ソマリア:世界最大規模のはしか流行 10万人の子どもたちにワクチンを接種

2022年08月23日
避難民キャンプで、娘をはしかのワクチン接種に連れて来たヒイス・アリさん © Mohamed Hussein (MOTO)/MSF
避難民キャンプで、娘をはしかのワクチン接種に連れて来たヒイス・アリさん © Mohamed Hussein (MOTO)/MSF

子どもを抱っこした親が、大きな木の下に続々と集まって来る。その目的は、はしかのワクチン接種だ。
 
いま、ソマリアとソマリランドでは世界最大級のはしか流行が起こり、子どもたちの命が脅かされている。国境なき医師団(MSF)は保健当局と協力し、大規模なワクチン接種を展開している。

感染が広がりやすい避難民キャンプ

ここは、ソマリランドの都市ブラオにある国内避難民キャンプ。数年にわたって雨期の降水量が少ない年が続き、清潔な水を得ることが難しくなった。衛生環境も悪化している。さらに、キャンプでは多くの人が密集して暮らしており、感染症が広がりやすい条件が揃っている。

ヒイス・アリさんは、子どもを連れてワクチン接種会場に訪れた母親の一人だ。

「私の子どもはワクチンを受けていなかったので、はしかに感染してしまいました。幸い一命は取り留めましたが、ひどい高熱が出たんです。キャンプの他の子どもたちもとても苦しんでいて……。予防接種を受けないと、子どもははしかに簡単に感染してしまうことを知りました」

MSFがキャンプでワクチンを接種していると聞いたヒイスさんは、なんとかして子どもはしかから守ろうと、一番小さい子どもとその上の子を連れて会場に訪れた。

接種会場に続々と親子が集まる  © Mohamed Hussein (MOTO)/MSF
接種会場に続々と親子が集まる  © Mohamed Hussein (MOTO)/MSF

子どもたちの命を守るために、必要なワクチンと治療を

世界保健機関によると、ソマリアとソマリランドは世界最大級のはしかの流行に直面している。MSFは、今年に入ってから7000人以上のはしか患者を診察した。はしかはこの地で頻繁に流行しており、これまでに何度も予防接種キャンペーンが行われてきた。しかし、流行は収まる気配がない。

MSFの医療ディレクターのモハメド・ムソケはこう話す。

「ソマリアとソマリランドでは、ワクチン接種率は基本的に低い数字です。広い範囲に散らばって暮らす人たちも多く、予防接種を行うのが難しいのです。そのような場所では、遠く離れた一軒一軒の家々を訪ね歩く必要があります」

MSFは今年7月に、ソマリランドの国内避難民とその受け入れ地域住民を対象に、5歳未満の子ども10万6000人にはしかの予防接種を実施。これは対象となる人数の86%に相当する。

クーラーボックスに入ったはしかワクチン。これから予防接種が始まる  © Mohamed Hussein (MOTO)/MSF
クーラーボックスに入ったはしかワクチン。これから予防接種が始まる  © Mohamed Hussein (MOTO)/MSF

5月には、MSFはソマリランドのハルゲイサとブラオのにはしか患者の治療施設を開設。隔離室のベッドは合計110床となる。ここで、はしかの合併症を患う子どもたちに医療援助を提供している。これら2つの地域において、7月中旬時点で1250人以上のはしか患者の治療に当たった。

今年初めから、MSFはソマリランドの保健当局らに対し、はしかの感染拡大を遅らせ、死亡率を減らすために、広範囲の予防接種キャンペーンと、子どもたちへの定期的なワクチン接種を緊急に実施するよう呼びかけている。 

また、MSFははしかの感染状況の監視において保健当局などを引き続き支援し、異常な増加が確認された場合には保健省に注意を促す。 はしかの患者を迅速にそして適切にケアできるよう、物資と人材の両面から援助を継続していく。 

5歳未満の子ども10万6000人にはしかの予防接種を行った  © Mohamed Hussein (MOTO)/MSF 
5歳未満の子ども10万6000人にはしかの予防接種を行った  © Mohamed Hussein (MOTO)/MSF 

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