プレスリリース
モザンビーク:暴力激化で医療への影響が深刻に──カーボ・デルガード州では半数の医療施設が破壊
2025年07月18日
州の半数の医療施設が破壊
州中部の主要な町であるマコミアは、2024年5月に武装集団に襲撃され、MSFなどの人道援助団体は活動の停止や中断を余儀なくされた。MSFは今年4月から部分的に活動を再開しているが、地区内に以前7カ所あった医療施設のうち、今も稼働しているのは診療所1つのみだ。
医療体制の弱さはマコミアに限らず、カーボ・デルガード州の他の地域も同様だ。公式発表によると、紛争が始まって以来、州の医療施設の50%以上は完全に、あるいは部分的に破壊された。2024年末にはサイクロン「チド」が州南部を襲い、医療を取り巻く状況はさらに悪化した。
加えて、多くの医療施設では医療従事者が不在で機能しておらず、特にアクセスが困難な地域では診療の中断や縮小が頻繁に起こっている。稼働している施設も人手や資源の不足や、安全にたどり着くには遠すぎるなどの問題がある。

中断を余儀なくされた医療活動
MSFは、基礎医療、HIVおよび結核の治療、性と生殖に関する医療、心のケア、産科・小児医療を提供している。さらに、医薬品や医療物資の寄贈、水と衛生サービスの支援も行っている。2025年1月から5月の間に、MSFは4地区で月平均1万8000件の診療を実施し、専門治療が必要な患者30人を搬送、740件の出産を介助した。
モシンボア・ダ・プライアでは4月には1万2236件の外来診療が行われたが、5月には暴力の激化により1951件にまで激減した。
心理面の健康悪化も
MSFの活動では、地域で情報を提供するチームや地域保健担当者が重要な役割を果たしている。彼らは地域住民と協力し、手洗いや水の処理など、水系感染症を防ぐための習慣を広めている。また、この地域の主要な死因であるマラリアなどの一般的な病気を特定・治療し、専門治療が必要な患者を搬送できるよう、人材の育成を行っている。
MSFのヘルスプロモーターであるファティマ・アブド・ライデは、「紛争時には多くの人が心理的な影響を受けるので、健康に関する情報を伝えることはとても大切です」と話す。
心が健康でないために、病気になってもその状態を話せないこともあるのです。彼らが恐怖を乗り越え、孤立せずに治療を受けられるよう手助けしています。
MSFヘルスプロモーター ファティマ・アブド・ライデ
精神的な苦痛やトラウマに加え、治療の中断を余儀なくされる患者も少なくない。特に妊婦や高齢者、障害者、慢性疾患を持つ人やHIV感染者にとっては深刻な問題だ。

援助の拡大が急務
モシンボア・ダ・プライアの地域病院でMSFの助産師を務めるスンガ・アントニオはこう話す。
「ある村で、深夜に陣痛が始まった女性がいました。ヘルスプロモーターが電話で助けを求めてきましたが、女性を移動させるには遅すぎましたし、危険でした。女性は村で出産し、朝になってやっと病院に搬送されましたが、双子を身ごもっていたせいか、合併症のせいなのか、昏睡状態に陥りました」
地元の診療所が機能していれば、すぐに必要なケアを受けて安全に出産できていたはずです。
MSF助産師 スンガ・アントニオ
マコミアで活動するMSFのエメルソン・フィニオセ医師はこう訴える。
「カーボ・デルガードの紛争は深刻な人道危機です。医療や教育など暮らしのあらゆる面に影響を及ぼし、人びとの尊厳を奪っています」
この危機で苦しむ人たちの命を守るために、活動が必要な地域に安全に入れるようにすることと、他の援助機関による支援の拡大が求められます。
MSF医師 エメルソン・フィニオセ