南スーダン:襲撃されたが、活動は再開した「住民の命綱」に

2017年12月12日
国境なき医師団(MSF)の活動の中で規模が2番目に大きい南スーダン(※)。長年にわたる紛争の末、2010年に独立した"世界で一番若い国"だ。しかし、2013年に起きた内紛で再び混乱の渦に飲み込まれてしまった。

MSFは避難民キャンプやへき地での医療援助、コレラなど感染症の治療・予防、栄養治療マラリア対策など幅広い活動を展開。医療団体がMSFしかいない地域もあり、文字通り"命綱"となっている。それにもかかわらず、略奪目的で襲撃され、活動が一時中断することも。
 
MSFはすべての紛争当事者に対し、こうした非人道的な行為をやめ、民間人と医療の安全を保障することを強く求めている。
 
※2016年の支出ベース。1位はコンゴ民主共和国。

待ち伏せで襲撃、車ごと奪われる/ピボール

ピボールのMSF診療所で診察を待つ患者
ピボールのMSF診療所で診察を待つ患者
ピボール郊外で8月24日、MSFのチームが待ち伏せに遭う事件が発生。スタッフ2人が負傷し、医療機器・物資、車、スタッフの私物が奪われた。

MSFスタッフ4人が、MSFのロゴをつけた車とトラクターで医療援助ニーズの調査へ向かっていたところ、現地語を話す武装集団が襲ってきた。スタッフ2人が殴られて軽傷を負った。車を奪われ置き去りにされたが、夜遅くにピボールの拠点に戻ることができた。
 
ピボールでの紛争は4年近く続いており、住民の生活に深刻な影響が出ている。MSFはピボール、レクウォンゴル、グムルクで診療を行っている唯一の人道援助団体で、住民にとっては文字通りの"命綱"だ。しかし、この事件直後から治安が悪化し、一部のアウトリーチ活動(※)を停止した。
 
ピボールでMSFが襲われたのはこれが3度目。事件の数日前、MSFインターナショナル会長のジョアンヌ・リュー医師が首都ジュバで記者会見を開き、「南スーダン国内で紛争に関わっていない人を保護すること、及び医療を受ける権利を保障することが急務」と訴えたばかりだった。MSFは事件後に改めて、すべての紛争当事者に対し、民間人と医療施設の保護を求めた。
 
数日後、盗まれた車が見つかり、アウトリーチ活動を再開した。
 
※医療援助を必要としている人びとを見つけ出し、診察や治療を行う活動。

ぬかるみで分断される避難民キャンプ/アブロク

アブロクにあるMSF診療所<br> 雨期で地面がぬかるんでいる<br>
アブロクにあるMSF診療所
雨期で地面がぬかるんでいる
アブロクは白ナイル盆地に位置し、推定1万5000人が他の地域から避難してきている。9月中旬、この一帯で戦闘が起きた。住民が一斉に避難し、MSFもスタッフ4人を退避させた。地域での援助活動は一時中断したが、戦闘は1日で収束。翌日から住民が戻り始めたため、MSFも活動を再開した。ただ、情勢は不安定で予断を許さない状況だ。

アブロクに滞在している避難者の多くは、避難を繰り返してきた。避難民キャンプは沼に近く、雨期になると2つに分断されてしまう。地面は車が通れなくなるほどぬかるんでしまう。
 
水不足も大きな問題となっている。間もなく乾期に入るため、清潔な飲み水を供給する体制づくりが急務だ。清潔な水を確保できれば、水が媒介するコレラなどの流行リスクが抑えられる。

20万人にコレラの予防接種/ジュバ

MSFのコレラ治療センターに入院した<br> 3歳の女の子と付き添いの母親<br>
MSFのコレラ治療センターに入院した
3歳の女の子と付き添いの母親
MSFと保健省は、9月下旬から3週間にわたり、首都ジュバでコレラの集団予防接種に取り組んだ。コレラ流行の記録が残る地域を中心に進め、対象は20万人にのぼった。

ジュバはコレラの発生地域になっている。清潔な水が足りず、浄水処理も適切にされているとは言いがたい。ナイル川からくんできた水を直接使ったり、廃棄物がきちんと管理されていなかったりすることも、コレラ流行の原因となっている。
 
9月下旬には、ジュバのコレラ新規症例のほとんどが国連民間人保護区域、シェリカット、コル・ウィリアムス、ロロゴから報告されるようになり、対策が急務だった。MSFと保健省は各地域で集団予防接種の重要性を伝え、長や長老からも協力を取りつけた。

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