「国際社会の対応に感謝」エボラとの闘いに終止符
2018年07月03日2018年5月8日にエボラ出血熱の流行宣言が出されたコンゴ民主共和国(以下、コンゴ)。国境なき医師団(MSF)は、集団感染の発生源となった赤道州に経験豊富なスタッフを多数派遣し、緊急援助を進めてきた。
緊急対応コーディネーターを務めるヘンリー・グレイは現在の状況をこう話す。「正式な終息宣言はまだ出ていないものの、新たな患者数は減少しています。現地スタッフが専門知識を身につけてきていることもあり、コンゴ保健省に活動を引き継ぐべきと判断しました」。
国内4ヵ所の活動を地元へ移譲
保健省はMSFの支援を受けながら同州内4拠点でエボラ確定患者38人を治療。うち24人が命をとりとめ、退院して帰宅できた。残念ながら14人は亡くなった。そのほか、エボラに似た症状の患者120人を隔離し、ウイルス検査を行った。
MSFは6月20日、イティポ総合病院内のエボラ一時滞在センターでの活動を終了。近隣の治療センターで活動する他団体が新たな患者の治療やアウトリーチ(※)活動、疫学的調査やエボラ回復者用サポート・クリニックへの支援を引き継ぐ。
- 医療援助を必要としている人びとを見つけ出し、診察や治療を行う活動
6月25日には、ビコロに設けたエボラ治療センターを移譲。今後エボラウイルス感染が疑われる人は、保健省の職員が隔離、検査する。アウトリーチ活動、疫学的調査、健康教育、除染・殺菌なども保健省と他団体に引き継いだ。
ムバンダカ市近郊にMSFが設置した40床のエボラ治療センターは7月初旬に除染後、撤去される予定だ。現在、ムバンダカ総合病院内で小さな隔離施設の建設を進めている。完成次第、この新施設でエボラウイルス感染が疑われる新規患者を隔離・検査する。
MSFが支援するイボコ病院内のエボラ治療センターは7月15日に保健省へ移譲予定。それまで、MSFは疫学的調査とアウトリーチ活動を続ける。このほか、イボコ総合病院の小児科診療と感染予防・制御を支援していく。流行を抑制したエボラワクチン
MSFは5月28日以来、赤道州ビコロでエボラ治験ワクチン「rVSVDG-ZEBOV-GP」の予防接種を世界保健機関(WHO)と共同実施してきた。最後の予防接種から(エボラの経過観察期間にあたる)21日以内にエボラの新規症例が出なければ、この予防接種活動も7月14日をもって終了する。
「今回のエボラ流行に対し、国際社会が大々的に対応したことに大変勇気づけられています。ただコンゴでは、エボラよりもマラリアやはしか、コレラ、紛争などの影響の方がはるかに大きいのです。 MSFは東カサイ州ムブジ=マイでコレラの新規流行に対応しているほか、中央カサイ州ツィクラで調査を進め、現在起きている武力衝突への対応方法を検討しています」(ヘンリー・グレイ)
新たにエボラの感染例が報告されなければ、7月22日にコンゴ保健当局から正式な終息宣言が出される見込み。この日は、ビコロのエボラ治療センターで死亡した患者が最後に埋葬されてから43日後(エボラの最長潜伏期間である21日間の2倍と1日)にあたる。関連記事
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