ギニアでエボラ流行宣言 封じ込め成功のカギを握る“ワクチン以外”の要素とは

2021年03月01日掲載

スタッフの個人用防護具の着用を手伝うウォルツ=2014年 © P.K. Lee/MSFスタッフの個人用防護具の着用を手伝うウォルツ=2014年 © P.K. Lee/MSF

2021年2月14日、ギニア当局はエボラ出血熱の新たな流行宣言を発出した。2014年から2016年にかけてエボラが西アフリカで大流行した際、対応の中核的な役割を担った国境なき医師団(MSF)は、今回のこの宣言を受けて、直ちに専門チームの編成を開始。

チームでエボラ緊急対応コーディネーターを務めるアニャ・ウォルツに、今回の流行の状況と封じ込めに必要な対策、さらに新しいワクチンについて聞いた。 

エボラへの対策を開始する際に必要なことは何ですか?

2018年にギニアではしかが流行した際、データの収集や
確認を行ったMSFの疫学専門スタッフ © MSF2018年にギニアではしかが流行した際、データの収集や
確認を行ったMSFの疫学専門スタッフ © MSF

まずは状況を正確に把握することです。MSFの疫学者1名を含む疫学サーベイランス(※)チームが、感染が確認されたギニア南部のンゼレコレ州とグエケに向けて2月15日に出発しました。
※疫学サーベイランス:感染症の発生状況について、調査・集計・監視を行うこと。

さらに、以下のような基本対応を段取り良く進めなくてはいけません。

  • エボラ感染者と接触した人の健康観察を行い、感染の広がりを抑えること。
  • エボラ患者を隔離し、治療するための適切な設備を備えた医療施設を整備すること。
  • エボラやエボラ疑いで死亡した人の葬儀を行う際の安全を確保すること。
  • 正確で分かりやすい健康教育情報を発信すること。
  • すべての医療施設で適切なトリアージ体制を徹底することで、エボラ流行のしわ寄せが他の医療体制に及ぶ事態を防ぐこと。
  • 地域社会との対話を行うこと。
地域社会との対話はとりわけ重要で、活動の成功を左右すると言っても過言ではありません。感染地の住民の声に耳を傾ける一方で、私たちが行う感染対策についても理解してもらう必要があるからです。 

エボラワクチン導入の見通しは?

前回のエボラ流行時にも、MSFは村のリーダーたちと
話し合いを重ねた=2014年 © Julien Rey/MSF前回のエボラ流行時にも、MSFは村のリーダーたちと
話し合いを重ねた=2014年 © Julien Rey/MSF

2014年~2016年の流行との大きな違いの一つに、エボラワクチンの存在があります。しかし手放しに喜べないのは、全ての流行地域で接種できる見込みが立っておらず、ワクチンの接種には優先順位があるからです。

ワクチンの有無にかかわらず、地域の人びとに「当事者である自分たちの意見を聞いてもらえる」と感じてもらうことが、エボラの封じ込めには重要です。もし彼らが「自分たちは蚊帳の外に置かれている」と感じたら、それは不信感へとつながるでしょう。実際私たちは、こうした事態を過去に何度も見てきました。エボラへの対応はいくつもの難題に直面します。だからこそ、地域社会との対話が非常に重要なのです。

新しいエボラの治療法は?

今回のギニアでの対応にどのワクチンが使われるかはまだわかりませんが、治療において選択肢があるということは2つのメリットをもたらします。

一つ目は、患者の生存率を大幅に上げられること。比較的早い段階で治療を開始した場合は、さらに高い効果が期待できます。そしてもう一つは、人びとがすすんで受診してくれるということです。2014年の流行時にはワクチンがなかったため、エボラ治療センターはすなわち「死を意味する場所」として恐れられていました。しかし今回はワクチンがありますから、そのようなことにはならないと思います。エボラ感染者を適切に隔離し、ウイルスの広がりを封じ込めることが対策のキーポイントだと言えるでしょう。

これからどのように活動を進めるのですか?

エボラ治療センターでの患者のケアは、昼夜を問わず
行われる。=2014年 © Sylvain Cherkaoui/Cosmosエボラ治療センターでの患者のケアは、昼夜を問わず
行われる。=2014年 © Sylvain Cherkaoui/Cosmos

私たちはエボラの専門の小規模なチームを編成し、あらゆる側面で円滑な対応が進められるように努めます。既に先遣スタッフが現地入りしており、疫学サーベイランス支援と、地域住民の間でエボラという病気についてどの程度理解されているかを聞き取る調査を始めています。このような初期対応を行うことで、状況に合わせた健康教育を実施できるのです。

その後エボラ専門チームが到着し、MSFがどこで、どのように役に立てるかを迅速に判断します。チームは、エボラ治療から疫学的サーベイランス、健康教育、接触者の調査、地域の人びとのとの対話、予防接種に至るまで、必要とされることは全て実施できるスキルと設備を備えています。

MSFだけでなく、対応に携わるすべてのチームが常に心掛けておかなければいけないのは、地域の人びとの声に耳を傾けることです。「治療や感染制御などの医療的な対策」と「地域住民との対話」この2つがエボラ流行対応の“両輪”をなしているのです。

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