ヨルダン川西岸地区:イスラエルが進める「民族浄化」──南部に家屋の85%以上が破壊された村も
2025年10月20日
パレスチナ・ヨルダン川西岸地区の南部にあるマサーフェルヤッタ地域では、イスラエルによる家屋破壊と入植者の暴力が相次いでいる。
ある村では、85%以上の家や避難所ががれきと化した。住民たちは洞穴での生活を余儀なくされ、電気も水も失った中で日々の脅威にさらされている。医療、衛生、食料などの支援が急務だが、何よりも人びとが求めているのは「保護と尊厳」、そして「自分たちの土地にとどまる権利」だ。
国境なき医師団(MSF)の人道問題マネジャー、フレデリケ・ファン・ドンゲンは「この地域で起きていることは、パレスチナ人を強制的に排除する民族浄化の一環だ」と警鐘を鳴らしている。
ある村では、85%以上の家や避難所ががれきと化した。住民たちは洞穴での生活を余儀なくされ、電気も水も失った中で日々の脅威にさらされている。医療、衛生、食料などの支援が急務だが、何よりも人びとが求めているのは「保護と尊厳」、そして「自分たちの土地にとどまる権利」だ。
国境なき医師団(MSF)の人道問題マネジャー、フレデリケ・ファン・ドンゲンは「この地域で起きていることは、パレスチナ人を強制的に排除する民族浄化の一環だ」と警鐘を鳴らしている。
MSF人道問題マネジャー フレデリケ・ファン・ドンゲンからの報告
繰り返される破壊、奪われた日常
ヨルダン川西岸地区の南部にあるヘブロン県。
県内のマサーフェルヤッタ地域にあるハーレト・アタバア村では、住民のパレスチナ人たちが日々、イスラエル軍の保護下にある入植者らから嫌がらせや脅迫、暴力行為を受けています。
多くの住民は家を破壊され、十分な住まいや水、電気のない苦境に置かれています。
多くの住民は家を破壊され、十分な住まいや水、電気のない苦境に置かれています。

地元住民の話によると、2025年2月以降、イスラエル軍は4度にわたる大規模な破壊行為に及びました。
家屋や避難所のうち85%以上ががれきと化し、家族たちは洞穴へ移り住まざるを得なくなりました。
しかしそこにも入植者がやってきて、襲撃される被害に遭っています。
その上、イスラエル軍は数週間前にも再び戻ってきて、避難所7カ所、テント9カ所、洞窟6カ所、そして14基以上の水タンクと村の電力システム全体を破壊しました。
住民たちは、身を寄せられる安全な場所をほぼ失いました。この村に残っているのは、学校とわずか3軒の家だけです。

こうした壊滅的な状況にもかかわらず、ここに暮らす約100人はいまも立ち退きに抵抗を続けています。
ある住民は「入植地が日ごとに拡大しており、少しずつ村に近づいてきています」と不安を口にしました。
「私たちは難民にならない」──土地に残る住民たち
MSFのチームはハーレト・アタバア村を訪問。聞き取りの結果、住民たちが医療や心のケア、衛生用品、食料、そして水・衛生サービスを求めていることが分かりました。
しかし、人びとが何よりも強調したのは、「保護」「尊厳」「生活基盤」の必要性でした。
しかし、人びとが何よりも強調したのは、「保護」「尊厳」「生活基盤」の必要性でした。

MSFはマサーフェルヤッタ周辺にある計5カ所の村で、移動診療を通じて基礎医療、心のケア、心理社会的支援を届けています。
ある住民の女性はMSFのチームにこう証言しました。
1カ月前、9人の入植者たちが私の家に押し入りました。そのとき家には、私と4人の子どもしかいませんでした。彼らは金属棒で子どもたちを殴り始め、生後3カ月の乳児の頭も殴ろうとしました。私と乳児は催涙スプレーを噴射され、かばおうとした私は何度も殴られて手を骨折しました。13歳の子どもは腕の骨を折り、3歳の子どもは頭を骨折しました。乳児は病院に運ばれましたが、嘔吐(おうと)が続いているため現在も経過観察中です。
イスラエルの入植者に襲われた女性

マサーフェルヤッタで起きていることは、この地域からパレスチナ人を強制的に排除するための「民族浄化」の一環です。
しかし、繰り返される破壊、攻撃にもかかわらず、誰ひとりとして村を離れていません。住民たちは強く訴えます。
「自分たちの土地で、決して『難民』にはならない」と。
