危険生物ずかん:身近にもいる!命をおびやかす生き物たち【MSF Club:世界の課題や現状を知ろう!「危険生物」編】
2026年06月26日
File1:蚊 ~小さな殺人鬼~
日本では蚊にさされても「かゆい~!」で終わることがほとんど。でも世界には、命に関わる病気をうつす蚊がいます。
どんな病気があるのか、見てみましょう。
マラリア
マラリアは、「マラリア原虫」をもつハマダラカという蚊にさされることでうつる病気です。アフリカやアジアなど、暑い地域で多く見られます。発熱や頭痛、関節の痛み、はきけなどが起こり、重くなると命に関わることもあります。特に小さな子どもは注意が必要です。
マラリアは毎年約2億8000万人がかかり、60万人以上が亡くなっているよ(※2)。
命を落としている人の約80%は、5歳未満の子どもたちなんだ。
命を守る!国境なき医師団の取り組み
蚊にさされるのを防ぐため、目の細かい網(あみ)に殺虫剤(さっちゅうざい)をしみこませてベッドの周りにつり下げる蚊帳を、各家庭に配布しています。
症状(しょうじょう)が重くなりやすい子どもを中心に、予防接種や予防の薬を提供しています。
蚊は水のある場所で増えるため、水たまりをなくしたり、殺虫剤をまいたりして、発生そのものを減らす対策をしています。
動画でもっと詳しく!「殺人生物ランキング第1位のあの生物が原因?!マラリアってどんな病気?」
デング熱
デング熱は「デングウイルス」を持つネッタイシマカまたはヒトスジシマカという蚊にさされることでうつる病気です。高熱や頭痛に加え、まるで骨が折れたように体がはげしく痛むことから「骨折熱」と呼ばれることも。特効薬はなく、ワクチンも限られています。
2014年に日本でも感染が確認されたデング熱。主に中南米などの熱帯地域で発生していて、2024年にはホンジュラスで16万件以上が報告され、国が非常事態を宣言したんだ。
命を守る!国境なき医師団の取り組み
実際に、この方法を続けた地域では、デング熱の患者が減ったことが報告されています。くわしくは下の動画をチェック!
【動画】ブンブン飛び交うイノベーション?蚊で広まる病気を、蚊で制する──ホンジュラス、命を落とす病気から住民を守れ
蚊にさされると、時に大きな病気につながることが分かったね。
では、マラリアやデング熱を防ぐにはどうすればいいのかな? MSFで活動する高橋先生に聞いてみたよ!
病気を防ぐには──いちばん大事なのは、さされないこと!
・長そで・長ズボンを着て、肌(はだ)を守る
・虫よけスプレーを使う
(「DEET(ディート)」という成分が入っているものが効果的)
・蚊帳を使う
(穴がないか確認し、すき間ができないように使う)
また、マラリアやデング熱の危険のある地域へ行くときは、事前の準備も大切です。厚生労働省の検疫所(けんえきじょ)「FORTH」や外務省のサイトで、現地で流行している病気や医療(いりょう)の情報を調べましょう。
帰国後に熱などの症状が出た場合は、海外に行ったことや蚊にさされたことを必ず医師に伝えてください。特に年配の方や妊婦(にんぷ)さんは症状が重くなりやすいため、注意が必要です。
File2:毒ヘビ ~しのびよる毒牙~
ヘビ咬傷(こうしょう)
命を守るためには、できるだけ早く「抗毒素(こうどくそ)」という薬で治療をすることが重要です。
毒ヘビによる被害が多い地域では、すぐに病院へ行けないことも少なくないんだ。
特にアフリカやアジアの農村や山間部では、病院が遠い、抗毒素が高くて手に入らないといった理由で、治療を受けられない人が多いんだよ。
また、効果がはっきりしない昔ながらの治療にたよってしまい、手おくれになってしまうケースもあるんだ。
命を守る!国境なき医師団の取り組み
毒ヘビが多い地域で、MSFは抗毒素による治療、点滴(てんてき)や手術などの医療を提供しています。
毒ヘビにかまれたとき、どのヘビかを早く見分けることがとても重要です。そこでMSFはジュネーブ大学と協力し、AI(人工知能)を使ったプロジェクトを進めています。この技術により、専門家でなくても毒ヘビを見分けられ、より適切な抗毒素を使えるようになり、治療の質の向上につながっています。
くわしくは下の動画をチェック!
File3:犬 ~身近な暴れんぼう~
でも世界では、犬にかまれることでうつる「狂犬病(きょうけんびょう)」によって、年間およそ6万人が命を落としています(※1)。
日本では、ワクチンの体制や犬の登録制度が整っているため、1957年以降、狂犬病の発生は確認されていません。一方で、世界では野犬の多い地域を中心に、今も深刻な問題となっています。
狂犬病(きょうけんびょう)
命を守る!国境なき医師団の取り組み
狂犬病は、かまれた後でもすぐにワクチンを打てば防げる病気です。MSFは、医療が届きにくい地域でも速やかに治療を受けられるよう、体制づくりを進めています。
MSFはこれまで、狂犬病の予防と治療の重要性を世界に訴(うった)えてきました。
その結果、国際的なワクチンの取り組み(GAVIワクチンアライアンス)を通じて、各国がワクチンを確保しやすくなり、医療機関に備えられるようになってきています。こうした動きにより、無料ですぐにワクチンを受けられる場所が世界各地で増えつつあります。
File4:人間 ~高い知能が武器~
例えば、パレスチナのガザ地区では、イスラエルとガザを支配するハマスの間で紛争(ふんそう)がはげしくなった2023年10月以降、7万人以上が亡くなっています。
また、スーダンや南スーダンなどアフリカの多くの地域でも、暴力に巻きこまれて多くの人びとが命を落としています。
命を守る!国境なき医師団の取り組み
紛争地域でのけがや病気の治療はもちろん、理学療法(りがくりょうほう:※)や出産のケア、心のケアなどを行っています。
【物資を届ける】
紛争によって生活が苦しくなった人びとへ、食料や医薬品など生きるために必要なものを届けています。
【インフラを整える】
争いでこわされた病院を直したり、水をきれいにする設備を設置したり、安全に暮らすためのインフラを整備しています。
【証言活動】
MSFは医療だけでなく、現地で見た現実を社会に伝える「証言活動」も行っています。暴力や差別の実態を世界に知らせることで、医療だけでは変えられない問題の解決を目指しています。
小さな吸血鬼たち ツェツェバエ/サシチョウバエ/サシガメ
File5:ツェツェバエ
【アフリカ睡眠病】
主にサハラ以南のアフリカのツェツェバエが生息する地域で発生する病気。感染すると、まず発熱やだるさなどが現れ、さらに進むと寄生虫が脳や神経に入り、体が動かせなくなったり、意識の混乱や強い眠気(ねむけ)が起こったりします。
治療しないと命を落とす危険もありますが、現在は点滴や飲み薬があり、早く治療すれば回復することも可能です。
命を守る!国境なき医師団の取り組み
MSFは、専門機関と協力して作られた薬を使い、流行地域で治療にあたっています。また、現地の人びとの血液などを検査し、感染の流行の調査も行っています。
File6:サシチョウバエ
命を守る!国境なき医師団の取り組み
MSFは1989年から2020年までに約15万人を治療するなど、世界各地の流行地域で治療を続けてきたとともに、病気を根絶させるための研究も進めてきました。また、感染を防ぐために病気に関する正しい知識を広く伝える活動にも取り組んでいます。
File7:サシガメ
【シャーガス病】
中南米の農村地域に多い病気でしたが、いまではアメリカやヨーロッパをふくむ世界44カ国で確認されています。感染はサシガメのほか、輸血や母子感染(ぼしかんせん:※)などでも起こります。
感染してもすぐに症状が出ないことが多く、「気づきにくい病気」と言われますが、治療しないまま放置すると、心臓や消化器が深刻なダメージを受け、命にかかわることがあります。
命を守る!国境なき医師団の取り組み
生き物が引き起こす「顧みられない熱帯病」
これらの病気は主に貧しい地域や、衛生環境(えいせいかんきょう)が悪い場所で暮らす人びとに多く見られます。そのため、予防や診断(しんだん)、治療の研究が進みにくく、必要な医療が行き届かないことが課題です。
「顧みられない」という名前には、こうした現状が現れています。
顧みられない熱帯病にかかると、失明や歩けなくなるなど、重い障害が残ることもあるんだ。その結果、学校や仕事に行けなくなったり、差別を受けたりして、貧困からぬけ出せなくなることも大きな問題になっているよ。
出典 :※1:BBC Science Focus(2026) ※2:世界保健機関(WHO)『World malaria report 2025』(2024年) ※3:パレスチナ・ガザ地区保健省
イラスト(しんぞー先生:):Ayano Kinoshita





「蚊(か)にさされる」「犬にかまれる」──日本ではあまり心配しないことかもしれないね。けれど世界では、それが命に関わることもあります。
「危険生物ずかん」では、生き物が広げる病気と、それによって命や暮らしが危険にさらされている人びとの現実を紹介するよ。