ガザ包囲は意図的な人道危機──国境なき医師団はイスラエルによる「援助の道具化」を非難
2025年05月16日
国境なき医師団(MSF)は、パレスチナ・ガザ地区において、「人道援助」の名目で物資の配布を管理しようとする米国とイスラエルの提案は、人道的、倫理的、安全保障上および法的に深刻な懸念を引き起こすと訴える。
援助を強制移住や人びとの身元審査に条件付けることは、今も続くパレスチナ人の民族浄化を進めるための一つの手段だ。MSFは、援助を減少させ、イスラエルの軍事占領の目的に従属させるいかなる計画も断固として拒否し、非難する。
人道援助の妨害は安保理決議に違反
MSFは、ガザでパレスチナ人の暮らしを根絶やしにするための条件が整いつつあるのを、現場で目の当たりにしている。
人道援助の妨害は、国連安全保障理事会決議第2720号に直接違反する行為だ。この決議2720号は、人道援助が民間人に対し妨げられることなく提供されることを求めている。援助がハマスによって転用されているという主張は依然として未検証であり、このような措置を正当化するものではない。占領者であるイスラエルは、公平な人道援助を必要とする人びとに提供する義務がある。
国連、欧州連合(EU)加盟国およびイスラエルに影響力を持つすべての人びとは、緊急に政治的・経済的影響力を行使し、「援助の道具化」を止めなければならない。援助物資、食料、燃料、医薬品は、今すぐガザの人びとに届けられるべきだ。
イスラエルが作り出した人道危機
イスラエルが攻撃を再開し、援助を完全に封鎖した3月2日以来、ガザはパレスチナ人にとって地獄のような場所と化している。パレスチナ人の生存は、イスラエル当局のなすがままであり、ガザの人びとの食料、水、医療、避難所の利用は拒否されている。またイスラエルは、生活に必要な環境を意図的に破壊することで、民族浄化に向けた組織的な行動を続けている。
ワールド・セントラル・キッチン(WCK)や世界食糧計画(WFP)などの組織は、ガザに食料の在庫はもう残されていないと発表した。炊き出しやパンの配給を行っていた場所はほぼ閉鎖している。またガザ市で活動するMSFの医療チームによると、過去2週間で栄養失調の患者数は32%増加したという。

ガザでは燃料の枯渇により、水の淡水化や給水活動も制限されている。まだ機能している医療施設は、すでに人口に対して数も受入能力も圧倒的に足りないが、依然として攻撃を受けており、医薬品やその他の必需品の在庫も急速に減っている。MSFのチームは11週間も物資の供給を受けておらず、滅菌湿布や滅菌手袋といった必須医療用品の不足も危機的だ。
イスラエルによる退避要求が出された区域および立ち入り禁止の軍事区域は、今やガザの70%に及ぶ。人びとは幾度も強制的な移動を強いられ、ガザで攻撃を免れた地域は一つもない。MSFのチームが患者を治療し退院させたとしても、人びとは再び負傷して戻って来るという絶望的な状況だ。
イスラエルが援助を道具化しようとする計画は、まさに自分たちが作り出した人道危機に対する皮肉な対応だ。もし彼らが望むなら、イスラエルとその同盟国は今日にでも封鎖を解除することができる。そうすれば、生存がかかっているガザのすべての人びとに、人道援助を届けることができるのだ。
