【動画】フェンスの中のロヒンギャ──ミャンマーの現場を訪れた日本人スタッフの思いは

2024年08月25日
(動画:3分)

2017年8月25日、ミャンマーでイスラム系少数民族ロヒンギャの人びとに国軍が武力弾圧を加え、70万人もの人びとが隣国バングラデシュに逃れることを余儀なくされた。それから約7年──。今年6月から7月にかけて、国境なき医師団(MSF)日本の村田慎二郎事務局長を含む4人のスタッフが、MSF活動地のマレーシア、バングラデシュ、ミャンマーを訪問し、ロヒンギャの人びとが置かれた状況を視察、各地で人びとの声を聞いた。
 
3カ国で撮影した内容をもとに最新の状況を伝える動画「フェンスの中のロヒンギャ──Behind the Wire」を公開する。

現場を訪れた日本人スタッフの思いは

国境なき医師団日本事務局長・村田慎二郎

ミャンマー・ラカイン州の現場に立つ村田慎二郎
ミャンマー・ラカイン州の現場に立つ村田慎二郎

 私は7月上旬にミャンマーを訪れました。

MSFはミャンマーで30年以上にわたり医療・人道援助活動を行ってきました。これまで基本的な医療からHIV治療、メンタルケアまで、幅広い支援を提供してきました。

2021年の軍事クーデター後、数千人の医療従事者が職を辞したうえ、紛争の激化が公衆衛生に深刻な影響を及ぼしていることを、現地のMSFチームは目の当たりにしてきました。

広範囲にわたる治安の悪化と暴力、そして行政上の障壁が物資の供給と人道支援のアクセスを妨げ、医療の提供に制約がかかっています。

診療を待つ多くの人びと

内戦の激化により、現在、国内の広範囲にわたって混乱が続いており、人口の3分の1が緊急の人道的援助を必要としています。300万人が暴力から逃れて安全を求めて強制的に移住させられています。

ロヒンギャの人びとが多く暮らす西部ラカイン州では2023年後半以降、暴力の激化でMSFの医療活動に深刻な影響が出ています。同州北部では、ロヒンギャ族を含む他の少数民族が、再び極度の暴力にさらされ、紛争の渦中に置かれています。

同州ブディドンのMSF事務所と薬局は4月に焼失し、中の医薬品も焼失しました。MSFは、この州で医療のない地域を中心に25の移動診療を運営していました。しかし、紛争の激化と現地当局の制限で、活動を中断せざるを得なくなりました。

私がラカインを訪問した時、8カ月ぶりに1カ所だけ、移動診療の再開に必要な移動が当局に認められました。

現場に行くと、数百人が診察を待っていました。 その多くは女性でした。私は集まった患者さんの数に圧倒されました。その様子は、今回の動画に収められています。

ほかの診療先で、どれだけ多くの人びとが私たちの活動再開を待っているのか想像にかたくありません。

今こそ沈黙を破って

ある市民は私たちに「何千人もの人が避難しようとしたが、多くの人が亡くなったり傷ついたりしました。暴力は今も続いています」と語りました。

動画中盤でイラストで描かれている回想シーンは、そんな会話を元に彼らの体験を描写したものです。

ロヒンギャの人びとが置かれた苦境に、今こそ沈黙を破り、国際社会が行動する時だと思います。 

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