治療が困難な結核 「プレXDR-TB」に新たな希望──短期治療の有効性が医学誌『ランセット』に掲載

2025年08月13日
結核の臨床試験に参加している28歳のパキスタンの女性。レントゲン写真を見つめる=2024年4月26日 © Asim Hafeez
結核の臨床試験に参加している28歳のパキスタンの女性。レントゲン写真を見つめる=2024年4月26日 © Asim Hafeez

結核の中でも  非常に治療が困難なものの一つ「プレ超薬剤耐性結核(プレXDR-TB)」(※1)。このプレXDR-TB患者を対象に、国境なき医師団(MSF)をはじめとするendTBコンソーシアム(※2)が行った、初めての第3相ランダム化比較試験(endTB-Q試験)の結果が、医学誌『ランセット』に掲載された。

※1  プレXDR-TB:最も有効性の高い抗結核薬であるリファンピシン(通常の結核治療に用いられる薬)やフルオロキノロン系抗菌薬(リファンピシンに耐性を持つ結核治療の鍵となる薬剤の一種)などに耐性を有する結核。従来療法だと、治療期間は最長2年で、治癒する症例は半数以下だった。

※2 end-TBコンソーシアム:MSF、パートナーズ・イン・ヘルス(PIH)、インタラクティブ・リサーチ・アンド・ディベロプメント(IRD)が主導し、国際医薬品購入ファシリティ(ユニットエイド=Unitaid)が資金援助するコンソーシアム

短期治療でも長期治療と同等の結果に

試験はアジア、アフリカ、南米地域の計6カ国で実施され、以下の2つの治療法を比較した。
 
・6カ月または9カ月間、ベダキリン、クロファジミン、デラマニド、リネゾリドの4つの経口薬を組み合わせて投与する短期レジメン(治療計画)
・18~24カ月間、4~6 種類の薬剤を投与する標準的な長期レジメン
 
短期レジメンでは87%の症例で良好な結果が得られ、長期レジメンの89%とほぼ同等の結果となった。特に、肺疾患が軽度の患者では6カ月の短期治療が93%の有効性を示した。
 
一方、症状が進行している患者には長期レジメンの方が効果的であることが分かり、治療法は病気の重要度に応じて調整すべきであることが示唆された。

endTB-Q試験で使用されている薬剤 © Asim Hafeez
endTB-Q試験で使用されている薬剤 © Asim Hafeez

より個人に合った治療法を目指して

論文に関わった研究者らは、短期レジメンに副作用の軽減、服薬量の低減、コストの削減といった利点があることを強調しつつも、すべての患者に適しているわけではないことを指摘している。個人に合ったレジメンを実現するためには、治療戦略の改善とガイドラインの見直しに向けたさらなる研究が必要だ。
 
この研究は、薬剤耐性結核の患者を層別化して治療戦略を考えるという、世界保健機関(WHO)および国際的な専門家の推奨を後押しするものであり、世界的な結核対策における重要なマイルストーンと言える。

endTB-Q試験に参加している18歳のパキスタンの女性。医師の診察を受ける=2024年4月26日 © Asim Hafeez
endTB-Q試験に参加している18歳のパキスタンの女性。医師の診察を受ける=2024年4月26日 © Asim Hafeez

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