食料を受け取ろうとして再びの悲劇──イスラエル軍の攻撃で国境なき医師団の元スタッフが死亡

2025年07月08日
イスラエル軍の攻撃で犠牲になった国境なき医師団の元スタッフ、アブドッラー・ハマド © MSF
イスラエル軍の攻撃で犠牲になった国境なき医師団の元スタッフ、アブドッラー・ハマド © MSF

国境なき医師団(MSF)の元スタッフであるアブドッラー・ハマドが7月3日、イスラエル軍によって殺害された。MSFは彼の死を悼み、強く非難する。
 
イスラエル軍はパレスチナ・ガザ地区で、アブドッラーを含む援助物資のトラックを待っていた人びとを、警告もなく意図的に攻撃した。

ナセル病院の医療チームによると、今回の攻撃で少なくとも16人が死亡した。ガザ南部ハンユニスにある海水淡水化施設の近くで、援助物資を積んだトラックから小麦粉を受け取ろうと待っているところだったという。この場所では、6月17日にも同様の攻撃が発生している。
 
アブドッラーは今年6月30日まで1年半にわたり、マワシ地区の診療所で衛生士として働いていた。MSFは、この残虐な事件に深い悲しみと強い憤りを表明するとともに、妹や同じくMSFで働く二人の兄を含むアブドッラーの家族に、深い追悼の意を表する。

そして、ガザで活動するすべてのMSFスタッフが一丸となり、この極めて困難な時期を乗り越えていく決意だ。
 
アブドッラーに加え、MSFは2023年10月以降、すでに11名のスタッフを失っている。私たちは、このような流血の即時終結を強く求める。

イスラエル軍の攻撃で傷つき、ナセル病院に運び込まれたアブドッラー。この写真は彼の家族の同意と、公表してほしいという明確な要請に基づいて掲載している=2025年7月3日 © Mohammad Salama
イスラエル軍の攻撃で傷つき、ナセル病院に運び込まれたアブドッラー。この写真は彼の家族の同意と、公表してほしいという明確な要請に基づいて掲載している=2025年7月3日 © Mohammad Salama

このイスラエル軍の攻撃に関し、ガザのMSF緊急対応コーディネーターであるアイトール・ザバルゴゲアスコアと、食料を受け取ろうとして攻撃に遭ったMSFスタッフ、アフマド(仮名)が報告する。

ガザのMSF緊急対応コーディネーター、アイトール・ザバルゴゲアスコアの報告

イスラエル軍は7月3日、またしても虐殺を行いました。ガザ南部で、援助物資を積んだトラックから小麦粉を必死に受け取ろうとしていた人びとを標的にしたのです。

この恐るべき悲劇により、MSFスタッフだったアブドッラーを含む、少なくとも16人が死亡しました。イスラエル軍が遺体の回収を許可しなかったため、実際の死者数はもっと多いと思われます。

この攻撃の後、イスラエル軍は小麦粉を受け取ろうとしていた人びとに、その場から直ちに立ち去るよう命じました。
 
ガザの食料不足の深刻さは、もはや想像を絶する状況です。膨大なニーズがあるにもかかわらず、人道援助団体の活動は最低限にまで抑え込まれています。

イスラエル当局は、人の移動や物資の供給を制限しているうえ、人びとの尊厳を傷つけ、かつ命の危険にさらす新たな軍事的手法で食料の配布を行っています。

100日以上にわたり、組織的かつ意図的に仕組まれてきた飢餓状態により、ガザの人びとは限界まで追い詰められているのです。この虐殺は、今すぐに止めなければなりません。

食料を受け取ろうとして攻撃に遭ったMSFスタッフ、アフマド(仮名)の報告

援助物資を載せたトラックが来ると聞いて、私たちはハンユニスに向かいました。すでに多くの人びとが集まっていて、停車している5台のトラックから、人びとは自由に物資を受け取れるようになっていました。 

突然、イスラエル軍の戦車が前進し始め、周囲に多くの狙撃兵がいるのが見えました。そして急に、四方八方から銃弾が飛び交い始めたのです。

小麦粉の袋を手にしていた人は、頭を撃たれていました。袋は辺り一面に散乱し、血で染まりました。そして、地面には無数の遺体が横たわっていました。
 
その後、家屋のがれきの下に隠れていた私たちのところに、小型無人機が飛んできました。無人機から、手を上げて出て来るよう指示が流れました。そして、小麦粉は持ち出さないこと、歩き続けること、さらに、遺体や負傷者を置いていくようにと命じられました。
 
一部の人びとはその場にとどまっていて、まだ戦車の砲撃音が聞こえていました。若者たちが小麦粉のために命を落としていたのです。

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