モザンビーク:暴力激化、1カ月で10万人超が避難──北部ナンプラ州で混乱拡大

2026年01月05日
モザンビーク北部ナンプラ州エラティ郡アルア・ベリャに逃れた避難民。国境なき医師団(MSF)の移動診療の順番を待っている=2025年12月12日 © Sofia Minetto/MSF
モザンビーク北部ナンプラ州エラティ郡アルア・ベリャに逃れた避難民。国境なき医師団(MSF)の移動診療の順番を待っている=2025年12月12日 © Sofia Minetto/MSF

暴力から逃れ、再び戻ることもできない──。

アフリカ南東部のモザンビーク北部で2025年暮れ、武装勢力による暴力が激しくなり、10万人超が家を追われた。

半年近くで計30万人以上が避難しており、医療体制が崩壊状態にある地域でマラリアコレラ流行、深刻な食料不足が人びとの命を脅かしている。

国境なき医師団(MSF)は、北部ナンプラ州で緊急対応を始めた。12月4日以降、避難世帯が最も集中している同州エラティ郡の各地域で、医療ケアと必要不可欠なサービスを提供している。

最大の避難の波

11月、非国家武装勢力がナンプラ州で相次いで攻撃を実施。7月以降で3度目、かつこれまでで最大規模となる人びとがモザンビーク北部で避難を強いられた。

この避難は、カーボ・デルガード州で8年にわたって続く紛争がもたらした人道危機の一部に過ぎない。この紛争はこれまでも、ナンプラ州を含む周辺地域へと波及してきた。

国際移住機関(IOM)の最新データによると、今回は10万人以上が家を追われた。7月下旬以降、北部モザンビークで強制的に避難させられた人びとは計30万人を超えた。

アルア・ベリャで避難民と話すMSFスタッフ(中央2人)=2025年12月12日 © Sofia Minetto/MSF
アルア・ベリャで避難民と話すMSFスタッフ(中央2人)=2025年12月12日 © Sofia Minetto/MSF


避難した家族の一部は自宅へと戻り始めている。しかし、これは必ずしも、安全が回復したり、帰還の準備が整ったりしたことを意味していない。

なかには、支援を受けられる見込みがあることに望みをかけているだけで、苦渋の決断として帰還を選ばざるを得ない人びともいる。

メンバ郡のマズアから避難してきたジョゼ・マウリシオ・アリジェさん(39)はこう話す。

メンバ郡のマズアから避難してきたジョゼ・マウリシオ・アリジェさん=2025年12月13日 © Sofia Minetto/MSF
メンバ郡のマズアから避難してきたジョゼ・マウリシオ・アリジェさん=2025年12月13日 © Sofia Minetto/MSF

「支援は元の居住地でしか提供されない」と説明されました。でも、人びとは戻ることを恐れています。心の中にはいまも悪夢が残っているのです。

マズアからの避難民 ジョゼ・マウリシオ・アリジェさん

一部の人びとは、支援を受けるために村へ戻る車両に乗り、支援を受けた後にアルア・セデやアルア・ベリャへ再び戻ってくるという移動を繰り返している。

一方で、治安の不安定さ、破壊された住居、失われた生計手段を理由に、劣悪な生活環境であっても避難先にとどまることを選ぶ人びともいる。

度重なる攻撃から逃れてきた、メンバ郡出身のカリタ・バリネさん(48)はうなだれた。

メンバ郡チペネから逃れてきたカリタ・バリネさん=2025年12月13日 © Sofia Minetto/MSF
メンバ郡チペネから逃れてきたカリタ・バリネさん=2025年12月13日 © Sofia Minetto/MSF

戻るくらいなら、ここに残って空腹に耐えた方がましです。

メンバ郡出身の避難民 カリタ・バリネさん

医療アクセスの欠如

このような支援配分のあり方は、人びとが最もぜい弱な状況に置かれている場所で援助を受けられない状況を生み出している。その結果、人びとをさらなる危険にさらすだけでなく、中立性とニーズに基づく人道援助という原則を損なうことにもつながっている。

MSFは、アルア・ベリャ、アルア・セデ、ミリバの各地域で、外来診療、母子保健サービス、栄養支援、心理社会的支援を提供している。

アルア・ベリャで展開するMSFの移動診療。ここでは受診理由のうちマラリアが多数を占めている=2025年12月13日 © Sofia Minetto/MSF
アルア・ベリャで展開するMSFの移動診療。ここでは受診理由のうちマラリアが多数を占めている=2025年12月13日 © Sofia Minetto/MSF

健康上の課題としては、マラリアの症例が最も多く、次いで急性下痢症、呼吸器感染症、皮膚疾患が続いている。

また、予防可能な感染症から避難家族を守るため、保健省と連携して集団予防接種の支援もしている。

MSFの医師、エマーソン・フィニオッセはこう説明する。

12月4~15日に860件以上の診療をしました。マラリアの罹患(りかん)率が非常に高く、私たちのところに来る人びとの30%超が陽性でした。

MSFの医師 エマーソン・フィニオッセ

アルア・ベーリャに来たMSFの移動診療で診察を受ける避難民の女性(中央)=2025年12月12日 ©Sofia Minetto/MSF
アルア・ベーリャに来たMSFの移動診療で診察を受ける避難民の女性(中央)=2025年12月12日 ©Sofia Minetto/MSF

さらにフィニオッセは、母子保健の状況について次のように指摘する。

移動診療で妊婦健診を受ける女性の多くが、今回が人生で初めての妊婦健診でした。これは、今回の事態が起きる前から現地の保健医療体制が機能不全に陥っていたことを示す、極めて懸念すベき兆候です。

MSFの医師 エマーソン・フィニオッセ

雨季に広がる感染リスク

現在は雨季にあたり、公衆衛生上のリスクが一段と高まっている。

エラティ郡とメンバ郡では、コレラの流行が確認された。MSFは水と衛生のニーズに対応するため、緊急トイレや給水ポイントの設置を進めている。

加えて、ミリバでは使われていなかった井戸を修復し、地域に安全な飲料水を確保した。アルア・セデでは新たに12基の給水栓を設け、1日あたり1800人に対応できるよう備えている。

モザンビーク北部のカーボ・デルガード州ムエダの避難民キャンプで、給水地点から水をくむ人びと=2025年11月12日 © Igor Barbero/MSF
モザンビーク北部のカーボ・デルガード州ムエダの避難民キャンプで、給水地点から水をくむ人びと=2025年11月12日 © Igor Barbero/MSF


仮設シェルターや受け入れ家庭での生活は、居住・衛生の両面で不安定となっており、健康と保護の観点から深刻な懸念がある。

十分な住居が確保されていないため、避難した人びとの多くが屋外や、非公式の簡易な環境で眠らざるを得えない。厳しい気象条件や感染症にさらされるリスクが高まっている。しかも、人びとの大半は子どもだ。

食料へのアクセスも、依然として最大の課題の一つとなっている。

ムエダの避難民キャンプで、子どもたちを対象とした心理教育をするMSFスタッフ(中央手前)=2025年11月12日 © Igor Barbero/MSF
ムエダの避難民キャンプで、子どもたちを対象とした心理教育をするMSFスタッフ(中央手前)=2025年11月12日 © Igor Barbero/MSF

拡大する危機への緊急対応

MSFはこの危機に対応するため、ナンプラ州エラティ郡で3カ月の緊急対応を始めた。

モザンビーク北部全域で、暴力と避難を強いられる人びと、そして受け入れ地域の住民に対し、命を守る医療援助を提供し続けている。

ムエダ近郊の避難民キャンプで、7人の子と共に故郷から逃れた母親(右)と話をするMSFスタッフ=2025年11月11日 © Igor Barbero/MSF
ムエダ近郊の避難民キャンプで、7人の子と共に故郷から逃れた母親(右)と話をするMSFスタッフ=2025年11月11日 © Igor Barbero/MSF


MSFはカーボ・デルガード州にあるモシンボア・ダ・プライア、マコミア、パルマの各地域で医療活動をしているほか、ナンリアで発生しているコレラにも対応している。

活動内容は、一般外来診療、救急医療、母子医療、小児医療、HIV結核の治療、心のケア、心理社会的支援など多岐にわたる。

カーボ・デルガード州メトゥゲ郡ナンリア村で、患者に対してコレラ感染予防の啓発をするMSFスタッフ(右)=2025年12月10日 © MSF
カーボ・デルガード州メトゥゲ郡ナンリア村で、患者に対してコレラ感染予防の啓発をするMSFスタッフ(右)=2025年12月10日 © MSF


2025年上半期だけでも、MSFは約10万件の外来診療を実施した。3万5000人以上を対象に、グループ形式の心のケアをした。

各地で移動診療や医療機関への支援を通じ、医療から取り残されやすい人びとへの対応を強化している。

ムエダの避難民キャンプで、心のケアをするためのテントを設営するMSFスタッフ=2025年11月12日 © Igor Barbero/MSF
ムエダの避難民キャンプで、心のケアをするためのテントを設営するMSFスタッフ=2025年11月12日 © Igor Barbero/MSF


MSFは、避難した人びとが直面する厳しい現実と、受け入れ地域にかかる負担が日ごとに重くなっている状況を目の当たりにしている。

だからこそ、人びとが実際にいる場所で、中立性と透明性を保ち、真に必要とされる支援を届ける人道対応が強く求められている。

ムエダ近郊の避難民キャンプで、家庭菜園から野菜を収穫する女性。避難民たちは作物を育てて日々の食料を何とかまかなっている=2025年11月12日 © MSF
ムエダ近郊の避難民キャンプで、家庭菜園から野菜を収穫する女性。避難民たちは作物を育てて日々の食料を何とかまかなっている=2025年11月12日 © MSF

この記事のタグ

関連記事

活動ニュースを選ぶ