レイプ、殴打、拘束… スーダンの紛争を逃れチャドへ 女性たちが直面する性暴力の実態
2024年04月05日
※この記事には性暴力に関する記述が含まれています。
2023年4月15日にスーダンの首都ハルツームで、スーダン国軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の戦闘が激化してから間もなく1年。およそ50万人の人びとがスーダンの西ダルフール州から隣国チャドに逃れている。
国境付近で医療活動を続ける国境なき医師団(MSF)が目撃してきたのは、西ダルフールから多くの人びとが逃れるきっかけとなった、恐ろしい暴力の結末だ。女性や少女たちは、レイプされ、殴られ、拘束され、武装集団によって愛する人が殺されるのを目撃させられたと語る。
被害を受けた多くの女性たちは、肉体的・精神的な傷を抱えながら、いまも簡素なキャンプで多くの難民とともに、非常に困窮した状態で暮らしている。MSFは、女性たちが直面する性暴力の実態を報告し、人びとのニーズに対し国際社会が緊急に対応するよう求める。
加害者の90%が武装
2023年7月から12月にかけて、チャド東部のMSFの医療施設を訪れた患者のうち135人が、レイプの生存者であることを打ち明けている。全員が14歳から40歳までの女性または少女で、ほとんどがチャドに到着する前に被害に遭っていた。また、加害者の90%が武装していたという。
スーダンでは、彼らはためらうことなく、子どもでさえも殺していました。彼らは集団で女性をレイプしました。抵抗すれば殺されたでしょう。
国境の町アドレの避難民
MSFは、これらの証言はこの地域で起きている性暴力のごく一部に過ぎないのではないか、と懸念している。多くの性暴力の被害者が、再び攻撃されたり、コミュニティから排斥されたりするリスクを恐れ、名乗り出ていない可能性もある。
性的暴行、誘拐、強盗… 報告される被害
MSFの治療を受けた患者のうちおよそ4分の1が、少なくとも1回は性的暴行を受けたと報告している。また、40%以上の人びとが複数の加害者にレイプされている。加害者たちがどのように犯行に加わったかを説明する人もいた──彼らは脅しをかけ、被害者を押さえつけ、犯行中に見張りに立つ者もいたという。
生存者の半数は、自宅にいた際に被害に遭っている。また、33人がレイプされた際に、自分自身もしくは家族に対して暴力を振るわれたと話した。娘を守ろうとした父親はしばしば負傷し、母親は殺すと脅され、被害者本人はその前後に殴られたという。
薪集めなどの日常生活の中で、あるいは紛争から逃れようとして暴行を受けた女性もいた。MSFは、武装した男たちが避難民の女性たちを建物に連れ込み、集団で暴行に及んだ結果、女性たちが死亡したという証言を2件聞いている。
誘拐について証言する患者もおり、13人がその被害に遭ったと話す。拘束は一晩から数ヶ月に及んだ。その間に家事をさせられたほか、日中は縛られ、夜間にレイプされたという人もいた。
また、生存者の10人に1人が、襲われた際に強盗の被害に遭ったと証言している。金品や貴重品を盗むため、女性器を含む全身を乱暴に探られたという報告もある。攻撃は妊娠中の人や障害を持つ人など、弱い立場に置かれた人が標的になることもあった。
「あいつらが来る」
性暴力の被害に遭った多くの生存者の心の傷は、他のトラウマ的な体験や大切な人を失った悲しみによって、さらに複雑なものとなっている。
ある女性は、隣人の家が放火され、中にいた10人が死亡したことについて話した。また、家の近くや道路で死体を見たり、その臭いをかいだりした経験を話す人もいる。夜になるとMSFの支援する病院では、「あいつらが来る、あいつらが来る!」と女性たちが寝言で叫ぶ声も聞こえてくる。
診察の際には、患者は睡眠障害や食欲不振、全身の痛み、不安などを訴える。それは特に、家族からの連絡が途絶えた人の場合が多い。また、多くの生存者は被害に遭った後の妊娠を恐れており、実際に被害者の30%が妊娠検査薬で陽性となっている。