【南スーダン独立10年】「世界で一番新しい国」──希望と現実のはざまで

2021年07月19日掲載

2011年7月、20年以上にわたる長い内戦の末に独立を果たし「世界で一番新しい国」として誕生した南スーダン。人びとはようやく手にした自由と平和に歓喜し、希望に満ちていた。しかし実際の国内情勢はそうした期待とは程遠く、内戦や暴力によって大勢の人が傷つき、命を落とす状況が続いている。

380万人以上が住まいを追われ、難民・国内避難民となって過酷な生活を強いられている現状は、「アフリカ最大の難民危機」と言われる。独立から10年、南スーダンが歩んできた道、そして人びとが直面している危機とは──。

独立~現在 南スーダンが抱える課題

2011年 20年以上にわたる内戦を経て、住民投票によってスーダンから分離、独立を果たす。
2013年 国内は再び内戦状態に。民族に対する虐殺、民間人の殺害、性暴力、子ども兵士の徴用などの行為が横行した。
2015年 和平協定が締結されるも、1年足らずで政府軍と反政府武装勢力の間で再び武力衝突がぼっ発。
2018年 5年間に及ぶ内戦は新たに結ばれた和平合意によって終結したが、死者数は40万人、家を追われた人は数百万人に上った。
2020年 統一政府が発足、しかし国中のいたるところで争いや暴力が頻発。
2021年 現在も紛争や暴力が続き、南スーダンは深刻な人道危機下にある。

過激さを増す暴力

5年間に及ぶ内戦で命を落とした人は40万人に上ると推定されている。その多くは子どもや高齢者を含む民間人であり、民族的・政治的動機に基づく組織的な攻撃が各地で行われた。

予防可能な病気で命の危機に

各地で続く紛争や暴力により、定期的な予防接種を含む医療へのアクセスが妨げられ、感染症のリスクが上昇。難民キャンプや紛争地域では、1日に3人~5人の子どもたちがマラリアなどの予防可能な病気で命を落としている。

心のケア

暴力の被害に遭ったり、目の前で大切な人を失うなど、心にトラウマを抱えた人が何百万人もいる。難民キャンプでは劣悪な住環境や、先の見えない閉塞感から自殺・自殺未遂も多く、MSFはこうした人びとを対象に心のケアを実施している。

医療への攻撃

医療施設や援助団体スタッフ、物資などを狙った攻撃が頻発。この10年間で、MSFの施設や活動を標的にした襲撃は少なくとも56件に上り、現地スタッフ24人が殺害された。医療に対する攻撃は、人びとから医療へのアクセスを奪うことを意味し、地域住民に直接的・間接的な影響をもたらす。

南スーダンにおけるMSFの活動概要

MSFが現在の南スーダンを構成する地域で活動を始めたのは1983年。40年近くにわたり、暴力の直接的・間接的な影響を受けながら生活する人びとへの医療・人道援助を行ってきた。

MSFは、南スーダンを世界各国の活動地の中でも最優先国の一つと位置付けており、医療、雇用、資金など包括的な取り組みを通じて、人びとの命を守る活動を続けている。

  • 暴力被害者の
    治療件数
    9,200,000
  • 治療した
    マラリア患者数
    2,300,000
  • 栄養治療を受けた
    患者数
    146,000

  • はしかの
    予防接種実施数
    635,000
  • 個人に対する
    心のケア相談件数
    53,000

  • 外科手術件数
    52,500

南スーダンでの活動記事一覧はこちら

「死」は人びとの日常の中に──日本人派遣スタッフ 岩川 眞由美

ヤンビオの病院で同僚と=2014年
🄫 MSFヤンビオの病院で同僚と=2014年
🄫 MSF

2014年6月から同年12月まで、南スーダン南部のヤンビオで活動した小児科医の岩川眞由美は、当時の活動をこう振り返る。 

2011年に独立した後も内戦は続いていましたが、私のいたヤンビオは比較的落ち着いていました。MSFが支援するヤンビオの州立病院には、いろいろな民族の患者さんがいて、話す言語も違えば、宗教もキリスト教やイスラム教などさまざまです。彼らは泥の壁とかやぶき屋根でできた「トゥクル」と呼ばれる家に暮らし、まきで火をたき、誰もが明るく家族を大切に暮らしていました。

現地の人はMSFの医療援助を信頼してくれていましたが、ある子どもの患者さんのご家族が、重症で助かる見込みがなくなったわが子を大切に抱きかかえ、救命措置を拒否して家族のもとに連れて帰る出来事がありました。私が考えるよりも「死」はヤンビオの人びとの日常の中にあり、あらがうことなく受け入れていたのかもしれません。人びとの自然の力に対する謙虚な気持ちに接すれば接するほど、その子の命を助けられなかった自分が医師としてふがいなく、つらかったです。

子どもの病気で圧倒的に多かったのは、マラリアでした。マラリアは蚊に刺されることによって感染しますが、予防策は取られておらず、トゥクルに住む子どもたちは危険にさらされていました。成長し、大人になれば、感染しても3日間ほどの発熱や倦怠感といった症状ですみますが、5歳以下の子どもにとってマラリアは命に関わる病気です。ベッドはいつも満床で、テントを追加して救命に当たりました。

また、日本とは異なり、小児肺炎の原因菌に対するワクチンが接種されていないので、新生児や乳児で重篤な細菌性肺炎にかかる子が多数いました。さらに、大家族の中で競争力に劣る小さく生まれた子や、病気を経験した子は、重度の栄養失調になりやすく、特別なケアが必要でした。検査装置のないヤンビオで、救命を含む輸液や栄養の全身管理を行うのは大変難しいことでした。

私たちの活動には、現地スタッフへの教育プログラムも含まれており、私も「クリニカルオフィサー」と呼ばれる医療職の若者14人の教育も行いました。学問としての全領域を含む医学ということではなく、現地で実際に診療を行う際に必要な医療知識を指導しました。彼らを含め、南スーダンの責任ある医療者たちが、ヤンビオに住む人びとの健康を守ってくれるよう、願っています。

産科病棟で治療に当たる岩川医師=2014年 🄫 Matthias Steinbach産科病棟で治療に当たる岩川医師=2014年 🄫 Matthias Steinbach

世界で一番新しい国、それは“死と隣り合わせ”の国

紛争や暴力によって、家を追われた人びと。ときに自分や家族の命を守るために、過酷な選択を迫られることもある。次の3つの問いは、南スーダンで人びとが実際に直面した出来事。あなたなら、どうするだろうか──。
※以下は、「答えは変えられる。」キャンペーンを再編集したものです。

Q1. 家が豪雨で流されました。

あなたには子どもが3人います。避難用のバスが出ていますが、所持金では全員分のチケットを買えません。どうしますか?
 
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    A. 子どもを一人おいていく

    「9歳の息子はおいてくるしかありませんでした。4人分のバスの切符を買うお金がなくて」。長引く紛争。食べ物も、仕事もない。家を失い、一家が離散する。こんな悲しいことが起き続けています。

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Q2. あなたは喉が渇きました。

しかし近くにあるのはとても汚い川だけです。どうしますか?
 
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    A. その川の水を飲む

    「清潔な水が足りません。殺菌も十分ではありません」川の水をそのまま使うとコレラなど感染症が流行する原因となります。

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Q3. お昼時、お腹が空きました。

どうしますか?
 
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    A. 空から食料が降ってくるのを待つ

    「人びとは、人道援助機関が空から緊急投下する食料を頼りにしている」戦闘を逃れた人たちが暮らす地域は雨期に巨大な沼地に。援助物資はすぐに届きません。

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