10代の姉はマラリアの弟をかごで運び……先細りする南スーダンへの医療援助

2021年02月09日掲載

南スーダンで、MSFが各家庭に配布したキットを運ぶジョングレイ州リアンの女性たち © Damaris Giuliana/MSF南スーダンで、MSFが各家庭に配布したキットを運ぶジョングレイ州リアンの女性たち © Damaris Giuliana/MSF

ニャデング・ウォルさん(47歳)は長い棒を杖にして、10代の孫娘とともに国境なき医師団(MSF)の移動診療所まで歩いてきた。少女の頭上のかごの中には、意識不明に陥った2歳の弟がいた。重度のマラリアだった。

先月、移動診療を行うため、MSFの緊急対応チームは南スーダン東部、ジョングレイ州のリアンに降り立った。そのへき地でチームが目にしたのは、長年にわたる洪水と戦闘によって、飲料水も貯水タンクもトイレも十分にない中で暮らす人びとの姿だった。5歳未満の子どもたちは、特に危機的な状況に置かれている。

洪水で覆われる沼地 医療アクセスを困難に

「診察した5歳未満の子どものうち、60%がマラリアにかかっており、重症の子もいました。人びとは病気でも治療を受けておらず、尿路感染症を疑われる女性が多くいます。飲み水が不足すると起きる症状です」とMSF緊急対応コーディネーターのロベルト・ライトは話す。

この地域は湿地帯に囲まれ、雨期には数カ月にわたって洪水に見舞われる。乾期になると食料や家畜などの資源が枯渇するため、暴力行為が多発する。

村の人びとが一番近くの無料診療所へ行くには、1時間以上歩かなければならない。湿地帯を通るため、患者はかごやビニールシートに乗せて運ぶ。したがって水位が上がる雨期に診察を受けられるのは、沼の向こう岸まで泳いで渡れる者だけだ。もし専門治療が必要な場合には、ランキエンにあるMSF病院へ行かねばならず、数日間にわたる徒歩の旅となる。

MSF移動診療所で重度マラリアを患う孫が安定するのを見守るウォルさん。一家はこの後、入院のため5時間歩いて民間病院へ向かった © Damaris Giuliana/MSFMSF移動診療所で重度マラリアを患う孫が安定するのを見守るウォルさん。一家はこの後、入院のため5時間歩いて民間病院へ向かった © Damaris Giuliana/MSF

削減される南スーダンへの国際資金援助

エリザベス・ニョスト・コーンさんは娘のニエペイちゃん(7歳)を連れて、MSFの移動診療所を訪れた。少女の側頭部には大きな傷口が開いている。昨年9月に負ったものだという。「洪水で我が家は50センチほどの高さまで浸水しました。その夜は大雨が降り、壁が崩れてこの子の頭にあたったんです」

「一家で避難しなければならず、夫は子どもたちと義理の母を連れて安全な場所を探しに出ました。私はニエペイが出血していたので、沼を渡って診療所へ向かいました。そこで3日過ごした後、家族と合流するためにリアンに来たのです」とエリザベスさんは語る。その後も何度か民間の診療所に通ったが、治療を終えられるほど家計にゆとりはなかった。

「ニエペイちゃん一家の辛い経験は、南スーダンの現状を示すものと言えます。長引く洪水、各地で止まない暴力など、緊急事態が次から次へと発生しています。医療施設の不足により、治療を受けられる患者数も著しく低下しました。たとえ診察を受けられたとしても、その後の経過観察や治癒までに至らないことが多いのです」とライトは話す。

リアンのMSF移動診療所では、先月の約1週間でおよそ770人が診察を受けた。またMSFは、1000世帯以上に蚊帳、毛布、バケツ、石けん、浄水器やフィルター、仮住まい用のビニールシートやロープなどが入ったキットを配布した。洪水で被災した家庭にとって、これらのキットはマラリアや呼吸器感染症、水因性疾患などの致命的な病気から身を守るのに役立つ。

南スーダンへの援助資金は近年、削減される傾向にある。ジョングレイ州で活動を行う他の医療団体も、来月末までしか資金繰りがもたないという。MSFは国際機関や支援国に対し、資金援助の継続を呼びかけている。リアンのような遠隔地で危機に瀕する人びとの生活は、こうした団体による人道援助が欠かせない。

水の入った容器を運ぶリアンの女性たち © Damaris Giuliana/MSF水の入った容器を運ぶリアンの女性たち © Damaris Giuliana/MSF

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