国境なき医師団、ガザで仮設病院を開設──続く病院への攻撃、今こそ医療の保護を
2024年09月03日国境なき医師団(MSF)は、パレスチナ・ガザ地区中部のデールバラハで仮設病院を開設し、患者の受け入れを始めた。
ガザ地区には膨大な医療ニーズがあるにも関わらず、医療への攻撃が続いてきた。デールバラハでMSFが支援するアル・アクサ病院では、周辺地域がイスラエル軍から退避要求を受けたうえ、病院から約250メートルの地点で爆発が起き、患者ら約650人が病院から避難する事態となった。
ガザ地区には膨大な医療ニーズがあるにも関わらず、医療への攻撃が続いてきた。デールバラハでMSFが支援するアル・アクサ病院では、周辺地域がイスラエル軍から退避要求を受けたうえ、病院から約250メートルの地点で爆発が起き、患者ら約650人が病院から避難する事態となった。
こうした状況で、物資や資源も著しく不足する中、MSFは保健省と協力して仮設病院を開いた。
仮設病院は、ガザで続く医療危機の解決策ではない。むしろ、イスラエルによる医療システムの解体に対する最後の手段だ。MSFはすべての紛争当事者に対し、ガザに残された数少ない病院の尊重と保護を求める。
仮設病院は、ガザで続く医療危機の解決策ではない。むしろ、イスラエルによる医療システムの解体に対する最後の手段だ。MSFはすべての紛争当事者に対し、ガザに残された数少ない病院の尊重と保護を求める。
「人道地域」にも空爆──どう生き延びればよいのか
仮設病院は開いたばかりだが、すでに大きなプレッシャーに直面している。他の病院も脅威にさらされ、物資の搬入もままならないからだ。
この仮設病院は、アル・アクサのような他の病院を補完し、支援するために設計された。しかし、8月25日に前線がアル・アクサ病院に急接近したため、多くの患者が命の危険を感じて病院から避難した。
アル・アクサ病院やハンユニスにあるナセル病院のような大規模病院がなければ、仮設病院は緊急かつ膨大な医療ニーズへの対応に苦慮することになる。
アル・アクサ病院やハンユニスにあるナセル病院のような大規模病院がなければ、仮設病院は緊急かつ膨大な医療ニーズへの対応に苦慮することになる。
「イスラエル軍はガザの医療体制を解体しています。医療施設が破壊されるたびに、残された施設の負担は増し、人びとは医療にアクセスしづらくなります」と、MSFの緊急対応コーディネーター、ジュリエット・セガンは説明する。
即時かつ持続的な停戦なくして、真の医療・人道対応などあり得ません。
MSFの緊急対応コーディネーター ジュリエット・セガン
8月24日にアル・アクサ病院の周辺で退避要求が出される前は、約650人の患者が同院で治療を受け、それとは別に数百人が病院の敷地内に避難していた。しかし今、アル・アクサ病院は、一目では同じ場所と分からないほど変わった。
「病院は本当に空っぽです。退避要求と爆発の前、病院は混雑を極め、床の上で患者を治療しなければならないこともあったというのに。いたるところに患者がいて、病院の前に順番待ちの列ができることも多く、必死に治療を求めていました」とガザのMSF副医療コーディネーター、ソハイブ・サフィ医師は話す。
「迫りくる脅威のため、今、辺りは不安に包まれています。やけどや複合的な傷を負った患者、切断が必要な患者など、現在病院で治療を受けている人たちに何人も会いました。このようなケースは氷山の一角でしょう」
救急治療が必要なのに、病院にたどり着けない人がもっと大勢いることは確かです。
MSF副医療コーディネーター ソハイブ・サフィ医師
病院周辺で避難中の人びとを見かけることは珍しくなくなった。ガザのパレスチナ人の大半は昨年10月以降、何度も避難を繰り返しており、イスラエルが特定したいわゆる「人道地域」は大幅に縮小されてきた。
公式には、「戦闘地域」に指定されていないのは、190万人の人口に対して41平方キロメートルのみだ。しかし、そのいわゆる「人道地域」も空爆を受けているため、人びとはガザでどう生き延びればよいのかという困難なジレンマに陥っている。
公式には、「戦闘地域」に指定されていないのは、190万人の人口に対して41平方キロメートルのみだ。しかし、そのいわゆる「人道地域」も空爆を受けているため、人びとはガザでどう生き延びればよいのかという困難なジレンマに陥っている。
即時かつ持続的な停戦なくして、医療・人道対応は不可能
MSFのサプライ・医療チームは数カ月前からこの仮設病院の設立に取り組んできたが、ガザへの必要物資の搬入は現在も困難であることから、開院は何度も延期されていた。
しかし、アル・アクサ病院への脅威が高まるにつれ、MSFチームは、数キロ西に位置する仮設病院を、未完の部分も残したままオープンするほかなくなった。
しかし、アル・アクサ病院への脅威が高まるにつれ、MSFチームは、数キロ西に位置する仮設病院を、未完の部分も残したままオープンするほかなくなった。
「仮設病院をいくら増やしても、ガザで機能していた医療体制の代わりにはなりません。これは、緊急で必要な医療を提供する最後の手段です。実際のところ大海の一滴にすぎません」とソハイブ医師は説明する。
停戦という建前が何度も提示されると同時に、ガザで人命を維持する力は削られているのが現状です。
MSF副医療コーディネーター ソハイブ・サフィ医師
供給とアクセスに多大な困難があるにもかかわらず、同じ場所に2番目の仮設病院が設立されつつある。
世界保健機関(WHO)によると、ガザにある36カ所の病院のうち20は稼働していない。また、仮設病院のような臨時施設には高度な外科治療を行う体制は整っておらず、重篤な患者、長期的な病状を抱える患者の治療に必要な救命必需品を備えていない施設も多い。
この11カ月の間に、MSFのチームは、ガザ地区にある14カ所の医療施設からの退避を余儀なくされた。これはつまり、即時かつ持続的な停戦なしには、医療・人道対応は事実上不可能であることが明確に示されたということだ。
MSFはすべての紛争当事者に対し、改めてガザに残された最後の病院への配慮と保護を求める。
世界保健機関(WHO)によると、ガザにある36カ所の病院のうち20は稼働していない。また、仮設病院のような臨時施設には高度な外科治療を行う体制は整っておらず、重篤な患者、長期的な病状を抱える患者の治療に必要な救命必需品を備えていない施設も多い。
この11カ月の間に、MSFのチームは、ガザ地区にある14カ所の医療施設からの退避を余儀なくされた。これはつまり、即時かつ持続的な停戦なしには、医療・人道対応は事実上不可能であることが明確に示されたということだ。
MSFはすべての紛争当事者に対し、改めてガザに残された最後の病院への配慮と保護を求める。