【イベント報告】オンライン講演会「イラク・モスル 新型コロナウイルス感染症と人びとの暮らし~看護師による帰国レポート~」

2021年02月09日掲載

国境なき医師団(MSF)は、1月28日にオンライン講演会 「イラク・モスル 新型コロナウイルス感染症と人びとの暮らし~看護師による帰国レポート~」を開催しました。2020年12月にイラク・モスルより帰国した看護師の大竹優子が、紛争の影響が色濃く残るモスルでの新型コロナウイルス感染症の脅威や人びとの暮らしについて、自身の体験を語りました。

当日は750人を超える方々にご参加いただき、質疑応答の時間(0:42頃~)では、現地での安全管理や、医療資源が限られる中での活動、患者さんや大竹看護師のメンタルケア、1日の活動時間や食事、大竹看護師が人道援助の道に進んだきっかけといった幅広い質問に、大竹看護師が答えました。

ぜひ以下より講演の映像をご視聴ください。(再生時間:約60分)
 


講演中は視聴者の方々よりたくさんの質問が寄せられましたが、講演時間内でお答えすることができなかった質問も多数ありました。大竹看護師からの回答を掲載いたしますので、ぜひご覧ください。

現地の言語は?大竹さんはどのように言語を習得したのですか?

MSFでは、英語が共通語のプロジェクトとフランス語が共通語のプロジェクトがあります。今回のモスルは英語のプロジェクトでした。私は、MSFを目指し始めた30歳の時から英語を勉強し直したので、とても苦労しました。日本でオンライン英会話を受けたり、できるだけ外国人と触れ合う機会を探したりして、英語を使うようにしました。また、熱帯医学を学んだタイの大学では、世界中の生徒が勉強していたので、プライベートの時間は常に一緒に過ごし、英語でコミュニケーションを取るようにして英語を習得しました。

モスルでは、現地スタッフは英語を話せるスタッフと話せないスタッフがいました。患者・家族はもちろん英語は話せません。現地語はアラビア語です。信頼関係構築のためにも、簡単な挨拶、自己紹介レベルのアラビア語は現地スタッフから教えてもらい、話すことができるようになりました。また現地通訳のスタッフが、英語が話せない現地スタッフ、患者・家族とのコミュニケーションを助けてくれました。

現地で活動するスタッフには、現地採用の方もいるのですか?

今回のプロジェクトでは、海外派遣スタッフが12人、現地採用スタッフが約150人で、ほとんどのスタッフが現地スタッフでした。MSFは、海外派遣スタッフが任期を終了して帰国しても、プロジェクトが問題なく遂行し医療を提供できることを目標に活動しています。そのため、私たちは現地スタッフをトレーニングし、一緒に活動しています。また、現地スタッフはその国に生まれ育った人びとなので、患者や家族との距離も近く、私たち外国人スタッフと患者・家族がコミュニケーションをとって円滑に医療を提供するための助けになります。そのほか、現地の安全に関する情報を提供してくれるなど、現地スタッフの存在はMSFの活動では欠かせません。 

現地で医療活動を行っていて、宗教の点から活動をしづらいと感じた状況はありましたか?

私がモスルで活動した場所はイスラム教の人びとが多く暮らす地域でした。イスラム教の文化では、女性だけで来院することができなかったり、治療を決定する時には必ず夫や父親など、男性の親族の許可、同意が必要です。また、女性の身体に男性は触れることが難しい場面もあります。これらは日本にはない文化ですが、私たちスタッフは現地で活動する時は現地の宗教や文化を尊重して活動します。日本のようにスムーズにいかない場面も多少ありましたが、宗教的に活動をしづらいと感じたことはありません。 

現地で使用する医療機器はどこで調達するのでしょうか?日本から持っていく機器もありますか?

現地で使用する医療機器、医療物資は全てMSFによる認可、検証が必要です。認可、検証された医療機器、医療物資はフランスのボルドーにある大きな物流センターに保管されていて、そこから現場へ運ばれます。これらはロジスティシャンの物流担当が管理し、現場へ供給しています。緊急時には48時間以内に現場へ供給することもできることが、MSFの強みの一つとも言えます。  

過酷な環境での活動が多いと思いますが、これからのキャリアプランは?

MSFに参加して3年になりました。この団体で活動することにやりがいを持っているので、現在のところはこのまま活動を続けたいと思っています。また、いままでは手術室看護師、感染管理専門看護師として紛争地での活動を行ってきましたが、MSFでは他にも、栄養プログラムや難民キャンプでの活動も行っているので、いままでとは違った活動地で看護師として活動したいという思いもあります。また、看護マネジャーとして経験を積み、MSFの中でもキャリアアップできたらいいなと考えています。  

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