガザへの医療物資と機器の搬入が必要です。




