紛争下のイランで「医療施設と従事者の保護を」──相次ぐ“医療への攻撃“、2カ月で24件確認
2026年05月01日
イランへの攻撃が2月に始まってから、2カ月以上が経過した。
現在は停戦となり一時的に緊張が和らいだ面はある。しかし、医療施設や救急車などへの攻撃が相次いだため、イランの医療体制は厳しい状態となっている。医療が必要な人びとにとって状況は不安定なままだ。
国境なき医師団(MSF)は首都テヘランでの支援を拡大するとともに、ほかの活動地でも増大する医療ニーズへの対応を続けている。
紛争中も続く医療援助
MSFは紛争が始まる前から、イランのテヘラン南部、北東部のマシャド、南東部のケルマンで活動してきた。医療を受けづらい人びと、とりわけアフガニスタン難民に対して基礎医療を中心に提供した。
空爆が相次ぎ、攻撃が最も激化した時期には、MSFはテヘラン南部の診療所での活動を一時的に止めざるを得なかった。
空爆が相次ぎ、攻撃が最も激化した時期には、MSFはテヘラン南部の診療所での活動を一時的に止めざるを得なかった。
その後、この診療所は再開。必要に応じて負傷者を受け入れたり、重症患者を治療したりする前線の医療拠点として運用する認可も得られた。
さらに、診療対象をすべてのイラン国民にも拡大した。停戦以降、診察件数は2倍に増加している。現在、このクリニックでは1日あたり約250人の患者を診ている。
MSFイラン活動責任者のグリゴール・シモニャンはこう語る。
MSFイラン活動責任者のグリゴール・シモニャンはこう語る。
緊急事態が起きると、まず基礎医療が機能しなくなりがちです。しかし同時に、それは人びとの命と生活を支える、最も欠かせない医療でもあります。風邪や感染症など日常的な病気の治療はもちろん、糖尿病や高血圧といった慢性疾患のケアも止めることはできません。さらに、紛争という深い傷を経験した後には、多くの人が心のケアを必要とするのです。
MSFイラン活動責任者 グリゴール・シモニャン
各地で応える医療ニーズ
MSFは基礎医療をさらに多くの人びとに届けるため、テヘラン南部に2カ所目の診療所を開く予定だ。
また、ケルマン市では、MSFの診療所が1日あたり約150人の患者を診ている。同市郊外には推定20万人のアフガニスタン難民が暮らしているが、医療を提供できる機関は限られる。MSFはその数少ない医療団体の一つだ。
アフガニスタン国境に近いマシャドでも、MSFは活動を続けている。
アフガニスタン難民の多くが暮らすゴルシャフル地区の診療所で、心のケアを含む医療を1日あたり160人以上の患者に提供している。
すべての活動地で、MSFは人びとの多様な医療ニーズに応えている。
例えば、リプロダクティブ・ヘルスケア(性と生殖に関する医療)、C型肝炎をはじめとする感染症の検査と治療、心のケア、慢性疾患の管理、専門医療機関への紹介など、幅広い医療活動をしている。
限界に追い込まれる医療
イランの医療体制の一部は何とか機能しているものの、紛争の影響で限界まで追い込まれている。病院や診療所、救急車が攻撃されて被害を受けている。
世界保健機関(WHO)によると、4月15日時点で、イラン国内で医療への攻撃が24件確認されている。
さらに、こうした攻撃は医療体制だけでなく、人道援助に当たる人びとにも大きな負担をかけている。
シモニャンはこう説明する。
イランでは元々、国内で製造された医薬品への依存度が高いのですが、今回の紛争によってその生産が滞っています。必要不可欠な医薬品を手に入れられない人が目に見えて増えているのです。
MSFイラン活動責任者 グリゴール・シモニャン
MSFはこうした事態を受けて、小児医療用キットや外傷治療キットを含む医薬品と医療物資を寄贈した。イラン赤新月社を通じ、現地で配布されている。
そのうえ、毛布、枕、衛生キットといった生活に欠かせない物資もイラン赤新月社を通じて届けられ、人びとの支えになっている。
「最大の代償を払うのは市民」
人道危機が3カ月目に近づくなか、MSFは変化する医療ニーズに引き続き対応していく。当局と連携しながら活動を調整し、さらなる支援拡大にも備えている。
シモニャンはこう強調した。
シモニャンはこう強調した。
この紛争で最も大きな代償を払い続けているのは市民です。人びとが必要なとき、必要な場所で医療を受けられるようにするために、医療施設と医療従事者が完全に尊重され、守られることが不可欠となっています。
MSFイラン活動責任者 グリゴール・シモニャン




