食べる物も、仕事もない。家を失い、子と生き別れた——行き場をなくした人びとの命をつなぐ、唯一の医療

2018年08月22日掲載

カリオ難民キャンプのMSF病院で診察を待つ患者カリオ難民キャンプのMSF病院で診察を待つ患者

 「食べる物も仕事もなく、さらに家まで失くしてしまいました。自宅は雨で崩壊し、5歳と6歳の子どもを連れて別の場所へ移るしかなかったんです。9歳の息子は置いていくしかありませんでした。バスのチケットを4人分買うお金はなかったからです」。南スーダンのゴク・マシャル出身のアメルさんは、こう振り返る。現在、隣国スーダン東ダルフール州のカリオ・キャンプに身を寄せている。

2016年にできたカリオ・キャンプは東ダルフール州最大の難民居住地だ2016年にできたカリオ・キャンプは東ダルフール州最大の難民居住地だ

キャンプに到着した難民はまず受付所で登録を済ませ、正式な受入を待つ。難民の大半は、内戦が長引く南スーダンから逃れてきた人びとだ。

「暮らしが良くなることを期待して、このキャンプに来ました。でも、この(受付所の)テントで1カ月もいるのに、正規の仮設住居には入れないままです」とアメルさん。 

集団予防接種の準備をするMSF看護師集団予防接種の準備をするMSF看護師

国境なき医師団(MSF)の移動診療チームは週2回ここを訪れ、新たに到着した難民の健康状態をチェックしている。栄養失調の検査や予防接種を行い、必要に応じて患者をキャンプ内の医療施設へ引き継ぐ。 

2カ国の狭間で揺れ動く人びと

2011年にスーダンから分離独立して誕生した南スーダン。独立直後、多くのスーダン人が国境を越えて南スーダンへ移り住んだ。しかし、2013年から南スーダンで紛争が始まり、約3人に1人が家を追われる事態に発展。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、スーダン国内に身を寄せる南スーダン人難民は現在75万人余り。そのうち約10万人が東ダルフール州におり、カリオ難民キャンプでは約2万人を受け入れている。MSFは2017年7月にキャンプ内で病院を開設した。 

スーダンへ向け避難する南スーダン難民スーダンへ向け避難する南スーダン難民

カリオ・キャンプの生活環境は厳しい。MSFのプロジェクト・コーディネーターを務めるヴァネッサ・ロッシはこう説明する。
「大半の人は固定収入を持ちません。地元の農地で働くことはあっても、もちろん季節労働者としてです。キャンプ内は過密状態で、小さな仮設住居に5~10人の大家族が暮らしています。戸外の共用トイレは汚くぬかるんでいます。雨期には、よどんだ水たまりや沼地がたくさんできるでしょう」 

栄養失調で入院する生後1カ月の赤ちゃん。体重はわずか1.7kgだ栄養失調で入院する生後1カ月の赤ちゃん。体重はわずか1.7kgだ

食糧不足も、子どもや妊産婦に悪影響を及ぼしている。5~10月に訪れる夏枯れ(食糧の備蓄が底を突き、次の収穫を待つ時期)の時期には、重度栄養失調が増える可能性が高い。

MSFのモハメド・ザクリア医師は母子を取り巻く状況をこう話す。
「暑さと埃で、5歳未満の子どもを中心に呼吸器の感染症が広がっています。肺炎や脱水症、マラリアも見られます。自宅出産によって細菌感染し、新生児や母体が敗血症にかかるケースも多いです。健康教育を進めなければなりません」 

母親たちに授乳指導を行うMSFのヘルスプロモーター母親たちに授乳指導を行うMSFのヘルスプロモーター

地元住民の健康を支える拠点に

MSFの医療援助は、難民だけでなくカリオの地域住民も対象となる。地域の代表者イブラヒム・コリナさんは「地元の住民にとって、病気の予防や治療にMSFは欠かせない存在となっています」と話す。 

MSFの産科で出産した女性は、産後ケアのため定期的に来院するMSFの産科で出産した女性は、産後ケアのため定期的に来院する

この村に住むダル・アルナイームさん(20歳)は、MSFの診療所で出産した。「以前はこの辺りに診療所がなかったので、地元出身の伝統的産婆さんの助けを借りて自宅で出産するのが普通でした。私はMSFの診療所に産科ができたと聞いて、より安全なそちらで産むことにしたんです。出産後は24時間の経過観察を受けました。診療所で赤ちゃんをケアすることの大切さを実感しました」

MSFは、カリオで急性水溶性下痢が流行した2017年7月から活動。20床を擁する専門の治療センターを開設し、流行が収束するまで運営を続けた。同時にカリオの診療所を病院に拡張し、約4万人を対象に産科・栄養・予防接種プログラムなどの1次・2次医療を無償で提供してきた。カリオ病院の外来診療は現在1日200~300件。患者には難民と地元住民だ。入院科は20床を備え、急患は州都ダイーンの病院に引き継いでいる。

12月には1週間の集団予防接種活動で1万9000人の子どもにはしかのワクチンを投与した。また、25人のコミュニティ・ワーカーで構成されたチームが毎日キャンプ内を巡回し、疾病予防策を伝えている。 

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