新型コロナウイルス:パレスチナで急増する患者数と高い死亡率を食い止めるために

2020年10月07日掲載

パレスチナ・ヨルダン川西岸にある村の学校で行われたMSFの健康教育。手洗いを実践する子どもたち © MSFパレスチナ・ヨルダン川西岸にある村の学校で行われたMSFの健康教育。手洗いを実践する子どもたち © MSF

中東パレスチナでは、ヨルダン川西岸地区とガザ地区で共に新型コロナウイルスの感染者数が急増している。ヨルダン川西岸地区でこれまで確認された患者は、4万3000人余り(※)。その3分の1以上の症例数を占めるヘブロン県は、パレスチナにおける感染の中心地となっている。今年8月、国境なき医師団(MSF)は、すでに厳しい日常を生きる人びとを支えるため、この地の医療当局への援助を開始した。
※9月20日時点・世界保健機関(WHO)

感染対策と集中治療で医療機関をサポート

「新型コロナウイルス感染症は新しい病気で、医療事情の悪い地域では特に警戒が必要です」

こう話すのは、ヘブロン県でMSFの医療アドバイザーを務めるヘレン・オッテンス=パターソン。ヘブロンでは、パレスチナでの新型コロナによる死者300人のうち、約半数の141人が亡くなった(9月20日時点・WHO)。

「患者は容体が急変して、重症から危篤に至ることがあります。こうした病状では、酸素療法を伴う集中治療でのケアが必要です。我々のチームは比較的小規模ですが、MSFのノウハウと支援で高い死亡率を下げる一助となりたい」とオッテンス=パターソンは言う。

MSFは感染の予防と抑止を重点に、ヘブロンの医療システムを支援している。また新型コロナ治療を行う主要病院の一つ、ドゥラ病院では集中治療室への技術支援も行う。同病院は7月初旬に特別病棟を開設し、以来550人以上の新型コロナ患者が入院した。現在は80床まで受入体制を拡充し、そのうち8床は人工呼吸器を備えた集中治療室にある。

また9月にMSFは、同じく新型コロナ治療を行うアリア病院にも技術支援を開始。感染予防・制御と集中治療を専門とする医者を、両病院に派遣している。個人用防護具や感染性廃棄物の扱い方、清掃手順、酸素療法、臨床などについて、病院スタッフに実地的な研修を行うためだ。

「病院のスタッフは、オープンで前向きに取り組んでくれます。互いに協力し合っているという感覚が、意欲を高めるようです」とオッテンス=パターソンは話す。

ヨルダン川西岸のヘブロン県で、子どもたちと健康促進活動を行うMSFスタッフ © MSFヨルダン川西岸のヘブロン県で、子どもたちと健康促進活動を行うMSFスタッフ © MSF

心理ケアはコロナ治療のひとつ

しかし感染者を治療するだけでは、感染拡大の速度を遅らせることはできない。ヘブロンでMSFプロジェクト・コーディネーターを務めるカタリーナ・ランゲは、「感染予防の活動への支援も必要」と話す。MSFチームはヘブロンで感染が最も深刻な地域で健康教育活動を行い、衛生用品キットや再利用可能なフェイスマスクを人びとに配布している。ドゥラ病院やアリア病院でも健康教育を広める計画だ。

また、心のケアも欠かせない。MSFのカウンセラーは3月から、新型コロナ感染症の患者とその家族、そして最前線で働く医療スタッフに対し支援を行っている。これには2001年以降、長期的な心理ケアサービスの提供をヘブロンで継続してきた背景がある。家族の死や重傷、自宅の破壊、拘留、家庭内暴力など、さまざまな暴力によって直接・間接的に影響を受けた子どもから大人までの人びとを、MSFは支援してきた。MSFの心理社会面の支援チームは、ヘブロン県全域で個別セッションやグループセッション、心理療法セッションを行っている。

ランゲはこう話す。「心の健康は体の健康と同じくらい大切です。私たちの新型コロナ対応では、その両方の要素を取り入れています。他の医療機関と連携し合い、助けを必要とする人たちへの支援の拡充を図っていきます」

ヘブロンの人びとに健康教育活動を行うMSFのカウンセラー兼教育担当スタッフ © MSFヘブロンの人びとに健康教育活動を行うMSFのカウンセラー兼教育担当スタッフ © MSF

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