水の中を2時間歩いて病院へ 南スーダン各地で大洪水が発生

2020年11月02日掲載

洪水の被災地で子どもの栄養失調を診断するMSFスタッフ © Tetiana Gaviuk/MSF洪水の被災地で子どもの栄養失調を診断するMSFスタッフ © Tetiana Gaviuk/MSF

今年7月以降、南スーダンの各地で大規模な洪水が発生している。戦闘が激化する中で新型コロナウイルスの感染が広がり、さらに洪水被害に見舞われた南スーダン。国境なき医師団(MSF)は、各地で緊急医療援助に当たっている。 

戦闘、新型コロナウイルス、洪水……重なる人道危機

大洪水により被災した人びとの数は約80万人と推定され、食料や水のほか、避難する場所も不足している。マラリア患者が急増する時期に重なり、医療ニーズは甚大だ。MSFは、大ピボール行政区、ジョングレイ州、上ナイル州、ユニティー州内各地の洪水被災地で援助活動を展開している。

「洪水に見舞われた地域は、以前から暴力と戦闘が続き、経済危機が深刻化し、食料も足りない状況でした。そこに新型コロナウイルスの危機が加わり、さらに洪水の打撃を受けているのです」。そう話すのは南スーダンでMSFの現地活動責任者を務めるイブラヒム・ムハンマドだ。

「現在、すべての洪水被災地で、下痢性疾患やマラリアなどの病気が増えても対応できるよう、準備を進めています。避難所など狭い場所で大勢が暮らすことや、衛生状態の悪さ、使えるトイレが不足していることで、健康被害のリスクが高まっているのです」

洪水により一面が水で覆われた大ピボール行政区の町 © MSF/Tetiana Gaviuk洪水により一面が水で覆われた大ピボール行政区の町 © MSF/Tetiana Gaviuk

上がり続ける水位 診療所が水没の恐れ

最も大きな被害を受けた地域の一つである大ピボール行政区では、MSFは5カ所の村で移動診療を行い、ピボール町で緊急診療所を運営している。過去2カ月間に、MSFはピボールとその周辺で、5000人以上の子どもを含む1万3000人以上の患者を治療した。半数はマラリアを患っており、160人の子どもははしかを患っていた。

ピボール地域では栄養失調の患者数が急速に増加しており、MSFは、入院栄養治療センターの活動と並行して、移動診療所で幼い子ども向けに栄養治療を行う準備を進めている。また、洪水の汚水が生活用の井戸に流入しているため、1日6万リットルの飲み水を提供している。現在も水位が上がり続けているため、MSFはピボールの診療所は水位に耐えられないのではないかと懸念。町外の高台で移転先の場所を探している。

ジョングレイ州の湿地帯にある人口約3万人の町、オールド・ファンガクでも7月に洪水が始まり、水位が上昇し続けている。「多くの家が毎日のように被害に遭っています。オールド・ファンガクでは、誰もが家の周りの水をかき出し、土壁の堤防を築く作業に追われています」と、オールド・ファンガクでMSFのプロジェクト・コーディネーターを務めるドロシー・エソンウネは話す。

そのような状況下、家屋が水浸しになった別の地域の人びと約3000人が、オールド・ファンガクに逃れてきた。ここではトイレのほとんどが浸水しており、水を伝って感染する病気のリスクが高まっている。オールド・ファンガク病院で活動するMSFの医療チームは、呼吸器感染や急性水性下痢に陥った約70人の避難民の治療を行った。 

避難シェルターの前で過ごす女性 洪水で作物を失ったと話す © Tetiana Gaviuk/MSF避難シェルターの前で過ごす女性 洪水で作物を失ったと話す © Tetiana Gaviuk/MSF

胸まで迫る水の中を歩いて病院へ

水位が上がり続ける中、病院へ行くことは困難を極める。5人の子どもの父親であるスティーブン・マンヤン・チャンさんは、13歳の息子が病気になったとき、胸まで迫る水の中を2時間歩いてMSFの診療所まで息子を運んだ。「病院への道は消え、見渡す限り水ばかりでした」と語る。

病院への道が途絶えた人びとに医療を提供するため、MSFは船でしか行けない上ナイル州の町に緊急診療所を開設した。マラリアと下痢の治療、簡易栄養スクリーニング、心理社会面の支援に加え、545世帯へ生活必需品の配布を行った。

洪水被害の長期化にあたり、MSFは被害の大きい地域を特定すべく、ジョングレイ州、上ナイル州、ユニティー州で、空からの調査と陸上での調査を行っている。 

MSFの診療所で治療を受ける13歳の少年 父親が水の中抱えて診療所まで運んだ © MSF/Tetiana GaviukMSFの診療所で治療を受ける13歳の少年 父親が水の中抱えて診療所まで運んだ © MSF/Tetiana Gaviuk

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