【動画】「医療が息絶えようとしている」──ガザ:崩壊する医療体制 医師が訴える壊滅的な状況とは
2025年08月19日
1年10カ月にわたるイスラエルの全面攻撃により、パレスチナ・ガザ地区の医療体制はほぼ崩壊している。医療施設および医療従事者は絶えず攻撃の対象となり、病院の半数が機能を停止、残る病院の稼働も一部にとどまっている。2025年3月以降、ガザはほぼ完全に封鎖されており、医療施設には物資が届かず、医療スタッフも十分な食料を確保できていない。一方、7月にはガザ全域の医療施設において、2023年10月以降で最多の入院患者数が記録された。

(動画:1分59秒)
命を守るべき医療さえも
ガザの医療体制は、もはや機能をほとんど失い、壊れた抜け殻のようです。
ガザで、人びとが生きるためのすべてが計画的に破壊されていくなか、命を守るべき医療さえも押し潰されてしまったのです。

過去最多の外傷患者
2025年7月、ガザのMSFチームは、数百人にのぼる外傷患者の治療を行いました。その数はガザでこれまでに記録された中で最も多いものです。
特に7月末の1週間だけで1200人が入院し、6月と比べ大幅に増加しました。世界保健機関(WHO)によると、7月、ガザにおける負傷者数は1万3500人に達し、2023年の紛争激化直後の最初の3カ月間以降、これほど多くの負傷者が報告されたのは初めてです。
MSFの診療所の中には、わずか数時間で200人以上を治療した後、午前9時30分には患者の受け入れを停止せざるを得ないところもあります。私たちがみることができる患者は、医療を必要としている人びとのほんの一部にすぎません。追加の医療物資やベッドもなく、スタッフもいなければ、より多くの患者に適切な治療を提供することは不可能です。

治療にたどり着けず命を落とす
多くの人びとが、私たちのもとにたどり着く前に命を落としています。また、過密状態の救急室や廊下で何時間も出血したまま横たわっている人びともいます。
他の場所であれば治療可能な傷も、ここでは命の終わりを意味するのです。

すべての病院が患者であふれています。MSFの施設は100%以上の稼働率で運営されており、シファ病院をはじめとする保健省管轄の病院では200%を超えています。外科処置が必要な患者が非常に多く、手術を行う前に死亡する患者も少なくありません。
医師たちが1日1食で24時間勤務を続ける中、飢えもまたもう一つの脅威となっています。やけどや骨折、重度の外傷を負った患者にも、栄養価の低い少量の食事しか提供されていません。タンパク質や十分なカロリーが不足すれば、骨折ややけどは治らず、感染症は広がります。
675回目の訴え──即時停戦を
人びとの予防可能な死や永続的な障害が、私たちの日常となっています。

2023年10月に今回の紛争が激化してから、私は毎日同じことを訴えてきました。675回目となった今日、もう一度繰り返します。
即時停戦がなされず、持続的な医療と人道援助へのアクセスが確保されない限り、もはや救えるものは何ひとつ残らないでしょう。病院も、患者も、そして未来さえも──。
2025年8月13日 ムハンマド・アブ・ムガイシーブ