南スーダン:襲撃により国境なき医師団の病院が閉鎖──地域に残された医療施設はなく
2025年04月23日
4月14日の朝、南スーダン上ナイル州ウランにある国境なき医師団(MSF)の病院と事務所に、数十人の武装した男たちが乱入しスタッフを脅迫、重要な医療物資や機器を略奪した。これにより、この地域で唯一機能する医療施設である同病院の活動は、停止を余儀なくされている。
MSFは、医療施設が武装集団に襲われたことを強く非難する。
「医療への攻撃は容認できない」
南スーダンでMSFの現地活動責任者を務めるザカリア・ムワティアはそう話し、続ける。
「この病院は、暴力の激化とコレラの流行が深刻となる中、地域の人びとにとって命綱のような存在でした。病院や医療従事者に対するこのような攻撃は、全く容認できません。医療活動の停止が、既にぜい弱な環境に置かれた人びとにどれほどの影響を与えてしまうのか──。命を守るために人びとが医療を受けることは、さらに難しくなっています」

襲撃の前夜には、暴力はウランの街に迫っていた。当時、病院内では100人以上の患者が外傷の治療や産科、小児科の救急治療を受けていた。患者たちは治療中にもかかわらず、恐怖に駆られ病院を飛び出した。一部の患者はできるだけ病院にとどまったものの、武装した男たちが施設に侵入して部屋を次々と襲い始めたため、最終的には逃げざるを得なかったという。
今回の襲撃でMSFのスタッフの中に負傷者はいなかった。しかし、医療従事者と患者の安全については引き続き強い懸念が残る。
「スタッフと患者の安全は、私たちの最優先事項です。暴力のさらなる激化を懸念し、チームの一時退避に必要なあらゆる措置を講じています。この暴力行為は、人道原則および国際人道法の完全な軽視であり、全く容認できません」とムワティアは話す。
暴力は、私たちの医療活動に直接的な影響を及ぼしています。それも、人びとが最も緊急に医療支援を必要としている時にです。
ザカリア・ムワティア 南スーダンにおけるMSFの現地活動責任者
機能する医療施設は一つもなく
ウランの病院への攻撃は、この地域の情勢悪化を示す一つの事例だ。医療も安全を脅かされている。2025年1月には、6人のスタッフを乗せた、MSFと書かれた2隻のボートが、ナーシル郡病院へ医療物資を届けてウランへ戻る最中に、武装した男たちに襲撃された。これにより、MSFは、この地域でのアウトリーチ活動をすべて停止している。
2018年から、MSFはウランにおいて、分散型の一次医療サービスと並行して、二次医療を提供する病院を運営している。2024年だけでも、MSFは1万件以上の外来診療を行い、3284人の患者に入院治療を提供し、650人の出産を支援した。この60床の病院は、暴力や感染症の流行、医療アクセスの制限に直面する地域社会の人びとにとって、長い間、重要な医療施設として機能してきた。
この病院の活動停止は、機能する医療施設が一つもないこの地域における医療活動に、大きな打撃をもたらす。この混乱により、MSFはこの地域全体の複数の基礎診療所への支援も停止せざるを得なくなり、コレラに関しては患者の治療や流行の抑制という重要な取り組みが中断されている。さらに、HIV、結核、その他の慢性疾患を患う800人以上の患者が治療を受けられなくなっており、人びとの命は危険にさらされている状況だ。
MSFは、レンクやマラカルといった、上ナイル州の他の地域で医療活動を続けている。MSFは、紛争のすべての当事者に対し、国際人道法に従って、医療施設、患者、民間人、医療従事者を尊重し保護するよう緊急に呼びかける。
MSFは、必要な場所ならどこへでも向かい、公平な救命医療を提供します。しかし、患者と医療従事者の安全は確保されなければなりません。
ザカリア・ムワティア 南スーダンにおけるMSFの現地活動責任者