プレスリリース

ハイチ:燃料・水・輸送手段の不足で医療危機の恐れ

2021年11月11日
ポルトープランスにあるMSFのタバラ病院に運び込まれる交通事故の被害者<br> =2021年10月 © Pierre Fromentin/MSF
ポルトープランスにあるMSFのタバラ病院に運び込まれる交通事故の被害者
=2021年10月 © Pierre Fromentin/MSF

ハイチの首都ポルトープランス周辺で武力抗争の激化により治安が悪化、燃料の供給に大きな支障が出ている。公共交通機関や飲み水の供給にも影響を及ぼし、医療施設の運営と患者の移動を脅かしている。現地で活動する国境なき医師団(MSF)は、首都圏の医療施設への燃料搬入を呼び掛けている。 

やむなく医療活動を縮小

MSFは緊急措置として燃料消費を抑えてきたが、活動先のタバル地区外傷・熱傷病院は先週、やむなく医療活動を縮小し、重体患者のみへの治療に切り替えた。同病院と、MSFの関連施設であるテュルゴー地区の救急施設では、補充が届かなければ、3週間後には発電機の燃料が底をつく見通しだ。シテ・ソレイユ市のMSF救急施設でも2週間半後には燃料が尽きるおそれがある。

タバル病院では、発電機への依存をさらに減らすため、MSFは太陽光発電パネルの設置を進めている。燃料不足で、医療スタッフの多くが移動手段を確保することもままならない中、中心的なスタッフが出勤・帰宅できるよう、臨機応変の対応を続けている。

こうした問題から、公立・私立を問わず、ポルトープランス周辺のほぼ全ての保健医療施設が患者の受け入れを停止、または、救急の治療のみに制限。さらに、一部は閉鎖に追い込まれている。燃料不足が続けば、さらに閉鎖が相次ぐおそれもある。

MSFは通常、必要に応じて患者を他の施設に紹介しているが、これも日に日に難しくなってきた。MSF医療コーディネーターのジャン・ジルベール・ンドンはこう振り返る。「先日、呼吸困難の患者をシテ・ソレイユのMSF救急施設で受け入れました。容体が安定し、他の施設への紹介を進めたのですが、普段の紹介先である4つの施設から受け入れを断られてしまいました。燃料がないため、受け入れられないというのです。その患者は5つ目の施設でようやく受け入れられました。ポルトープランス周辺の複数の医療施設は、燃料・電力・医療の不足という共通の課題を抱えています。どの施設にも定期的な燃料補給が必要です」
 

燃料不足のため閉鎖されているポルトープランスのガソリンスタンド=2021年10月 © Pierre Fromentin/MSF
燃料不足のため閉鎖されているポルトープランスのガソリンスタンド=2021年10月 © Pierre Fromentin/MSF

燃料不足が水の供給を困難に

燃料不足は食料価格を高騰させ、水の供給にまで影響を与えている。ハイチの水衛生局DINEPAは11月7日、首都圏の広範囲で水の供給を続けるための燃料が足りないと発表。公式の統計によると、水不足に直面する地域のひとつ、シテ・ソレイユだけで26万5000人余りが暮らしている。

「医療施設も、患者も、住民も清潔な水を必要としています。これらの地域に水が届かなくなれば、医療施設が燃料不足による閉鎖の危機にあるときに、水系感染症やその他の緊急の医療ニーズが増えかねません」とンドンは危機感をあらわにする。

医療の需要は依然として非常に高い。テュルゴーのMSF救急施設は産科病院ではないにもかかわらず、他の病院が業務を縮小しているため、連日、陣痛期の妊婦を受け入れている。

その一方で、周辺地域の混乱を理由に患者が受診を遅らせることも懸念される。デルマ33号線道路沿いのMSF診療所は、性別およびジェンダーに基づく暴力(SGBV)の被害者を対象としているが、ここ何週間かは患者が減少。診療に訪れた人も、公共交通機関が使えないため、首都圏内を何時間も歩いてくるほかなかったという。
 

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