致死率が下がった理由とは エボラ対策の新局面、コンゴからの報告

2020年11月21日掲載

個人用防護具を正しく身に着けることは、新型コロナウイルスと同様、エボラの感染予防に重要だ © Caroline Thirion/MSF個人用防護具を正しく身に着けることは、新型コロナウイルスと同様、エボラの感染予防に重要だ © Caroline Thirion/MSF

新型コロナウイルスの流行が世界中で広がるいま、エボラ出血熱の流行に見舞われている地域がある。コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)の西部、赤道州だ。エボラは高い致死率が特徴で、90%に達することもある。しかしいまこの地域で発生しているエボラの流行では、致死率が以前より低いという。背景に何があるのか。国境なき医師団(MSF)でエボラの対応を率いるガイギー・マナンガマが伝える。 

過去の流行より低い致死率

2020年6月1日にコンゴの赤道州でエボラ流行が宣言されました。この国における11回目のエボラ流行です。その後130人が発病し、55人が死亡しています。死亡率は43%と高いものの、東部の北キブ州とイトゥリ州での流行時に見られた67%から下がっています。

それはなぜでしょうか。赤道州では以前にもエボラが流行したことがあるので、一種の自然免疫が赤道州の人びとの間に存在しているという説明が成り立つのではないかと考えています。これまでに何らかの形でエボラウイルスにさらされた人びとが、免疫を持っている可能性があるということです。これは観察に基づく仮説に過ぎないので、さらに分析を続けていくことが必要です。

また、ワクチンの使用が可能になったことも理由に挙げられます。ワクチンは前回の東部での流行時に開発され、今回の流行初期に活用されました。ウイルスの拡散を抑える上で重要な役割を果たしたと思われます。このワクチン戦略の基本は、患者と直接的・間接的に接触した人を対象とした予防接種です。しかし、農村部や人びとが広い地域に散在して住む地域では、地域の住民全員に予防接種を行った方が効率よく効果も上がると考えられます。

ここでは、コンパッショネート・ユース・プロトコル、つまり、生死に関わる病気の患者に対し、人道的配慮から販売承認前に未認可薬の使用を認める制度も使われました。臨床試験の一環として行った新しい治療法も功を奏しています。 

進化するエボラ対策

このようなワクチンや治療法の改善により、エボラ対策は大きく変わってきています。エボラウイルスの感染防止は対策の重要な目標であることに変わりはありませんが、いまでは患者のケアと回復にますます力が注がれるようになっています。

以前は、患者を隔離し、発熱や脱水への対症療法を行うことしかできませんでした。いま、病気を治すための治療法を選べるようになったことは、患者さんにとってもケアの質の点でも大きな意味があります。

ウイルスにさらされてしまった人の発症を予防する取り組みも前進しています。患者の血液に触れるなど感染リスクが高い形でウイルスにさらされ、発症はほぼ確実とみられる人に、モノクローナル抗体を投与することはその一例です。 

赤道州でエボラ対策にあたる看護師 © Caroline Thirion/MSF赤道州でエボラ対策にあたる看護師 © Caroline Thirion/MSF

地域の理解を得る

閉鎖的な医療施設は、人びとを怖がらせます。かつてMSFの治療センターは理解できない存在として地域で敵意を持たれ、2018年と2019年には東部で暴力を伴う反応につながったこともあります。

そこでいまは大規模な治療センターを設けるのではなく、地域の中で治療体制を整えることに努めています。このアプローチの基本は、地元の医療機関にエボラ専用の小さな施設を設け、そこの治療体制を整えることです。大規模な中央病院や外国からの人員派遣は制限し、地元の医療従事者が中心となる形をとりました。私たちMSFは、エボラ患者の発見、隔離、治療のサポート役に回っています。

最初にこのアプローチを推進したのは2019年、東部で起きていた流行に対応している最中でした。現在では保健省を含めたすべての医療機関が採用するに至り、多くのメリットがあります。

自宅に比較的近く、家族も知っていて通いやすい場所で治療を受けられるということが分かれば、症状が出た際に名乗りやくなります。もしエボラに感染していたら、早く治療を始める分だけ治る可能性が高まります。

また、移動診療チームは、エボラ以外の保健医療ニーズに幅広く対応しています。このことも、地域の人びとに好意的に受け入れられることにつながります。

エボラは深刻な病気ではあっても治療できるものであり、ワクチンを接種すれば一定の予防効果があるという認識が、いま根付き始めています。 

子どもの栄養失調など、エボラのみならず地域のさまざまな医療ニーズに対応している © Caroline Thirion/MSF子どもの栄養失調など、エボラのみならず地域のさまざまな医療ニーズに対応している © Caroline Thirion/MSF

追加情報

2020年6月に発生したコンゴ赤道州におけるエボラ流行は、11月18日、コンゴ政府により終息が宣言された。
(2020年11月28日追記) 

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