「愛することは難しく、憎むことは簡単です」 占領下のパレスチナ 心的外傷にも苦しむ人びとの声
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イスラエルによるパレスチナ自治区(ヨルダン川西岸地区とガザ地区)の占領以来、50年以上にわたり、パレスチナの人びとは度重なる心的外傷を体験してきた。また、失業や経済の衰退、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、パレスチナ全域で人道ニーズは高まっている。
ヨルダン川西岸地区では、イスラエル当局がパレスチナ人を組織的に弾圧し続けた結果、家の取り壊しや強制移住、イスラエル人入植者による暴力が増加。このような経験は人びとに長期にわたる影響を与え、特に、暴力を振るわれたことがあったり、占領・経済封鎖下の生活で精神的ダメージを受けていた場合には、なおさらだ。
国境なき医師団(MSF)は、ヨルダン川西岸地区とガザ地区で、中度から重度の心の不調や精神障害を患う男性、女性、子どもたちの心のケアを展開。繰り返される差別と暴力が、人びとの心におよぼす影響とは──。写真家アルフレード・カリスが、占領下のヨルダン川西岸地区を旅し、占領下で暮らす人びとが負った心の傷を記録した(※)。
※カリス氏の写真は、スペインの新聞『エル・パイス・セマナル』からの転載。
パレスチナの母親はみな、困難な状況の中で生きています。私たちは強くなりましたが……
ラグダさん
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私がしっかりしていていなければなりません。私が弱ると家族も弱ってしまいます
ハルーンさんの母親ファリサさん
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たとえ傘一本しかなくてもいい。ここにとどまりたい
ネジメ・ナワジャーさん
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イスラエルの人権NGO「ベツレム(B'Tselem)」によると、2021年、イスラエルはヨルダン川西岸でパレスチナ人の住宅199戸を取り壊した。ネジメ・ナワジャーさんの家も、この時に取り壊された。ネジメさんはMSFのもとで心のケアを受け、次のように語った。「惨めであっても心は強く感じます。自分を守ってくれるものがたとえ傘一本しかなくても、ここにとどまりたいです」
この地では、愛することは難しすぎ、憎むことはとても簡単です
シャーディさん
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刑務所にいた頃、シャーディさんは拷問にかけられた。2019年、うつと怒りのため、心のケアを受けにMSFの診療所に。「この地では、愛することは難しすぎ、憎むことはとても簡単です。社会に溶け込めず、いつも不安で、生きていくのが嫌でした」とシャーディさんは話す。1年半の心のケアを経て、シャーディさんの心の状態は改善。最近、父親になったところだ。「苦悩の記憶を隅に追いやったんです」
私たちは恐怖の中で暮らしています
ランダ・アブ・シファンさん

イスラエルが支配するヨルダン川西岸地区H2地域に住む、ランダ・アブ・シファンさん。「私たちは恐怖の中で暮らしているため、みな心に何らかの影響を受けています」と話し、過激派の入植者たちから何度も攻撃を受けたという。娘の一人は、不安のためにMSFで治療を受けている。
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